じじぃの「歴史・思想_190_未完の資本主義・ショーンベルガー・データ納税」

Amazon paid only 1.2% in federal taxes on $13B in profit

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gGYIwUBgRac

Amazon in Its Prime: Doubles Profits, Pays $0 in Federal Income Taxes

February 13, 2019 ITEP
Amazon, the ubiquitous purveyor of two-day delivery of just about everything, nearly doubled its profits to $11.2 billion in 2018 from $5.6 billion the previous year and, once again, didn’t pay a single cent of federal income taxes.
https://itep.org/amazon-in-its-prime-doubles-profits-pays-0-in-federal-income-taxes/

PHP新書 未完の資本主義―テクノロジーが変える経済の形と未来

大野 和基【インタビュー・編】
内容説明
経済学者シュンペーターは「資本主義の欠点は自ら批判されたいと願っている点だ」と述べた。批判すらも飲み込み自己変容を遂げていく「未完」の資本主義。とりわけ近年は、テクノロジーの劇的発展により、経済の形が変わり、様々な矛盾が噴出している。本書は、「テクノロジーは資本主義をどう変えるか」「我々は資本主義をどう『修正』するべきか」について、国際ジャーナリスト・大野和基氏が、世界の「知の巨人」7人に訊ねた論考集である。経済学、歴史学、人類学…多彩な視座から未来を見通し、「未完」のその先の姿を考える、知的興奮に満ちた1冊。
【目次】
プロローグ―「未完」のその先を求めて
7 「データ資本主義」が激変させる未来(ビクター・マイヤー=ショーンベルガー)
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784569843728

『未完の資本主義 テクノロジーが変える経済の形と未来』

ポール・クルーグマン, トーマス・フリードマン, デヴィッド・グレーバー, トーマス・セドラチェク, タイラー・コーエン, ルトガー・ブレグマン, ビクター・マイヤー・ショーンベルガ―, 大野和基/編 PHP新書 2019年発行

「データ資本主義」が激変させる未来(ビクター・マイヤー=ショーンベルガー) より

データの解放がイノベーションを生む

――アマゾンが独占企業にならないようにするのはどうすればいいですか。

ショーンベルガー

 彼らがもっているデータへのアクセスを一定の強制力のもとにオープンにさせることです。すると他の人々は、その情報を使ってレコメンデ―ション(顧客の好みを分析して、顧客ごとに適すると思われる情報を提供するサービス)をすることができます。データをオープンにするためには、政府の介入も必要です。アメリカでは、アマゾンやグーグルの企業分割を要求する声が上がっています。しかし私は分割ではなく、彼らが有するデータをオープンにすることを推奨します。そうすればより一層のイノベーションが生まれます。スタートアップ企業が増え、市場も現在よりはるかに優れたものになるでしょう。

データ納税という処方箋

――フランスの経済学者、トマ・ピケティは「資本の分配」「富の再分配」の観点から、グローバルな資本課税強化を提案しました。あなたはデータの観点から、「データ納税」という概念を提唱していますね。

ショーンベルガー

 ピケティは西洋、とりわけアメリカの労働分配率が減少していることを指摘しました。すなわち、労働者の賃金がGDP国内総生産)に対して比率が低いことを意味します。そこで、経済学者は、資本分配率が増加しなければならないと考えていました。
 しかしもっと最近になると、きめの細かいデータにアクセスできる経済学者たちは、資本分配率も減少していることをものの見事に証明しました。つまり、資本家がもつ資本に対するリターンも減少しているということです。

――では誰が勝者なのでしょうか。

ショーンベルガー

 それはアマゾンやグーグル、アップルなどの企業利益です。興味深いのは、アップルが1000億ドルの利益を出したとき、もしそれを投資に使いたくてもあまりリターンが期待できないことです。
 我々がいま生きているのは、富裕層がますます豊かになる世界ではありません。資本家――大木の場合一生懸命働いて貯蓄をしてきた小規模資本家――が報われない世界なのです。彼らは資本や貯蓄、労働、仕事に対するリターンで損をしてしまいます。

だから企業利益に対する課税が必要ですし、それが大企業の力の源泉を減少させます。その一部としてデータ納税を強制することが、私の1つのアイデアです。

 世界が変れるのは、ジェフ・ペゾスがアマゾンのデータをオープンにして、何千という小さなスタートアップ企業が参入し、そのデータを使ってさらによい製品をつくり出すときです。

――ジェフ・ペゾスはデータ納税のことを理解しているでしょうか

ショーンベルガー

 もしペゾスが、アマゾンを分割するか、違法性を問われるか、データ・アクセスを許可するかの選択を迫られれば、データ・アクセス許可を選ぶと思います。

人間がもつ意思決定という理由

――AIによる自動化の対象は単純労働にとどまるといわれるなか、あなたは管理職や経営者にも及ぶ可能性に触れています。高度な意思決定をAIに委ねる日が来たとき、人間に求められる能力は何でしょうか。

ショーンベルガー

 管理職や経営者にもAIの余波が及んだとしても、彼らにはまだ多くの仕事が必要とされています。企業の意思決定は、日常生活でトイレットペーパーをどれほど買うかといった固定されたものではありません。新製品をつくるべきか、市場に参入すべきか、工場を閉鎖すべきかなど、高度な決断が必要です。毎日繰り返されるようなルーティーンの意思決定は、レコメンデ―ション機能が得意とする分野ですが、企業をめぐる複雑な決定は不向きです。
 しかし、同じような意思決定を日々行なう。地位の低い管理職の地位は脅かされるでしょう。さらに低いレベルの意思決定はルーティーンになり、AIに代替されます。したがって将来の経営者は、特定の分野についてだけ知識を蓄えるのではなく、焼きにわたる教養を身に付ける必要があります。

――もしわれわれが意思決定のプロセスであまりにもAIに依存しずぎると、人間の決断の自由度を失うかもしれません。

ショーンベルガー

 我々が保障しなければならないのは、コンピュータにどの意思決定を委ねるのか、委ねないのか、の選択です。自分が国王でもない限り、意思決定を誰かに委ねることはできません。
 意思決定をコンピュータに委ねるか、自分で行うかの選択肢がある――美しい未来とは、そのようなものです。それは我々に与えられた素晴らしい自由です。自らにとってもっとも重要で困難な、もしくはもっとも報われる決断は、自分たちのために取っておくでしょう。