じじぃの「歴史・思想_366_言語の起源・認知革命前夜・記号化」

Homo Erectus Skull Cast from Java, Indonesia

Researchers focused on engravings made on the shell

Homo Erectus

18 January 2017 Ancient History Encyclopedia
Homo erectus, or ‘upright man’, is an extinct species of human that occupies an intriguing spot within the human evolutionary lineage.
These prehistoric hunter-gatherers were highly successful in adapting to vastly different habitats across the Old World, as fossils connected with this species have been found ranging from Africa all the way to Southeast Asia. With the first remains appearing around 1,9 million years ago, and the latest ones surviving into the Middle Pleistocene, Homo erectus spanned an extraordinarily large time frame. However, the amount of variation between different fossils from different times and places has raised a lot of questions regarding the actual classification of the species, and its exact role in the evolutionary story.
https://www.ancient.eu/Homo_Erectus/

『言語の起源 人類の最も偉大な発明』

ダニエル・L・エヴェレット/著、松浦俊輔/訳 白揚社 2020年発行

みな記号の言語を話す より

言語とは何か。言語は本当にホモ・エレクトゥスが発明したものなのか。あらためて基本原理を述べておこう。言語は人間の発明、歴史、身体的・認知的進化が収束するところから生じる。人類を今日話されている言語へと向かわせたと思われる発明は、まずはアイコン、それからシンポルだった。
考古学的な証拠は実際、C・S・パースの記号進展によって予想される順番を支持している――インデックス(指標記号)が最初で、そしてアイコン(類像記号)、シンボル(象徴記号)と続く。先史時代の資料では、指標が類像より前で、類像は象徴より前の時代に見つかる。さらに、インデックスはおそらくどんな生物でも使うが、アイコンを認識する生物は少なく、シンボルを恒常的に使うのは人間だけだ。確かにパースは、類像は指標よりも単純だと考えていたが、主としてその念頭にあったのは、指標に至るために人間がどのように手を加えたかであり、あくまで私見だが、記号が自然そのものに見つかる様子ではなかったはずだ。
新聞の見出し、店の看板、映画のタイトルなど、現代語の変則形態は、言語がどれだけ単純になりうるのかを教えてくれる。
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インデックスあるいはアイコンからシンボルへの飛躍は、言語進化では巨大な一歩だが、概念の発達という点では比較的小さな一歩だ。私は初めて熱帯雨林に入ったとき、つねに蛇がいないか警戒していた。行く手に「這うように」膨らんだ根があって、一部が落ち葉に覆われていたりすると、私にはまず、身をよじって進む恐ろしい大蛇に見え、動かない植物だと思うのはその後だった。おそらくエレクトゥスの2人連れが、これと似たような経験を語るときには、木の根を蛇の類像と解釈し直すこともあっただろう。さらにその後、蛇の象徴にもなりうる(同様の進化は、エジプトの象形文字や中国の漢字の体系の、最古のものと最新のものを比べたときにも見られる。時間の経過とともにアイコンがシンボルに、つまり、恣意的になる)。
シンボルは、知識を学習、保持、統合して個人や集団のアイデンティティの感覚にすることができる文化の中に収まった、心の中で自然に生じる。その一例はたった今挙げた、心が誤りを利用して見まちがいから類像や象徴、つまり別のものを「表す」像へと進む場合があることだ。
しかしシンボルは、自然なものを文化の中にある慣習的なものに適合させることからも生じる。
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では、ホモ・エレクトゥスが発明したのは何かと言えば、シンボルだった。そしてシンボルは言語まであと一歩のところにある。

ときとともに、エレクトゥスが使う形式や意味の単位は並べられ、あるいは構造化されただろうし、それが現代諸語のようなさらに進んだ構造を生むことになった。しかし人類はどのようにして、他の生物がしなかったことができるようになったのか。答えは簡単だ。人間の脳が、人間による創出と言語のすべてを引き受け、形成し、強化した。そして、言語はその借りをきっちりと返した。脳がさらに知的になるのを助け、前より良いコミュニケーションをとれるよう、人間に文化的、性的な淘汰圧をかけたのである。
つまり、これまでに得られている証拠は、ホモ・エレクトゥスが言語を有したという主張を強固に支持する。文化の証拠――価値、知識構造、社会組織――があり、(ホモ・サピエンスと比べればゆっくりではあるが)道具使用と道具の改良があり、目に見える範囲を超えた。想像できる陸地や海への探検があり、さらに、装飾や道具の形でのシンボルがある。ホモ・エレクトゥスの認知革命を悦明できるのは言語だけだ。
言語は最初のシンボルは現れてから、比較的急速に進化した。しかしヒト族のコミュニケーションの便益が増すにつれて、出す音をもっと明瞭にし、談話を長くし、会話を複雑にする進化の圧力も増した。ヒト族がもっと複雑でもっと効率的なコミュニケーションを支えられるよう生理的な進化した様子を理解しないことには、人間の言語の進化の物語は語りきれない。
それには、脳と音声能力の進化についてすこし述べておく必要がある。