【“歴史に呼ばれた男”立花隆の遺言】報道1930 まとめ21/6/28放送
The Omega Point cosmology
NHKスペシャル ”見えた 何が 永遠が” ~立花隆 最後の旅~
2022年4月30日 NHK
去年の4月30日、「知の巨人」と呼ばれた立花隆さんが亡くなった。
「人間とはなにか」を生涯問い続けた立花さん。その問いに答えは出たのか。ディレクターが最後の思索をたどる。
立花隆 最後の旅
立花さんが自ら最も重要な著作の一つとした「エーゲ永遠回帰の海」。
8000キロに及ぶエーゲ海の遺跡巡りの旅の末に書かれた。
旅に同行したカメラマンは、立花さんのこの時の突き詰めるような取材姿勢を今でも覚えていた。
周囲に支えられて生きるいのち、連環体の一部としての人間。
そのいのち連環体が連続することでつながってきた人類の歴史。
立花さんは私たちがふだん知覚しない大きな時間を見ていたのではないか。
「見当識」を追究し続けた立花さんが膨大な本や資料を集積するために作ったのが仕事場、通称「猫ビル」だった。
見当識・・・今どこにいて、どこから来て、私たちはこれからどこに行くのか、そういう現在地点をしっかりと理解しろということ
本を買っては書庫を増やしていた立花さんが作った、念願の城だった。
立花さんが本当に探し求めていたものは何か、傍らで見ていた編集者がいる。
文藝春秋元社長の平尾隆弘氏。
立花さんは最晩年まで知の領域を広げ続け、人間とは何かをつかもうとしたという。
亡くなる少し前、立花さんは家族にやりたいことはやり切れたと、告げたといいます。
私は立花さんがいのち連続体の一部として永遠の中に戻ったのだと思えました。
立花さんの思索をたどった取材の最後。
私の名が記された原稿をもう一度 読み返しました。
そこには20世紀を代表する進化生物学者テイヤール・ド・シャルダンの唱えた新たな進化論が記されていました。
それはあらゆる分野を学んだ立花さんが万物の歴史は全て進化の歴史だと、語る言葉から始まっていました。
人類の知は今後相互に影響し合い、さらに複雑化。
個々の人の意識がくもの巣のように絡み合います。
それにより人類全体が より高次の意識を持ち次のステージに立つと、立花さんは記していました。
立花さんが最後に夢みたのは一人一人が自ら学びより高い知を求め集積していくこと。
そして、人類全体が一体となってより高い次元の思考ができるようになる次の進化だったのでしょう。
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/N5M4PXJ5MZ/
はじめに より
この本で言わんとしていることを一言で要約するなら、「すべてを進化の相の下に見よ」ということである。「進化の相の下に見る」とはどういうことかについては、本文で詳しく説明しているが、最初に簡単に解説を付け加えておこう。
世界のすべては進化の過程にある。
・
我々はいま確かに進化の産物としてここにいる。そして、我々の未来も進化論的に展開していくのである。
我々がどこから来てどこに行こうとしているのかは、進化論的にしか語ることができない。もちろん、それが具体的にどのようなものになろうとしているのかなどといったことは、まだ語るべくもないが、どのような語りがありうるのかといったら、進化論的に語るしかない。
そして、人類の進化論的未来を語るなら、たかだか数年で世代交代を繰り返している産業社会の企業の未来や商品の未来などとちがって、少なくとも数万年の未来を視野において語らなければならない。人類の歴史を過去にたどるとき、ホモ属という属のレベルの歴史をたどるなら、100万年以上過去にさかのばらねばならない。
・
本書では、ジュリアン・ハックスレーやテイヤール・ド・シャルダンといったユニークな思想家の発想を手がかりとして、そこを考えてみたいと思っている。
第7章 人類の共同思考の始まり より
「進化」はまったく新しい世界認識のカテゴリー
テイヤール・ド・シャルダンは、進化というものを、人間悟性の獲得した全く新しい世界認識のカテゴリーであると考えます。認識のカテゴリーというと、カントのいう時間と空間というカテゴリーが頭に浮かぶでしょうが、進化というのは、それとならぶような基本的認識のカテゴリーだというわけです。進化という視点を通して見ることによって、はじめて世界は正しく認識できるというわけです。
万物は複雑化=意識の法則に従って、より複雑化し、より内面化し、より高次の意識を持つ方向へ絶えず時間軸に沿って働いています。宇宙スケールでも、地球の生物界スケールでも、人間世界スケールでも、世界は常に進化をつづけており、その動きは一瞬たりとも止まることがないのだから、世界を時間的に止まったものとして認識するのは基本的に誤りなのですが、人間は進化論的な時間のスケールでものを見ることに慣れていないために、つい、世界は止まったものと見てしまいがちです。
・
その他、ヒトの時代になって起きた特別のこととして、テイヤール・ド・シャルダンは、
「(1)異常な膨張力
(2)分化の途方もない速度
(3)系列(鱗葉)を生みだす能力の意外な持続性
(4)生命の歴史ではまだ知られていなかった、同じ系列束(フェツソー、faisceau)に属する枝の間の相互結合の能力」
の4つをあげています。
・
「オメガ点」とは何か
それ(系列束でできた枝同士がまた相互結合を深めるというような形で、ホモ・サピエンス大社会はどんどん結合を密接にしながらより一体化を高める方向に収斂していったというのが(4)でいっていること)がさらに進めばどうなるか。オメガ点への収斂が起きます。
収斂というものは、そもそも収斂に向かう一点があるから起きる現象であって、それがはじめから明示された点として存在していなくても、収斂過程が進んでいくと、その一点が自然に見えてきます。収斂運動それ自体が目標の一点を作り出していくわけです。それが図(画像の頂点、Ω)で示されるオメガ点だというわけです。
オメガ点とは何か。それを神というなら神ということもできる、とテイヤール・ド・シャルダンはいいます。