じじぃの「科学・地球_166_サイトカインとは何か・炎症を起こす役者たち」

白血球は細菌を追う

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uARZ9l0jSMU

白血球 (doctor-naito.comより)

免疫細胞とは

内藤メディカルクリニック
●白血球
細胞成分、残りの3%が白血球と呼ばれる赤血球や血小板以外の細胞群となります。
この白血球が免疫細胞と呼ばれる細胞になります。
白血球には単球、好中球、好酸球、好塩基球、T細胞、B細胞、NK細胞があります。好中球、好酸球、好塩基球の3つは顆粒(かりゅう)球と呼ばれ、白血球の60%を占めます。残りの30%がリンパ球と呼ばれるT細胞、B細胞、NK細胞の集まりで、10%が単球です。顆粒球は細菌やウイルスに対して直接攻撃を仕掛けます。顆粒球は自分の細胞内に細菌などを取り込んで、たんぱく質を破壊する酵素で細菌を破壊し消化します。
https://www.doctor-naito.com/immunity/immune_cells.html

免疫と「病」の科学 万病のもと

宮坂昌之、定岡恵(著)
第1章 慢性炎症は万病のもと
第2章 炎症を起こす役者たち
第3章 慢性炎症はなぜ起こる?
第4章 慢性炎症が引き起こすさまざまな病気
第5章 最新免疫研究が教える効果的な治療法
第6章 慢性炎症は予防できるのか?

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『免疫と「病」の科学 万病のもと 「慢性炎症」とは何か』

宮坂昌之、定岡恵/著 ブルーバックス 2018年発行

第1章 慢性炎症は万病のもと より

慢性炎症はなぜ悪い?

炎症が続くと、何が困るのしょう? ひとつは、炎症の悪影響が局所にとどまらずに全身に広がっていくことです。これが「慢性炎症が万病のもと」となることにおおいに関係します。もうひとつは、炎症を起こしている組織の性状や形態が次第に変わり、ついにはその組織の機能が低下してくることです。

まず、炎症が局所で起こるのに、その影響が次第に全身に及ぶというのはどういうことでしょう? それは、炎症という刺激により炎症性サイトカインと総称される何種類ものタンパク質が炎症組織で作られ、全身に広がっていき、離れた細胞にもその影響が伝わるからです。

第2章 炎症を起こす役者たち より

第1章で、炎症細胞というのは白血球であると述べましたが、じつは白血球には多くの種類があり、細胞ごとに異なる機能があります。急性炎症では主に好中球が、そして慢性炎症ではリンパ球、マイクロファージが炎症巣に現れ、炎症の筋書き形成に重要な役割を果たします。しかし、もし白血球だけが炎症に重要なのであれば、どの組織の炎症でも大なり小なり同じような筋書きになってもいいはずです。でも実際はそうではありません。ということは、炎症には白血球だけが関わっているのではなく、組織にもともと存在する細胞や環境も重要な役割を果たしているのです。どうも話がかなり複雑のようですね。
そこで、ここでは炎症を起こす役者たちについて、白血球、非白血球系の細胞に分けて、順番に説明していきましょう。役者の種類が多いのでちょっと面倒ですが、役者の種類を理解すると複雑な炎症の筋書きがわかりやすくなってきます。少し我慢してお付き合いください。

