じじぃの「歴史・思想_313_ユダヤ人の歴史・モーセと十戒」

Moses and the 10 Commandments

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yHKFvxgQOFI

The Ten Commandments

The Ten Commandments Were Written on Sapphire Tablets From God’s Throne

The majority of Christians think of the Ten Commandments as being inscribed on tablets of grey stone. However, rabbinical Judaism as found in the Talmud and Mishnah teaches that the tablets of the law were made of sapphire.
http://appleeye.org/2014/06/15/the-ten-commandments-were-written-on-sapphire-tablets-from-gods-throne/

ユダヤ人の歴史〈上巻〉』

ポール ジョンソン/著、石田友雄/監修、阿川尚之/訳 徳間書店 1999年発行

神の主権と人間の尊厳 より

紀元前1250年頃発布されたと考えられる最も初期のモーセの法典は、当時すでに大昔と考えられた遠い過去から続く伝統の一部であった。最古の法典は、イスタンブール古代オリエント博物館に保存される文書の中から発見されたウル第3王朝の「シュメールとアッカドの王」ウルナンムが編纂したもので、紀元前2050年頃にさかのぼる。この法典には、神ナンナがウルナンムを統治者として選び、この新しい王が不誠実な役人を罷免(ひめん)し、正確な度量衡を制定したなどという内容が記されている。アブラハムは、この法典の条文に接したことがあるにちがいない。アブラハムが知っていた可能性があるいま1つの法典は、紀元前1920年頃のものである。これは現在イラク博物館が所蔵する古代エシュヌンナ王国の2枚の粘土板からなる。アッカド語で書かれており、神ティシュパクから土地の王を通じて発布された、物権法の規定を約60挙げている。

神とイスラエルの契約の基礎、十戒 より

モーセの法典の中核は「十戒」である。それはモーセの口を通して語られた10の戒律あった(申命記4章13節、5章6-18節)。「十戒」の原形とされるものは、出エジプト記20章2節から17節に記録されている。その内容についてはまだ多くの疑問があり、あいまいな点が残る。おそらくそもそも「十戒」の原形は、もっと短く飾り気がなく簡潔であった可能性が高い。後代になっていろいろ修飾がなされたようである。
モーセによって直接与えられた最古の「十戒」は、次の3部分に分類できる。すなわち第一戒から第四戒までは神と人との関係を規定したものの、第六戒から第十戒までは人と人との関係を扱い、第五戒は前後2つの部分を結びあわせ、親と子の関係を規定したものである。これを並べると次のようになる。
  序言 「わたしはあなたの神ヤハウェである」
  第一戒 「わたしの他何ものも神としてはならない」
  第二戒 「自分のために偶像を彫ってはならない
  第三戒 「あなたの神ヤハウェの名をみだりに口にしてはならない」
  第四戒 「安息日を覚えよ」
  第五戒 「あなたの父母を敬え」
  第六戒 「殺してはならない」
  第七戒 「姦淫してはならない」
  第八戒 「盗んではならない」
  第九戒 「いつわりの証(あかし)を立ててはならない」
  第十戒 「むさぼってはならない」
こうした倫理律の一部は、他の古代オリエント文明にも共通して見られるものであった。例えば『無実の主張』というエジプトの書物がある。死者の魂が最後の審判に際し、自分が犯さなかった罪の数々を列挙するのである。しかし神と人とに対する正しい行ないを総括的にまとめたうえで提供し、それが人々に受け入れられ、すべての民の心にしっかりと刻まれたものとしては、古代社会で「十戒」に並ぶものは、1つとしてない。
十戒」は神との契約の基礎である。そもそもアブラハムによって結ばれヤコブが更新した契約は、今モーセとその民すべてによって、公の場で厳粛に、再び更新された。出エジプト記19章から24章に短くまとめられ申命記により詳しく記載されたモーセを介して結ばれた神との契約は、ヒッタイト人など古代オリエントの諸民族が終結した条約の形式を踏襲していることが、近代の研究によって明らかになった。それは序言で歴史的背景と目的を述べ、続いて約束の性格、神々の証人、恩恵と呪い、本文、そして契約事項を記した石板、あるいは粘土板の保管を含む形式である。
しかしモーセの契約が特異なのは、それが国家間の条約ではなく、神と人との協定である点である。この契約のもとで、古代イスラエル社会は自らの利益と神の利益を1つに重ね、神による保護と繁栄の見返りに、彼らの生活の全側面を思うがままに支配する絶対的統治者として神を受け入れた。したがって「十戒」は、単に出エジプト記申命記民数記に列挙されている複雑な神の法体系の、中心をなすに過ぎない。