総裁選争点…経済政策成長戦略か分配強化かアトキンソンが生直言 【前編】
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https://www.fnn.jp/articles/-/243094
総裁選争点…経済政策成長戦略か分配強化かアトキンソンが生直言 【前編】
プライムニュース 「総裁選争点…経済政策成長 戦略か分配強化か アトキンソンが生直言」
2021年9月22日 BSフジ
【キャスター】新美有加、反町理 【ゲスト】デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)、井手英策(慶應義塾大学経済学部教授)、斎藤幸平(大阪市立大学大学院経済学研究科准教授)
自民党総裁選の各候補が、それぞれの政策を掲げて戦いを繰り広げる中、この日は各候補の経済・財政政策を検証する。
コロナ禍によって傷んだ経済を立て直し、ウィズコロナやポストコロナに向けて必要な経済政策とは何なのか。一方、借金が膨らみ続ける日本がとるべき財政政策とは何なのか。
自民党総裁選 経済政策成長戦略か 分配強化か?
菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選が9月17日に告示された。
河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏が立候補。29日に投開票し、新総裁を選出します。新総裁は10月4日召集の臨時国会で、新首相に選ばれる。
●検証 総裁選候補の経済政策・日本が目指すべき経済とは
コロナ禍では低所得者層や子育て世代の生活が大きな打撃を受けるなど、所得格差の拡大が浮き彫りになった。
総裁選候補者の経済財政政策(賃金)
・河野太郎 「労働分配率を高めた企業の法人税減税」
・岸田文雄 「中間層拡大に向けた『令和版所得倍増』(子育て世代の支援強化、公的価格の見直し)」
・高市早苗 「企業の現金や預金に対して課税し、給与を上げた場合は免除」
・野田聖子 「同一労働同一賃金を実現し、全体の賃金を引き上げ」
デービッド・アトキンソン、「コロナの後でも中期的な経済成長を見た場合には、賃金が上がらないと良くならないことは事実。それをベースに考えると、河野さんの政策は伸びなくても今の生産性の中で労働分配率を上げていこうという話で現実性がある。問題は一定まで上がっていくと壁にぶつかる。岸田さんの令和版所得倍増は中期的なことを言っていると思う。高市さんの政策は賃金の引き上げでプラスにはなるが限界が来る。野田さんの同一労働同一賃金は女性の男性に対する比率が低いから高めるということ。世界的に見ると高めたからといって男性が下がると確認されていない。一緒になった時に、そのあと全体が上がらないと同じように限界が来る。全てにおいては賃金の上昇になることは正しいことだと思うが、岸田さん以外はどれもそのうち限界が来るからそのあとをどうするか追及する必要がある」
井手英策、「岸田さんのが一番現実的だ。中間層の賃金が上がらないと経済が回らない。河野さんの労働分配率を高めるといっても企業の利益のほとんどは人件費だ。税金の占める割合は2~3%に過ぎない。税金を安くすることで経済を回すといっても限界がある」
●検証 総裁選候補の経済政策・広がる所得格差と企業の姿勢
斎藤幸平、「総裁選という場でアベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3政策を柱とし、これを「3本の矢」と称した)が1つの終わりを迎えて、これからポストコロナで日本はどういう社会を作っていかないといけないのかというビジョンをぶつけないといけない場で一番話題になるのが賃金の分配率をどうするかという細々しい話をしているのは、自民党のビジョンが欠けているのではないか。コロナで多くの人が困窮してしまった中で再分配していかないといけないという声が出てきているということは、新自由主義という時代も1つの転換点として終わりを迎えるのではないか。気候変動で世界が危機を迎えているときに、経済成長率を追い求めるのではなくて、格差を縮めるような大きなビジョンを持たないといけない」
デービッド・アトキンソン、「自民党は現実主義。大きなビジョンはないと思う。今のサプライサイド・エコノミクス( ケインズ経済学などの有効需要の側面を重視する経済学に対し、供給の側面を重視する)の問題は企業を優遇すればするほど設備投資をやってもらって生産性が上がって賃金も上げるという話だったのに、結局設備投資も下がっていき配当や内部留保も増えて賃金が下がっていく」
●検証 総裁選候補の経済政策・立憲民主党「アベノミクスは失敗」
きのう、アベノミクスの検証報告を立憲民主党が発表。
立憲民主党・枝野幸男代表は会見で「アベノミクスはお金持ちをさらに大金持ちにした。強いものをさらに強くした。しかし、トリクルダウン(富裕者がさらに富裕になると、経済活動が活発化することで低所得の貧困者にも富が浸透し、利益が再分配される)が普通の暮らしをしている人、厳しい生活をしている人たちのところに滴り落ちるというようなことは全くおきず、格差や貧困問題の改善にはつながっていなかった。行き過ぎた株主資本主義が労働分配率の低下や設備投資の減少につながっており、結果として企業の内部留保を膨らませて戦後最高の475兆円となっているが、企業の成長につながるようなところに回っていないことの裏返しとなっている。結局、潜在成長力を延ばしていないと。むしろ結果的に最終的にはマイナスにしているということは明らかに失敗だ」と語った。
●検証 総裁選候補の経済政策・アベノミクスがもたらしたもの
立憲民主党・枝野代表は「アベノミクスが格差を広げ失敗だった」と批判した。
デービッド・アトキンソン、「トリクルダウンがなかったというのは正しい。厳しい生活をしている人たちのところに落ちてこず、格差、貧困問題改善につながっていなかったということは五分五分。最低賃金を継続的に毎年3%引き上げてきた。商工会議所の猛烈な反対があったにもかかわらず実現したということは貧困、格差の問題を気にしているというのは事実ではない。行き過ぎた株主資本主義とあったが、世の中は大企業しか考えていないが、99.7%の日本企業はオーナー企業であって株主資本主義は何の関係もない。70%の日本人労働者はそういう会社で働いているので、株主資本主義だから労働分配率が下がったということは事実無根」
●検証 総裁選候補の経済政策・財政出動のあり方と課題
野田聖子は17日の自民党総裁選所見発表演説会で「全ての働く人に現金の一律給付を行う」と語った。
デービッド・アトキンソン、「現金の一律給付だとその年にある程度の影響は出ると思うが、持続性はない。生産性の高い仕事を継続的に提供することによってずっとそこで良くなっていく」
『国の債務と経済成長』グラフ(国及び地方の長期債務、名目GDP)。
井手英策、「皆に配るということがばらまきや金持ちにも配るのかと言われていたのが、皆に配るのが当たり前に語られる時代になった。ただ未だにお金とサービスの区別がついていない。金は皆に配らないとイケナイがサービスは要らない人は使わない。要る人しか使わないからサービスは安い。この安いのを集中的にやっていくのを考えるべき」
【提言】 「自民党新総裁に期待する経済政策」
デービッド・アトキンソン 「賃上げ目標を基軸」
GDP成長はもはや期待できない。これからは賃上げ目標を基軸にして決めるべきだ。
井手英策 「分配革命」
配り方を変えていく。お金だけではなくサービスも含めてすべての人にきちんと配っていく。
斎藤幸平 「脱成長」
GDP成長はもはや終わりを告げた。ポストコロナは脱成長に向けた1つのチャンスだ。
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