じじぃの「歴史・思想_413_社会はどう進化するのか・序章」

The Theory of Evolution (by Natural Selection) | Cornerstones Education

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch/BcpB_986wyk

社会はどう進化するのか――進化生物学が拓く新しい世界観 亜紀書房

デイヴィッド・スローン・ウィルソン (著), 高橋 洋 (翻訳)
【内容紹介】
競争? 淘汰? いや違う。
――ダーウィンの知恵は、私たちを共生へと導く。
がん細胞、免疫系、ミツバチのコロニーから、「多細胞社会」としての人間まで…。
進化生物学の最前線から、人間の社会・経済活動のメカニズムを解剖する、知的興奮の書!
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=936

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン

ウィキペディアWikipedia) より
主著『現象としての人間』で、キリスト教的進化論を提唱し、20世紀の思想界に大きな影響を与える。彼は創世記の伝統的な創造論の立場を破棄した。当時、ローマはこれがアウグスティヌスの原罪の教理の否定になると考えた。北京原人の発見と研究でも知られる。
【思想】
人間は、意志と知性を持つことより、ビオスフェアを越えて、生物進化の新しいステージへと上昇した。それが「ヌースフェア(叡智圏、Noosphere)」であり、未だ人間は、叡智存在として未熟な段階にあるが、宇宙の進化の流れは、叡智世界の確立へと向かっており、人間は、叡智の究極点である「オメガ点(Ω点、Point Omega )」へと進化の道を進みつつある。
「オメガ」は未来に達成され出現するキリスト(Christ Cosmique)であり、人間とすべての生物、宇宙全体は、オメガの実現において、完成され救済される。これがテイヤールのキリスト教的進化論であった。

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『社会はどう進化するのか――進化生物学が拓く新しい世界観』

デイヴィッド・スローン・ウィルソン/著、高橋洋/訳 亜紀書房 2020年発行

序 より

科学者でイエズス会士でもあったピェール・テイヤール・ド・シャルダン(1881~1955)は、キリスト教の教義とも、彼が生きていた時代の科学の知見とも袂を分かつ人間観を提起した。それは、「私たち人間は、ある観点から見れば大型類人猿に分類されるもう1つの生物にすぎないが、別の観点から見た場合には、進化の新たなプロセスを示す存在でもある」という考えだ。この考えは、人類の起源を独自の意味で生命の起源と同程度に重要なものにする。
テイヤールは、依然としてカトリック教会が、神に至る正当な道として科学をとらえていた時代に生きていた。彼の先駆者ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)と同様、彼は自然界の開発を教会から許可されていたと同時に、その研究が教会の教義の脅威にならないよう制限されていた。ガレリオが天空を見上げていたのに対し、テイヤールは地面を掘って化石を探索していた。古生物学者であったテイヤールは、現在ではホモ・エレクトスに分類されている北京原人を発掘したチームの一員でもあった。その化石は、類人猿に近かった頃の人類の祖先と私たちのあいだを橋渡しする「ミッシングリンク」になる最初の頭蓋骨の1つであった。ガリレオが拷問で脅かされたのに対し、テイヤールは栄誉ある学問的な地位の受諾を妨害され、業績の刊行を禁じられた。もっともよく知られている彼の著書『現象としての人間』は1930年代に書かれているが、彼は生涯にわたり辛抱強く刊行をを待たなければならず、結局私家版として死後に出版されている。
テイヤールはこの俯瞰的な著書で、生命が誕生する以前の地球を、物理的なプロセスによって形成された不毛な惑星の1つとして描いている。その後、一種の皮膚のごとく生物が地球の表面を覆い始めるが、彼によれば、それもまた「単なる」物理プロセスにすぎなかった。つまり彼は、生命の起源を説明するにあたり、神という火花を持ち込もうとする誘惑に屈しなかったのだ。
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次にテイヤールは、生命の木のある1つの枝に属し、他の枝の生物よりはるかに迅速に増殖し多様化し始め生物を想像するよう読者に求める。驚くほど短い期間で、新しい皮膚が地球を覆い、地球とその大気の形成において、他の生命プロセスや非生命的な物理的プロセスに対抗し始める。その生物とはホモ・サピエンスのことであり、彼はこの2番目の皮膚を指す、ノウアスフィアという言葉を造語した。
「ノウアスフィア」よいう語は、心を意味するギリシャ語「nous」に由来し、この新しい皮膚には、物理的な側面に加えて心的な側面がともなうことを示唆する。テイヤールは、自己を反省する進化のプロセスとして意識を描き、さらには「砂粒のように小さい無数の思考」として始まり、やがてそれらが融合して、地球人の意識と自己調節能力を持つ、オメガポイントと呼ばれるスーパーオーガニズムを形成する過程として、人類による地球の征服をとらえた。
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本著は、『現象としての人間』のバージョンアップ版と見ることもできる。それと同時に、テイヤールが生きてきた時代から長足の進歩を遂げた進化の研究で得られた最新の高度な知識に基づく科学書でもある。さらに本書は、大胆にも事実に関する記述を超え、どうなるべきかに関する青写真をも提供する。現代の進化論は、オメガポイントという用語でテイヤールが言及した状態が、近い将来達成される可能性があることを示している。とはいえ同じ進化論によって、それが確実に達成されるとは言い切れないことも示されている。というのも、進化は問題を解決するとともに、新たな問題を提起するからである。「生物」という言葉に私たちが結びつけられている調和や秩序は、実のところ生態系、人間社会、そしてもしかすると地球全体を包摂するべき拡張することのできる可動的な境界を持つ。しかしそれには特殊な条件が満たされなければならず、満たされなかった場合には、進化は私たちが望まぬ方向へと人類を誘導していくだろう。

私たちの旅に、熟練の航海士はいない。各人が航海士になって、人類の集合的な未来を意識的に作り出さなければならない。進化論が与えてくれる羅針盤がなければ、遭難という運命が確実に待ち構えているだろう。