じじぃの「人の死にざま_1736_カミッロ・ゴルジ(内科医・科学者)」

Camillo Golgi Nobel Medicina 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=GjnSuU89LKc
 ゴルジ染色

カハールとゴルジ、シナプスのギャップ論争
シナプス神経細胞神経細胞の接合部
シナプスにはギャップはないと主張した有力な科学者のひとりがイタリアの内科医のカミッロ・ゴルジ(Camillo Golgi, 1843-1926)であった。彼は、硝酸銀を重クロム酸カリウムと反応させることで、クロム酸銀の粒子を神経鞘に固定させ、神経細胞の突起部分を染め出す染色法を開発した。彼の染色法は、ゴルジ染色法と呼ばれるようになった。ゴルジはこの染色法の開発のみでなく、筋肉が骨につく部分にある腱にある感覚器官(ゴルジ腱器官)や、細胞内小器官のゴルジ装置の発見者としても知られている。
一方、スペインの神経解剖学者、サンティアゴ・ラモン・カハール(Santiago Ramony Cajal, 1952-1934)は、ゴルジ染色法などにより染め出した中枢神経系の組織を丹念に観察し、神経系は神経細胞ニューロン)という非連続の単位によって構成されており、個々の神経細胞は、細胞体、樹状突起、軸索を持ち、神経細胞の接合部(シナプス)にはギャップがあると主張した。
ゴルジとカハールは1906年にノーベル医学・生理学賞を受賞したが、お互いに全く異なる立場から受賞記念講演を行い、授賞式ではお互いに言葉を交わすことは無かったと伝えられている。シナプス部にギャップがあるという決定的な証拠は、電子顕微鏡によるものであったが、この論争は、カハールが、ゴルジ染色法で染めだしたニューロンの形を丹念に調べた後、ほとんど勝負がついていた。
http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/15-1/index-15-1.html
『バイオサイコロジー―脳 心と行動の神経科学』 ピネル/著、佐藤敬・若林孝一・泉井亮・飛鳥井望/訳 西村書店 2005年発行
神経解剖の方法と方向づけ (一部抜粋しています)
ニューロンを可視化する際に最も大きな問題点は、ニューロンが小さいことにあるのではない。主要な問題点はニューロンが密に存在し、その軸索や樹状突起が複雑に入り組んでいるために、適切な処理なしでは顕微鏡ではほとんど何も見えないということである。神経解剖学的研究において鍵となるのは種々の方法で神経組織を処理することで、各々の方法は神経構造のさまざまな側面を明らかにし、各々の資料によって得られた知識を統合することができる。この点は以下に示す種々の神経解剖学的研究において明らかである。
黎明期の神経科学にもたらされた最大の恩恵は1870年代初頭のイタリアの医師Camillo Golgiによるゴルジ染色Golgi stainの偶然の発見である。Golgiは神経組織のブロックを重クロム酸カリウムと硝酸銀で処理することにより髄膜を染めようとしたのであるが、その時に驚くべきことが起こった。何らかの未知の理由により、Golgiが用いていた2つの物質の化学反応により生じたクロム酸銀が切片内の数個のニューロンに浸み込んでゆき、そのニューロン全体を黒く染めたのである。その発見は、シルエットではあるが個々のニューロンの観察を初めて可能にした(画像参照)。しかしながら、切片上のすべてのニューロンを染める染色法では、ニューロンの構造はわからない。なぜなら、ニューロンはきわめて密に集合しているからである。
ゴルジ染色は染色された少数のニューロンの輪郭を見ることを可能にしたが、ある領域にどの程度の数のニューロンが存在するか、ニューロンの内部構造がどうなっているのか、については何も示さない。これらの欠点を克服した最初の神経系の染色は、ドイツの精神科医Franz Nisslによって1880年代に開発されたニッスル染色Nissl stainであった。