じじぃの「科学・芸術_991_日本の企業・信越化学」

【日経225】企業分析・紹介~ 信越化学工業株式会社~

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=rR03QVDErAg

wafer market share

Value Chain Activity: Manufacturing Wafers

●Market Share
The Top-5 companies share 93% of the wafer market, and the top-3 companies demand 78%.
There are regional differences in the market share though. While Shin-Etsu, from Japan, is also the market leader in Asia-Pacific, Siltronic is the leader in Europe, whilst SUMCO leads the market in North America.
http://www.greenrhinoenergy.com/solar/industry/ind_02_wafers.php

夕刊フジ』 2020年7月30日発行

挑戦するトップ 信越化学工業 金川千尋会長 【執筆者】大塚英樹 より

金川千尋ちひろ、94)の掲げる経営ビジョンは、「世界に通用する企業になり」である。

それは見事に実現され、信越化学は塩ビと半導体シリコンウエハーは世界1位、シリコン樹脂は日本で1位、電子機能材料、有機合成も世界的シェアを堅持する優良企業になった。

金川信越化学が、新規事業に注力すると同時に、技術力と生産性の向上に一生懸命に努力してきた結果である。とりわけ金川が腐心してきたのは生産性向上で、それは合理化を徹底的に追求するという考え方で達成してきた。
金川流マネジメントの最大の特徴は「少数精鋭主義」にある。
その集大成とも言うべき会社が、米国の塩ビ製造販売子会社「シンテック」。売上高3436億円、年産能力295万トンの世界No.1の塩ビメーカーにもかかわらず、従業員はわずか約550人。代金回収は金川の秘書が兼務でこなし、経理・財務も数人で行うといった具合に、極限まで合理化している。
その結果、経常利益率21.4%(2019年12月期)という利益率世界トップクラスの化学会社になった。合理性を徹底追求してきたシンテックこそ、金川流の原点となり、信越化学の成長モデルとなった会社なのだ。かつての金川は人材について私にこう語った。
「少数精鋭を徹底することが最重要。社長になったときに真っ先に手を付けたのが『人』の問題で、毎年600人採っていた新卒採用を一気にゼロにしました。明らかにムダな人員を採用していたからです。要らない人は採らない、要らない組織はつくらない。経営の原理原則です」
ちなみに、同社のここ数年の新卒採用は研究・製造部門を中心に毎年60人前後である。
金川は、少数精鋭を実現するにはプロの人材を育てることだと明言する。それには長く一つの仕事を担当させ、その分野の能力を磨いてもらうのが合理的だと訴える。
興味深いのは、部門間の異動はムダであり、意味なく人をローテーションさせる定期的な異動は最も悪い人事だと考えていることだ。
「営業の場合、顧客企業との信頼関係という貴重な無形資産を築くのに10年、20年かかる。それなのに頻繁に担当者を代えるのは大きなマイナスだ」(『毎日が自分との戦い』日本経済新聞出版)
「仕事は自ら切り開くしかない」「人は自らが学んで実践しようという気概がなければ、どんな教育のお膳立てをしても役立たない」「会社にできることは社員に仕事のチャンスを与えることだけだ」と、金川の考え方は至って明快だ。金川が言う。
「経営者の仕事は社員に仕事のチャンスを与え、伸びる人間を見つけることです。その結果が成功ならば、さらに重要な仕事をやらせてみる。失敗なら、できる人に交代させる。必要なのは実務教育で、一般論や精神論はいらない」
もう一つの特徴は、無駄の排除の徹底化だ。例えば会議。3分の1に激減させ、取締役会の時間も、6~7時間から3時間に短縮した。さらに、出席者も現場に精通した専門家だけにした。
圧巻は中期計画づくりの中止である。金川は私に語った。
「ムダの最たるもの。中期計画をつくるために工場から何人もの人間が集まりますが、1年先の状態がわからないのに3年先が誰に読めるか。売り値を高くして原価率を下げればいくらでも帳簿上の利益は書ける。仮定に基づいた計画を作って喜んでいるヒマがあったら、別のことに時間を使ったほうがよっぽどマシだ」
カンパニー制の導入など、組織改革で企業活性化を図る考え方に対しても否定的だ。
「組織を変えるには1時間もあれば充分。しかし、組織を変えても業績は伸びない。仕事を伸ばすのはあくまで人の力で、人材をいかに育てるかに目を凝らすのが経営者の役割。人が育つには5年、10年の歳月を要する。組織をいじるヒマがあれば、それよりも、少しでも人材のことを考えるべきだ」
今後、この金川流が同社内でどう継承されるかが注目される。