じじぃの「糖尿病・足首の壊疽・遺伝子治療の時代が始まる!TVシンポジウム」

注射によるHGF遺伝子治療(末梢性血管疾患)


HGF遺伝子治療

HGF遺伝子治療薬開発プロジェクトHGFは、肝臓の細胞を増やす因子として1984年に日本で発見されました。 最初は、肝臓の病気の治療薬として研究されていましたが、HGFの遺伝子を投与することで血管を新しく増やす治療法が1995年に大阪大学の森下竜一教授らの研究チームにより発見されました。
HGF遺伝子治療薬は、血管が詰まり血流が悪くなっている虚血性疾患に対し「血管を新生する」というこれまでにない作用を有する治療薬になる可能性があります。
血管が詰まることによって生じる病気には、例えば、(1)糖尿病などによる動脈硬化が原因で足の動脈が閉塞し、血液がうまく届かず壊死して最終的には足を切断しなければならなくなる末梢性血管疾患(閉塞性動脈硬化症やバージャー病)、 (2)心臓の冠動脈の血液の流れが悪くなって起こる虚血性心疾患(狭心症心筋梗塞)等があります。
これらの病気に対する現在の治療法として、重症例に対しては薬物療法に加えてバルーンカテーテルによる血管内治療(カテーテルにより血管を通して動脈の再疎通を行う治療法)や外科的なバイパス手術が行われますが、それでも十分に回復しない場合もあります。HGF遺伝子治療薬は、こうした他に治療法がない症例に対する治療薬として期待されます。
http://stock.eimei.tv/?m=pc_ir_anges_hgf&bp=pc_ir_anges_pipeline

TVシンポジウム「遺伝子治療の時代が始まる」

2020年10月31日 NHK Eテレ
【司会】三宅民夫 【ゲスト】生稲晃子(女優) 【解説】森下竜一(大阪大学教授)
遺伝子に働きかける方法は、これまでの医療とは全く異なる。2019年に日本でも治療薬が承認され、“遺伝子治療元年”の声も。
東京大学ではがん治療への応用が始まり、難病の脊髄性筋萎縮症、糖尿病の症状緩和や、新型コロナウイルスのワクチン開発へも期待が高まる。
都内で10月下旬に開かれた「遺伝子治療フォーラム」での医師や患者・家族らの議論をまとめ、多くの人々が遺伝子治療を受ける時代への提言に耳を傾ける。

糖尿病の遺伝子治療

糖尿病は進行すると動脈硬化で足の血管が詰まって血液の循環が悪くなり、最終的には壊死することがある。
HGF遺伝子を組み込んだプラスミド(環状のDNA分子)を筋肉注射するというもの。すると、筋肉がプラスミドの貯蔵庫として働き、HGF遺伝子の欠損した細胞にプラスミドが入り込んでHGFを作り、HGFによって、閉塞部分を迂回するバイパス血管が自律的に作られる。血流が生じれば体内にある必要な細胞や遺伝子などが流れ込んでくるため、治療は一時的で済む。
プラスミドは、大腸菌など細菌の細胞内にあって細胞の生存に関係しないDNA分子。環状になっていることが多い。これにHGF遺伝子を組み込み、大腸菌内で大量培養して精製する。注射は通常8~12週間に、2~3回のみ。筋肉注射なので、医師にも難しい技術はいらない。このHGF遺伝子治療薬は、重症虚血肢のほか虚血性心疾患とリンパ浮腫の適応拡大も前期臨床試験に入っている。
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-10-31&ch=31&eid=29468&f=1699

10月31日 NHK Eテレ TVシンポジウム「遺伝子治療の時代が始まる」 より

糖尿病の遺伝子治療

使うのはHGFと呼ばれる遺伝子治療薬です。
HGFは肝臓に多く見られるもので血管を再生する働きがあると、最新の研究で分かってきました。
この遺伝子を運ぶのはウイルスではなくプラスミドというDNAです。
これを糖尿病で悪化した足の患部周辺の血液が流れなくなった8ヵ所に筋肉注射で投与。
HGFの効果が持続するよう治療は4週ごとに2~3回実施に分けて行います。
プラスミドによって運ばれたHGF遺伝子が筋肉に入ると、血管を再生するに必要なHGFタンパク質を大量に生み出します。
すると、そのタンパク質が次々と新たな血管を作り始めます。
壊死しかけた患部の周りに新たな血管が形成され、血管が行き渡るようになり、潰瘍が改善されます。
60代男性の患者さんは糖尿病が進行し人工透析を受けています。足のかかと部分に壊疽ができています。
60代男性の患者、「その治療を受けられることによって歩きやすくなりました。多少、足が温かくなりました」
担当の医師、「この治療は運動とセットなんです。これを打って血管がモリモリできるというものではない」
治療から4週間後、この患者さんは歩く訓練ができるまで回復しました。