免疫をつかさどるメインプレイヤー「白血球」

①好中球
細菌がからだに入り込んできたときにまっさきに血管から漏れ出して現場にかけつける「火消し役」です。
②好塩基球、マスト細胞、好酸球
いずれも細胞内にたくさんの顆粒を持つ顆粒球の一種です。
好塩基球はこれまでその役割がはっきりしなかったのですが、最近、ある種のアレルギー反応(特に喘息)において大事な役割をすることがわかってきました。アレルゲンによって活性化され、インターロイキン4(IL-4)という特殊なサイトカインを分泌し、あとで述べる自然リンパ球という細胞を刺激してさまざまな炎症性サイトカインを分泌させるのです。
③単球、マクロファージ
この2つは同じ由来の細胞です。単球は血液中の細胞で、血液から漏れて組織に出るとマクロファージになります。核がひとつに見えるので、あとで出てくるリンパ球とともに単核球ともよばれます。マクロファージは特にものを食べる能力が高く、細菌やもっと大きな粒子や結晶、さらには死んだ細胞も食べることができます。
④樹状細胞
細胞の表面が木の枝のようにまわりに突き出ているので、この名前がつきました。この細胞も好中球、単球、マクロファージと同様にものを食べることでできるので、一種の食細胞です。
⑤NK(ナチュラルキラー)細胞
NKとはナチュラルキラーの頭文字のNとKをとったものです。つまりナチュラルに(何もしなくても)相手を殺すことができる細胞という意味です。ただし、自分自身や自分の同僚は殺しません。自分と同じ目印(MHCとよばれる一群の細胞表面にあるタンパク質で、これについてはあとで説明します)を持つ細胞と接触すると、「殺してはいけない」というネガティブな情報が細胞内に入り、殺せなくなるのです。殺せるのは、その目印を失った細胞だけで、がん細胞がその例です(正確に言うと、すべてのがん細胞ではなく、MHCを失ったがん細胞です。がん細胞はしばしばMHCの発現が低くなったり失われたりします)。そのような細胞に出会うと、活性化シグナルが細胞内に入り、自分の細胞内にある顆粒の中身を放出して相手の細胞を殺します。
じつは、生体の中では毎日何千個というがん細胞ができていますが、これをもぐら叩きのように見つけては殺すという作用をしている細胞のひとつがNK細胞と考えられています。
⑥リンパ球
リンパ球は、大きく分けるとTリンパ球とBリンパ球があり、Tリンパ球はさらにCD4タイプのものとCD8タイプのものに分けられます(CD4、CD8というのは細胞表面に存在する特定のタンパク質の名前で、CD4あるいはCD8を細胞表面に持つのがそれぞれCD4 Tリンパ球、CD8 Tリンパ球です)。CD4 Tリンパ球の大部分は、他のリンパ球を助ける役目を持っているので、ヘルパーTリンパ球(あるいはヘルパーT細胞)ともよばれます。CD8 Tリンパ球は、ウイルス感染時にはヘルパーTリンパ球の助けを受けてキラーTリンパ球に分化し、ウイルス感染細胞を殺すようになります。一方、Bリンパ球は刺激を受けると、プラズマ細胞に分化して抗体を作るようになります。
⑦自然リンパ球
前のセクションで長々と述べてきたリンパ球は、抗原レセプターを持ち抗原特異的に反応する獲得免疫系の大事な構成成分です。一方、最近、リンパ球とよく似た外見を持ちながら抗原レセプターを持たずに自然免疫系の一員として重要な役割を果たす一群の細胞が知られるようになってきました。これが自然リンパ球です。
タイプ1、タイプ2、タイプ3という3種類のものが知られ、いずれも細胞間の連絡役として働くサイトカインを多量に作り、タイプごとに違うサイトカインを分泌します。これらの細胞はいずれも自然免疫系と獲得免疫系の両方で重要な役割をするようです。正常では異物の排除や傷ついた組織の修復に重要な役割を果たしますが、異常に活性化されすぎると、自然免疫系、獲得免疫系の両方を刺激して、喘息やアトピー性皮膚炎などの病状を悪化させ、炎症を慢性化させる働きがあることがわかってきました。
つまり、自然リンパ球は、状況次第ではからだに良い役割も悪い役割もすることになります。
NKT細胞
NK細胞とTリンパ球の両方の特徴を持つ細胞で、風変わりなT細胞レセプターを細胞表面に発現しています。

組織の環境を構成する因子(生体に棲み着く細菌ほか)

もうひとつ最近わかってきたことは、組織の環境を構成する因子の重要性です。その例として、組織に棲み着いている細菌があります。われわれの腸の内側には大腸菌を始めとする多種類の細菌が棲み着いています。皮膚の表面にも多くの細菌が棲み着いています。このような細菌のことを常在細菌叢(さいきんそう)とよびますが、最近、これが組織の反応性を決めるのにとても大事であることがわかってきました。