じじぃの「歴史・思想_405_2050年 世界人口大減少・2050年の世界」

Top 20 Country Population History & Projection (1810-2100)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bFuEMnPVZyE

Proportional Distribution of World Population in 2050

Country File: Mapping rural-to-urban migration

April 24, 2017 Views of the World
http://www.viewsoftheworld.net/?p=5398

『2050年 世界人口大減少』

ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン/著、河合雅司/解説、倉田幸信/訳 文藝春秋 2020年発行

人口減少した2050年、世界はどうなっているか より

人口減少こそ温暖化防止の最適解

2015年12月12日、世界中の国々がパリに集まり「パリ協定」に合意した。人間活動が気候に与える影響を抑制し、産業革命前と比べた気温上昇が2度未満に収まるようにするという内容だ。だが、はるか1997年までさかのぼった京都でも、世界中の指導者は同様の約束をしたはずだ。そしていまだに地球温暖化は進行中である。本当に重要な意思決定は、世界の3大炭素排出国である中国、アメリカ、インドのそれぞれの首都において、一握りの男たち(正確にはほとんどが男性)によって決められるのだ。中国とインドの近代化が進むにつれて、彼らは石炭を燃やす火力発電への依存度をますます高めている。そして、石炭を燃料源とする火力発電所の建築は、人間ができることのなかで最悪に近い影響を地球の大気に与える。救いは、太陽熱発電のコスト低下――そして大気汚染で窒息しそうな大都市に住む中間層の納税者の怒り――が、中国とインドの火力発電離れを促しつつある点だ。中国は2017年に103ヵ所の発電所の建設計画撤退を発表し、インドは年間の石炭使用使用量を9億トンにまで引き下げた(一時はインドの年間石炭使用量が2020年までに15億トンに達するのではないかと懸念されていた)。
世界第2の排出国であるあめりかについては、前向きな統計数値がひとつある。2007年以降、経済は着実な成長を続けているのに電力消費量が横ばいなのだ。その一因は、気が滅入る話だが、製造業の国外移転にともなう工場閉鎖だろう。もっと前向きな別の要因としては、自宅の暖房を太陽光パネルでまかなう個人など、自家発電の普及やエネルギー節約の影響があると考えられる。太陽光発電風力発電の蓄電能力が向上すれば、3大排出国でも、それ以外のすべての国でも、化石燃料による発電への依存度を減らせる可能性が高まる。
とはいえ、世界の化石燃料への依存度は2040年まで増え続けると予測されている。発展途上国での需要が拡大するからだ。中国はまだ石炭による発電能力をアメリカの3倍も持っており、インドは石炭を用いた火力発電所を今後370基建設するつもりである。
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こんな未来像を想像してもいいだろう。減りゆく人類の大半は大都市の高層ビルに住み、都市圏を離れるとほとんどの土地は森林に戻っている。熱帯雨林や北方針葉樹林がえんえんと広がり、二酸化炭素を吸収して酸素を増やす。再生可能エネルギーの利用により化石燃料の必要性は下がり続け、最終的には使われなくなる。都市化とイノベーション、そして人口減少こそ地球温暖化の進行を止める最適解かもしれない。願わくば今日生まれた子が――最悪でも10年後か20年後に生まれた子が――中年になるころ、世界は今より汚染が少なく健全な場所になってほしい。

鍵を握る中国

しかし、そのとき世界は平和だろうか?
これはなかなか難しい問題だ。答えを大きく左右するのは中国である。2017年10月、5年ごとに開催される中国共産党の党大会に、習近平国家主席毛沢東以来最大の力を持つ中国のリーダーとして登場した。習は歴史的な演説を行い、中国は2050年までに完全に現代化された経済と「グローバル競争力」を手にいれ、そのような一党独裁政権が仕切る資本主義モデルは「独立を守りつつ経済発展を加速させたいと考える他の国々にも新しい選択肢を示すことになる」と述べた。要するに中国は、経済・軍事・イデオロギーの各面で世界を圧倒する大国の地位を、アメリカから奪おうというのである。
だが現実はどうか。
結婚にあぶれた大勢の不幸な若い男たち。年々増え、年々貧しくなる高齢者層。何十年も続いた未開の東部の開拓が終わり、鈍化する経済成長。根強い抵抗を続ける奥地の少数民族。インターネット検閲の縮小を粘り強く求める都市住民――
2050年の中国は、世界を股にかけるどころか、急速な人口減少が拍車をかける国内政情不安に取り付かれているのではないだろうか。

日本の人口減少を食い止める唯一の道

アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは入植者が作り上げた「移民社会」であり(その点では大英帝国の最も息の長い遺産を受け継いでいるとも言える)、移民に対して他の国よりもオープンである。この4ヵ国の国民は、ほぼ全員が移民もしくは移民の子孫だが、それでもなお弾力性の失われた社会的硬直と無縁ではない。奴隷制度の負の遺産により、アメリカでは今でも白人と黒人が切り離されている。植民地化の負の遺産により、カナダなどの国々では今でも先住民と非先住民との間に壁がある。だが、一般に国としての一体感や民族としての一体感が強ければ強いほど、移民を融合して社会全体が調和のとれた一体となれる可能性は低くなる。ハンガリー人が「自分はハンガリー人である」と感じなくなる日、日本人が「自分は日本人である」と感じなくなる日はいつかくるのだろうか。彼らが異邦人を対等な人間として社会の真ん中に受け入れる日はいつかくるのだろうか――。ハンガリー社会や日本社会が人口減少を止め、あわよくば増やそうと考えるなら、他に道はないのである。
しかも、移民を受け入れるという道すらいつかは選択肢から消えてしまう。中国はかつて大勢の移民を送り出す国だった。いま、中国からの移民は減っており、かつて祖国を離れた中国系移民の一部は帰国している。
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本書では人口が減りゆく未来の姿を描いた。それは今世紀末の人類社会の姿である。だが、人口減少が今後のすべての世代、すべての世紀にわたって永久に避けられないわけではない。さまざまな可能性がある。ヨーロッパはいつかアフリカを嫉妬と羨望のまなざしで見上げるようになるかもしれない。科学者たちはいつか地球寒冷化の影響を研究しているかもしれない。恐ろしい大戦争の時代が来るかもしれないし、パクス・インディカ(超大国インドによる世界平和)の時代を迎えるかもしれない。果てしなき人口縮小が続くかもしれないし、どこかで再び人口が増加する時代が来るかもしれない。
可能性を挙げればきりがない。いずれにせよ、未来は放っておいてもやってくる。

我々は自分の道を進むだけだ。高齢者を大事にし、若者をはげまし、すべての人が平等に扱われる社会にしなければならない。移民を歓迎し、彼らと共に暮らしつつ、人々がその社会で暮らしたいと思えるよう自由と寛大さを維持していかねばならない。