じじぃの「歴史・思想_396_2050年 世界人口大減少・人口から見た人類の歴史」

world population growth 2 min animation

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=7ymJVMQhA4s

History World Population - Exponential Growth

About two hundred thousand years ago our history began. Number of participants: One hundred fifty thousand.
Setting: Africa. The explosive eruption of the supervolcano Toba on the island of Sumatra in 72,000 B.C. marks a more precise date. Ashes darkened the sun and the fall-out covered an area bigger than Europe. A winter followed, lasting several years we are told. DNA research brings us to the same point in time and it suggests also that: 1) The Toba eruption was a disaster for our species, bringing us on the brink of extinction and reducing our numbers by a factor of ten. The early survival success of the hunter-gatherers - mainly due to their power of speech - was annihilated in one single blow and the population in Africa was reduced to a number not bigger than 10,000. 2) A small group of no more than 150 individuals left East-Africa some thousand years after the vulcanic eruption and their descendants populated the earth. For a 'Map of Human Migration click here.
https://pduinker.home.xs4all.nl/Problemen/Wereldbevolking/index_eng.html

『2050年 世界人口大減少』

ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン/著、河合雅司/解説、倉田幸信/訳 文藝春秋 2020年発行

人類の歴史を人口で振り返る より

今から7万年前、スマトラ島のトバ火山の噴火後に人口数千人まで落ち込んだ人類は、最初の産業革命の時期に500万人から1000万人程度に増えた。西暦1年にはおそらく3億人になっていただろう。1300年頃になると、中国ではさらに文明開化が進み、イスラム圏はインドからスペインまで広がり、ヨーロッパはやっとローマ以降の暗黒時代から抜け出し、この結果として世界人口は4億人前後と過去最大に達する。そして、かってない惨劇が起きた。

感染者の80%を殺した黒死病

腺ペストの原因となる細菌「エルシニア・ペスティス」は長年人類とともに存在してきた。一説には、黒海と中国の間にまたがる地域が”疫病の貯蔵庫”になっており、そこにははるか昔から「エルシニア・ペスティス」がいて、いまでもいるという(その地域では今ではたまに腺ペストの患者が出る)。そもそも腺ペストの主な感染先は人間ではない。むしろ「ネズミがかかる病気に、人間も加わった」のである。まず、この細菌を宿したノミを介してネズミがペストに感染する。ネズミが死ぬと、ノミは新しい宿主を探す。もし近くに人間がいれば、その人は一巻の終りだ。だだし、ノミにかまれた人がペストを発症するまで3日から5日かかるため、別の人に病気をうつす時間は十分にある。ペストは空気中を飛ぶ咳やくしゃみの飛沫で感染するのだ。
古代にもペストの大流行は繰り返し起きたようだ。完全な記録が残る最古のものは541年に発生した「ユヌティニアヌスの疫病」で、ローマ帝国が失った版図を取り戻そうとしたビザンティン帝国帝国の打ち砕いた。だが、なんと言っても圧倒的なのは黒死病(この名は後につけられた)である。原因は、極めて毒性が高くなった腺ペストの変種である可能性が高い。
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ところが黒死病のせいで、陸にいても死亡率は相当高いとあって、あえて遠洋航海の危険を冒そうという気持ちが高まった。探検と植民地化を進めるヨーロッパの大航海時代は、実は黒死病が一助となって始まった可能性もあるのだ。
ところが悲劇的なことに、その植民地化が黒死病よりさらに恐ろしい惨劇を新世界にもたらす。無防備なアメリカ大陸(南北および中央)の先住民のもとに、ヨーロッパからの探検家や略奪者、その後は入植者が次々と新しい疾病を持ち込んだのだ。正確な死亡者数ははやはり推定が難しいが、ヨーロッパ人との接触により、アメリカ大陸により、アメリカ大陸の人口の少なくとも半分は消え去った。これを「人口動態への影響で見れば、歴史上最大の大惨事だった可能性もある」とする見方もある。先住民の死者数は人口の90%を超えていたという説もある。とりわけ毒性が強く致死率の高い天然痘の影響が大きかった。

先進国から腸チフスが一掃される

水道水の塩素消毒が開始された1908年の翌年、市当局は市の水道水の汚染度がいまだに許容水準を超えたままだとして、ジャージーシティ水道会社を相手に二度目の裁判を起こす。だが裁判官は、塩素消毒のおかげで感染症が劇的に減ったという証拠を示し、市の訴えを退ける。地元の医師ジョン・リールの消毒装置が効果を発揮したのである。
この話は伝染病のように急速に広がった。6年を経ずして、地方自治体による水道サービスを受けるアメリカ人の半数は塩素消毒された水を飲むようになった。北米および欧州の関係当局も、予算の許す限りすみやかに塩素消毒を導入した。この動きは一般市民の健康に与えた影響は驚異的だった。1908年、リールが初めてジャージーシティの水道水に塩素を加えた当時、米国では年間に10万人当たり20人が腸チフスで死亡していた。そのわずか12年後の1920年、10万人当たりの死者数は8人まで減り、1940年までに腸チフスは先進国からほぼ一掃された。
塩素消毒の導入は、疫病との闘いにおける最大の進歩の1つと言っていい。だが、人々の注目を浴びるのは、公衆衛生ではなく医学である。医学の歴史を多少かじった人なら誰でも、フレデリック・バンティングとチャールス・ベスト率いるカナダの研究者グループが糖尿病におけるインスリンの働きを発見し、その製造方法も見つけたことを知っている。だが、いったい誰がジョン・リールを知っているだろうか。

都市化と女性の地位向上が、発展途上国でも起きつつある

何が出生率を引き下げるのかをもう一度思い出してほしい。――それは都市化である。都市化が進むと若い労働力は不要になり、逆に子供は経済面での負債となる。そして都市化は女性に力を与える。自分の身体を自ら支配できるようになった女性は、例外なく子供の数を減らす。

この2つの要素は19世紀から20世紀にかけて先進国の社会にしっかりと根をおろした。そして今やこの2つの要素は発展途上国の社会にも影響を与えつつある。
国連は2007年、その年の5月23日に人類史上初めて、都市に住む人の割合が農村に住む人の割合を上回ったと宣言した(国連はこうした象徴的な日を勝手に決めるのが大好きだ)。都市化と女性の地位向上は、先進国に与えたのと同じ効果を発展途上国にも与えているが、すべてが先進国の時よりずっとずっと速いペースで進行している。すなわち世界中で出生率が急速に下がっているのだ。この急減こそがすべての原因である。この急減こそ、国連が見通しを誤った理由であり、この急減こそ、いずれ世界が縮小を始める理由である。その日は、ほとんどの人が思っているよりはるかに早くやってくる。