2030年問題とは?
【2030年問題】「人口の1/3が高齢者」はなにを意味するのか
マンション経営大学
2030年問題とは「2030年には人口の1/3が高齢者になる」ともいわれる超高齢化により引き起こされます。
「国立社会保障・人口問題研究所」によると、2010年には約1億2800万人だった人口は2030年には約1億1600万人に減少し、さらに2024年には日本の高齢者は人口の30%にも達すると予測されているのです。
https://mansionkeiei.jp/column/22373
第5章 確実に起きる人口問題の不確実な解決方法 より
人口に関する予言は確実に当たる
未来予測術では「将来人口は確実に予測通りになる」と言われています。そしてテクニックとしてもとても実用的です。
今から10年後の若者の消費を予測しようと思えば、過去10年の出生数を見ればほぼ確実に消費者規模を予測できます。同様に、高齢者向けの介護サービス市場の規模を予測するにあたっても、10年後、20年後の後期高齢者の人口規模はほぼ予測通りになるはずです。
私がコンサルティングとして活動し始めた1980年代当時は、「団塊の世代」についての人口予測が経営のさまざまな分野で「使える重要指標」として用いられていました。
「団塊の世代」とは1976年に経済評論家の堺屋太一さんが発表した概念です。具体的には戦後のベビーブームである1947年から1949年までの3年間に生まれた世代のことで、平均で1学年が268万人規模にのぼる世代です。2019年の出生数はいよいよ90万人割れが確実な状況ですので、今や比較してほぼ3倍の子どもが誕生していた世代ということになります。
2030年の人口問題
2030年には団塊の世代が80代前半に突入します。団塊の世代が後期高齢者の中でも周囲の支援が必要になる80代入りすることで、日本の要介護人口はいよいよもって過去想定されていたピークの規模に到達しそうです。
さらに同じタイミングで団塊ジュニアと呼ばれるもうひとつの人口のボリュームゾーンが50代後半に入り、その一部は還暦を迎えます。労働力の高齢化により小売、物流、建設といった現場仕事が必要な業界で働き手の不足が懸念されます。
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「現在の経済インフラを維持する」ということはコンビニやファミレスの24時間営業や、宅配便の翌日配達、工場の24時間稼働といった「夜も眠らない日本の経済活動」を前提にするということなのですが、そこで850万人もの労働力が不足するということは、もはや「眠らない国」としての経済インフラは維持できないことを意味します。
加えていえば、後期高齢者が激増することで医療や介護の現場の人手不足は今以上に深刻な社会問題になるはずですから、いったいどうやってこの状況を乗り切るのかを考えると、今から10年後の日本は大きな社会問題に直面することが容易に想像できます。
2030年までに日本が選択しなければいけない本当の論点
その行きつく先は何でしょうか。AIの先に待ち構えているのは日本人の大半が非正規労働者になる未来であり、正社員と中流家庭の消滅を意味する社会構造の変化です。
バブル入社組が65歳の定年を迎える2030年頃には雇用構造の自然変化が完了し、日本人の生涯年収は低いほうに抑えられる。同一労働同一賃金問題は、労働の対価が低いほうに収れんしていくことで自然解決します。
そのことにより副次的にひきおこされるのが、高齢者になっても働き続けなければならない未来です。
このことは関連して怪しい話を耳にしました。それは高齢者の線引きの変更です。これまで日本は65歳から上の世代を高齢者と呼んできました。これを75歳に変更しようと動きがあるという説です。
この変更にはふたつ効果があって、ひとつは社会保障の対象年齢を引き上げることが可能になり、財源の破綻を避けることができるという効果。そしてもうひとつは、定義から外れる75歳未満の高齢者に自分で働いて生活を成り立たせる覚悟を持たせることができるという効果です。
政策としては意味があるのでしょうが、その意味するところは寒いと私は感じます。そうやって国家財政の辻褄を合わせたとしても、まだ日本の経済インフラは回らない。若い労働力が圧倒的に不足する。ですから500万人規模で外国人労働者を日本に入れる政策は変えられない。
つまり最終的に私たちが2030年問題について選択できる未来は、移民を受け入れるか入れないかの選択肢だけです。
いまでも首都圏の一部の団地がそうなっているように、東京のあちこちに排他的な文化を持った外国人居住者が増加するような未来を選ぶのか、それとも日本にやってきた知識人や富裕層の外国人の若者が日本語に慣れ、日本の文化に慣れ、自然に社会の一員として日本に溶け込むような未来を選ぶのか。労働力だけで外国人を受け入れれば日本は前者の街並みに、移民を社会の一員として受け入れれば後者のような社会に向かうことになるという点で、未来の日本の姿は変わってくるはずです。
それが外国人の受け入れに関して、2020年代を通じて日本が選ばなければいけない本当の論点になると私は思うのです。