じじぃの「ミエリン鞘・進化神経行動学・日本人にさかのぼるルーツ!もうひとつの脳」

Multiple Sclerosis and the Myelin Sheath

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=JpmIVrltv30

田崎 一二博士とノブコ夫人

神経線維を絶縁する組織

  

脱髄疾患の概要

2018年9月 MSDマニュアル家庭版
脳の内外のほとんどの神経線維は、脂肪(リポタンパク)でできた何層もの組織(ミエリンといいます)に包まれています。それらの層は髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる組織を形成しています。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/09-%E8%84%B3%E3%80%81%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%80%81%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87%E3%81%A8%E9%96%A2%E9%80%A3%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%84%B1%E9%AB%84%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

進化神経行動学 神経行動学に流れる二大理念”比較と進化”――日本人にさかのぼるルーツ

ロナルド・R・ホイ
まず、今回の「科学」特集に進化神経行動学について記事を書かせていただけることは大きな喜びであり、名誉なことである。
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ここでは数多い例の中から数例を紹介したい。私はここでとくに日本の神経生物学者がどれだけ大きな貢献をしてきたのかを示したい。なぜなら彼らは歴史的にみても今なお最も傑出した比較神経生理学者であり、神経行動学者だからである。
まずは田崎一二(1910~2009)から始めよう。
田崎は神経生理学の世界で長きにわたって多大な貢献をしてきた。彼の研究者としてのキャリアの始まりは1930年代にまでさかのぼる。

彼の功績には脊椎動物(カエル)のミエリン神経における跳躍伝導の実験的検証がある。

また、彼は最初にモルモットから蝸牛マイクロフィン電位を記録し、蝸牛における進行波説の電気的な証拠を得た。また彼は二重カニューレ法により以下の巨大軸案内のイオン組成を自由に変化させつつ、電気活動を記録することにも成功した。
彼は分子生物学の勃興よりもはるか以前に、細胞や分子レベルで神経生理学の最も基礎的な課題に取り組んだのである。
http://www.es.hokudai.ac.jp/labo/nishino/Hoy%EF%BC%88%E8%A5%BF%E9%87%8E%E8%A8%B3%EF%BC%89.pdf

『もうひとつの脳』

ダグラス・フィールズ/著、小西史朗、小松佳代子/訳 ブルーバックス 2018年発行

シナプスを超えた思考 より

田崎一二という彼の名前は、あまり知られていないが、彼の精力的な仕事のもたらした成果を知らない者は誰もいない。私たちの神経系が筋肉を制御するために、神経を通して電気を送ることによって機能していること、そして、感覚器官から脳へインパルスが送られていることは、誰もが知っている。だが、インパルスはどのようにして軸索を伝導されているのだろうか? この疑問に答えたのが、田崎博士だ。
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田崎はその大仕事(ニューロンを通して送られているシグナルを観察するという)を、単純な道具と自作の装置を使って手作業で行い、つぎに測定したデータの意味を解き明かそうと、数式を適用した。軸索における電気の伝わり方をミエリンが変化させていることを、田崎は見出した。電気的インパルスは、誰もが想定していたように、電波として神経線維を駆け抜けているのではなかった。バレエダンサーが舞台の端から端までを2、3度の跳躍で横切るように、ミエリンがインパルスをひとつのランヴィエ絞輪からその次へと、順に飛び移らせていることを、彼は発見した。この発見は、どうしたら有髄軸索が無髄軸索の100倍も速く情報を伝えられるのかを説明していた。この基本的なプロセスが、脳と全身のあらゆる有髄回路の設計と働きを支える基礎を成しており、軸索のミエリン絶縁を攻撃する多発性硬化症やその他の疾患に罹った人々を苦しめている麻痺の原因ともなっている。
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1960年代に神経線維の電気的興奮の研究に取り組んでいたとき、田崎は注意深い観察に基づいて、細胞膜を通って移動するイオンが消費したエネルギーに従って、神経インパルスが軸索にわずかな光学的変化と微小な温度変化を引き起こすことを明らかにした。さらに驚いたことに、彼は精巧な装置を作り上げて、神経インパルスの発火中に、軸索膜を介して移動するイオンと水分子が引き起こす、軸索の微細な膨張と収縮を検出した。
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どんな細胞も、刻々と変化する環境の中で厳密に容積を調節するという難問に直面していることは、私も承知していた。体液中の塩分量が減ると、細胞内外の平衡を回復するために、水やイオンが細胞膜を通して再分配されて、細胞は膨張する。細胞が膨張し始めても破裂しないのは、細胞膜にチャネルを持っていて、細胞を出入りする水や小分子の流れを調節し、正常な細胞容積を回復できるからだ。電気的インパルスが軸索を膨張させたとしても、これらのチャネルが開いて小分子や水を放出し、軸索を収縮させて正常な大きさに戻しているのかもしれない。このようなチャネルを通してATPが外へ出ていけるのならば、神経伝達物質が放出されるシナプスから遠く離れていたとしても、グリアはこのATP放出によって、軸索内の神経インパルスの活動を感知することができるだろう。
この仮説を検証するために、私は9年にわたってさまざまな実験を積み重ねた。そしてついに、この仮説を証明し、シナプスを介することなく、軸索から他の脳細胞へ情報が送られる新しい様式を解明して、この研究を完了した。研究成果を公表するために論文を書き上げ、その謝辞のなかで、田崎博士に謝意を表した。

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どうでもいい、じじぃの日記。
もうすぐ、ノーベル賞の発表(10月5日~)が始まります。
皆さんは田崎一二という方をご存じですか。
残念ですが、2009年に亡くなってしまいました。
田崎一二博士(神経生物学者)は、ニューロン(脳の神経細胞)を通して送られているシグナルを観察するということに世界で初めて成功した方なのだそうです。
ついでですが、脳の細胞死は神経細胞のミエリン(髄鞘)の損傷が深く関係していることが分かってきました。