じじぃの「歴史・思想_189_未完の資本主義・ブレグマン・生きることの意義」

Jobs and Occupations / Learn English vocabulary about professions

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=x8tF2aQoukY

仕事とは何か?米国MBAホルダーの考える仕事の3つの定義とは?

2017-09-07
・ライフワーク=Life Work
・ライスワーク=Rice Work
・ライクワーク=Like Work
の3つです。
https://kokopelli-hopi.com/what-is-work/

PHP新書 未完の資本主義―テクノロジーが変える経済の形と未来

大野 和基【インタビュー・編】
内容説明
経済学者シュンペーターは「資本主義の欠点は自ら批判されたいと願っている点だ」と述べた。批判すらも飲み込み自己変容を遂げていく「未完」の資本主義。とりわけ近年は、テクノロジーの劇的発展により、経済の形が変わり、様々な矛盾が噴出している。本書は、「テクノロジーは資本主義をどう変えるか」「我々は資本主義をどう『修正』するべきか」について、国際ジャーナリスト・大野和基氏が、世界の「知の巨人」7人に訊ねた論考集である。経済学、歴史学、人類学…多彩な視座から未来を見通し、「未完」のその先の姿を考える、知的興奮に満ちた1冊。
【目次】
プロローグ―「未完」のその先を求めて
6 ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う(ルトガー・ブレグマン)
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784569843728

『未完の資本主義 テクノロジーが変える経済の形と未来』

ポール・クルーグマン, トーマス・フリードマン, デヴィッド・グレーバー, トーマス・セドラチェク, タイラー・コーエン, ルトガー・ブレグマン, ビクター・マイヤー・ショーンベルガ―, 大野和基/編 PHP新書 2019年発行

ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う(ルトガー・ブレグマン) より

機械化により生まれる富を分配せよ

――あなたは「人がAIやロボットと競争し、格差が広がる時代には、ベーシックインカムと1日3時間労働が必要になる」と著書で訴え、話題になりましたね。テクノロジーの恩恵を手放したくなければ、金銭・時間・ロボットを再分配せよと主張していますが、その具体的な方法とは。

ブレグマン

 ロボットの台頭で、20年後には従来の仕事の半分がなくなるといわれています。実際には40年先、あるいは80年先になるかもしれませんが、大事なのはそれが確実に起こるということです。そこで大きな疑問となるのは、誰がそのロボットを所有するのかということです。その答えは、ごく限られた少数の人ということになります。残りの人は、それに対してお金を支払わなくてはなりません、
 私は、それはあまりよい社会だとは思えません。そこで私が提案するのは、誰もが技術進歩の利益を享受できるように、配当を与えるということです。ロボットがたくさん働いて、農業や工業、サービス業などの分野で我々の仕事を代替してくれれば、我々は自分が本当にやりたいことに集中できます。医療や教育のコストが上がっていると、多くの人が心配しています。だからこそ我々は、自分たちが長けたことに注力すべきなのです。
 ロボットの先生がうまくいくとは思えません。ロボットによるヘルスケアも、日本では試しているようですが、私はあまりよいアイデアだとは思いません。ヘルスケア分野で一番大切なのは、その人に注意を払い愛情を与えることだと思うからです。人は放っておかれると死んでしまいます。
 最近私は、インターネット上で興味深いスピーチを見ました。イタリアで、100歳を超えるような長寿の人が多い町に研究に行った人の話です。そこの医療制度や食事は、特筆すべきことはありませんでした。それではなぜそんなに長生きできるのか、理由は非常にシンプルでした。彼らは決して一人にされなかったのです。家族や友達がいつもそばにいました。翻って、日本やオランダではどうでしょうか。私は、この問題においてロボットが解決策になるとは思いません。技術進歩の恩恵はむしろ、我々が一緒に過ごす時間を増やせるということではないでしょうか。

――20ヵ国で訳されたあなたの本の原題は「現実主義者のためのユートピア」です。矛盾したタイトルのようにも聞こえますが。

ブレグマン

 文明の節目ではつねに、かつてはユートピア的な空想だと思われていたことが現実になっています。たとえば、奴隷制の廃止、民主主義、男女の権利の平等、福祉国家の権利などです。
 つまり、歴史のなかで何度も、ユートピアは現実となっています。私がこの本で伝えたかったのは、それをまた起こすことは可能だということ、今はばかばかしいと思われているアイデアが、どのようにすれば将来現実になるかということです。
 特にイギリスのEU離脱トランプ大統領の当選以降は、世界中の人が、新しいアイデアを求めていると思います。また、多くの人が燃えつき症候群やうつ病に苦しみ、自分の仕事は無意味なのではないかと悩んでいます。人々は、新たなユートピア的な答えを探し求めているのです。
 興味深いのは、本書が出版された国々が直面している問題はしばしば非常に似通っているということです。程度の違いがあるわけです。私はもともと、母国オランダのためにこの本を書きました。世界の人々は、特に日本などと比べれば、オランダは非常にリラックスしていて、労働時間の短い国だと思われています。しかし実際には、オランダでさえ、労働時間は伸び、人々はこれまで以上にストレスを感じています。
 ただ、2017年ににほんを訪れて、日本の人々にこそ、このほんを読んでもらわなければと思いました。日本ほど、仕事に取り憑(つ)かれている文化は見たことがありません。日本人は、大きな代償を支払っています。私は日本に「過労死」という言葉があるのに驚きました。オランダ語にはそんな単語はありません。
 我々のヨーロッパ人には、日本から学ぶべきことがたくさんあります。日本の通りにはゴミがほとんどなく、人にとても親切です。
 一方で、日本人は人生で何を大切にすべきかについて真剣に議論する必要があるとも思いました。たとえば自分の子供との時間を増やすとか、日本の合計特殊出生率は約1.4人と、とても低いですよね。教育費も非常に高いです。
 どうしてもこのようなことが起こっているのか、きちんと議論する必要があります。原因の1つに、若い人たちが給料の高い職を得るべきだというプレッシャーを受けていることが挙げられると思います。だから、仕事に必死で、そのぶん自分の子供に割く時間がありません。しかし、人生はたくさんのお金を稼ぐことがすべてなのでしょうか。私はそうは思いません。私は、「人生の意義とは何か」こそ、人生最大の問いだと考えています。しかし、近年、我々はその問いについて考えるのを忘れつつあります
 最近の調査によると、働くイギリス人の37%、オランダ人の40%、ベルギー人の30%が、自分のやっている仕事はまったく意味がないと感じているそうです。

人生で最大の課題は「生きることの意義」を見つけることです。働くことこそ生きる意味だという人々がいます。一方で、彼らは自分の仕事はまったく無意味だと感じています。何かが間違っていると思いませんか。

 進歩とは何か。富とは何か。公正な社会とは何か。平等と自由の重要性は何か。我々は基本に立ち返る必要があると思います。

――なぜ、誰も新しいユートピアモデルを提案できていないのでしょうか。

ブレグマン

 私が本に書いたアイデア自体はかなり古くからあるものです。たとえばベーシックインカムの起源は、18世紀にまで遡ります。歴史上の偉大な思想家たちの多くは我々の労働時間はどんどん短縮していくだろいと考えていました。だから私がやったことは、新しいアイデアを生み出すのではなく、古くからあるアイデアを再発見し、ほこりを払って、新しい時代向けに作り直すことでした。これは、人類の古くからの夢なのです。