じじぃの「歴史・思想_440_日本経済予言の書・アフターコロナショック」

Exclusive: Why the IMF projects China’s economy to grow 8.1% in 2021

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ATg5pYHuHyc

[図表1]IMFによる世界全体と主な国、地域の経済成長率予想

IMFによる世界経済見通しからの教訓

2021.1.30 幻冬舎ゴールドオンライン
国際通貨基金IMF)は2021年1月26日に世界経済見通し(WEO)を公表し、21年の世界全体の経済成長率見通しを5.5%と、昨年10月時点の予想から0.3%上方修正しました(図表1参照)。
https://gentosha-go.com/articles/-/31653

『日本経済 予言の書』

鈴木貴博/著 PHPビジネス新書 2020年発行

第1章 コロナショックでこれから何が起きるか より

コロナ長期化に伴って予言できること

さて、本書の発売時期(2020年6月)までに、日本のコロナは医学的な被害としては欧米と比較してそれほど大きくはない形でいったん収束に向かっていることでしょう。ただ私は医学の専門家ではないので、感染の収束についての細かな予測は致しません。代わりに、この秋以降に予想される再流行での経済的リスクについて、詳しく考えたいと思います。
世界で5000万人が亡くなったといわれる20世紀のスペイン風邪でも、日本の死者数は38万人でした。政府の専門家会議は今回のコロナについて、「対策がなければ最悪42万人以上が死亡」と予測していました。
ただ対策は進み、経験も積まれたしたから、仮にこの冬の再流行で日本でも残念な形で本格的な医療崩壊が起きたとしても、つまりリスクを最大限まで大きく見積もっても、新型コロナの死者数が20万人を超えることはないとも想定できます。この想定は、さきほどお話しした「ウイルスの生存戦力として、宿主を殺しすぎるとウイルスも生存できない」という原理から置いた前提です。
その前提通りなら、日本人500人のうち499人以上は新型コロナから生き延びることになる。だとすれば、繰り返しになりますが、大半の日本人にとって本当にリスクは命のリスクよりも経済のリスクだと予言できます。
そして社会や経済にどういうことが起きるかは、経済の専門家には疫学的な未来予測と違い現実的に身通せます。日本を含め世界中で外出が制限され、経済が止まっています。これが数ヵ月続くと世界経済でどのようなことが起きるかは容易に概算できます。もちろん誤差は出ると思われるますが、日本経済に何が起きるのかは予言できるということです。
コロナショックが長期化するという予言が当たれば、業種毎に経済に関する影響の違いお予測することが可能です。たとえばコロナショックの場合、先に起きたのが各国の水際対策で、その結果真っ先に顧客が減ったのが航空業界です。国際線はその国で感染が止まっても相手国が収めるまでは再開できません。業種として顧客数が一番長期にわたることが自明で、かつコスト構造を考慮すればどのように打撃を受けるのかは予測できます。
同じことが観光業界、飲食業界にも言えますし、グローバルなサプライチェーンに異変が起きる製造業のような複雑な業種についても何が起きるのかについてなら4予測ができるわけです。

まだ起きていない「本格的な金融パニック」が起きるとき

ただここで心の準備をしておかなければならないのは、ふたつめの条件、新型コロナの金融パニックは「今はまだ本格的には起きていない」ということです。
今はまだ新型ウイルスのほうが怖いので、みんな感染することにびくびくして暮らしているのですが、その結果、この章で述べるように日本経済は停滞していっています。日本だけでなく世界経済が活動をほぼ停止し始めていて、世界中のサプライチェーンに悪影響が出ています。
    ・
さらに注目すべきは世界的なGDPの落ち込み方です。コロナは消費経済のパラダイム(頭の中の前提条件)を大きく変えてしまうかもしれません。テレワークを試してみたら以外とそれで仕事がまわったとか、今まで使ってこなかった安価なツールで代用したらそれでも大丈夫だったとか、そもそもその仕事はいらないことがわかぅたという話です。
消費でも「あんな浪費は必要なかった」とか、「最小限でやっていける生活手段がよくわかった」といった具合で、消費者としてもみんな行動が賢くなりました。
このスマートさ、賢さが経済には鬼門です。世界経済の発展は消費の増加に支えられてきました。ところがコロナをきっかけに世界が「もう少し抑えた消費で暮らすほうがいい」と気づいてしあうと、コロナがきっかけで世界全体でGDPの標準的な大きさが縮小する可能性があります。
そうなれば株は大きく売られます。コロナ以前の前提だった「コロナが終息すれば経済が元に戻るだろう」という前提が崩れ、「コロナ後に多くの企業が倒産し、生き残った企業の稼ぎも激減するだろう」という新しい前提を考えなければならなくなります。
そのときにはふたたび経済パニックが起きて、モデルが予測する適性水準など関係なく大幅な暴落が起きる可能性があります。それは3月の1万6000円よりも低い株価水準、日経平均としては1万4000円台から1万2000円台あたりまでの暴落を覚悟しなければなりません。
そしてそれがアメリカの株式市場でも起きるでしょう。世界中で経済封鎖が行なわれたことで、世界中でそれに耐えきれない企業が経営破綻し、世界で消費が緩慢になるからです。
その果てにあるのが、これまで世界経済の発展を牽引してきたアメリカの個人消費のさらなる冷え込みという悪い循環につながるのです。

ただ中国だけは意外と持ちこたえるかもしれません。実際、コロナ後の世界経済では中国が世界の命運を握る存在になる可能性が高いと思われます。

この状況で中国がグローバル経済の中でどう振る舞うのかは予測が難しい点ですが、最終章でその意味するところについて論じてみたいと思います。

コロナショックは期間限定の災厄だが……

さて、この章で述べてきたようにコロナショックに関しての予測として、2020年と2021年の2年間、世界中の人々はかなりの我慢をしなければならないでしょう。ただコロナに関して言えば2年程度で終わることも確実です。そしてアメリカや中国、EUはそこから徐々に経済も社会もV字回復を見せていくと思われます。
問題があるのは実は日本です。日本経済の前にはコロナショックのように期間限定の災厄だけではなく、それに続くもっと構造的な長期の経済問題が立ちはだかっています。そして日本の対応はそのどれについても後手に回りそうです。
それがどのような問題なのか、なぜ起きるのか、そしてそれをどう止めるのかについて、以降の章で見ていきたいと思います。