じじぃの「科学・地球_169_サイトカインとは何か・がん」

がん リンパ節転移の仕組み

大腸がん(直腸がん・結腸がん)の解説と症状

おなかの健康ドットコム
●リンパ節転移
リンパ節転移は、がん細胞が発生した部位からリンパの流れにのってリンパ節にたどりつき、そこで増殖することをいいます。
次々とリンパ節に移動し、増殖することを繰り返していくと考えられています。そのため、がんの病巣(びょうそう)を切除する際には広範にできるかぎりのリンパ節を切除することが、再発を防ぐために非常に重要です。
https://www.onaka-kenko.com/various-illnesses/large-intestine/large-intestine-cancer/01.html

免疫と「病」の科学 万病のもと

宮坂昌之、定岡恵(著)
第1章 慢性炎症は万病のもと
第2章 炎症を起こす役者たち
第3章 慢性炎症はなぜ起こる?
第4章 慢性炎症が引き起こすさまざまな病気
第5章 最新免疫研究が教える効果的な治療法
第6章 慢性炎症は予防できるのか?

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『免疫と「病」の科学 万病のもと 「慢性炎症」とは何か』

宮坂昌之、定岡恵/著 ブルーバックス 2018年発行

第1章 慢性炎症は万病のもと より

慢性炎症はなぜ悪い?

炎症が続くと、何が困るのしょう? ひとつは、炎症の悪影響が局所にとどまらずに全身に広がっていくことです。これが「慢性炎症が万病のもと」となることにおおいに関係します。もうひとつは、炎症を起こしている組織の性状や形態が次第に変わり、ついにはその組織の機能が低下してくることです。

まず、炎症が局所で起こるのに、その影響が次第に全身に及ぶというのはどういうことでしょう? それは、炎症という刺激により炎症性サイトカインと総称される何種類ものタンパク質が炎症組織で作られ、全身に広がっていき、離れた細胞にもその影響が伝わるからです。

第4章 慢性炎症が引き起こすさまざまな病気 より

がん

がんは先天的な変異(子孫に受け継がれる変異)によるものは少数で、多くは環境因子やそのために後天的に起こった体細胞変異によるものです。がんの発生に影響を与える環境因子として重要なのが、たとえばピロリ菌や肺炎ウイルスによる持続感染です。どちらの場合にも感染が長引く過程で慢性の炎症が見られ、そのあとにしばしばがんが発生してきます。しかし、この場合、発がんに関わるのは、炎症そのものよりも、主に病原体のようです。慢性炎症も二次的に発がんに関わっていると思われますが、その程度はよくわかっていません。

①ピロリ菌と発がん

ピロリ菌は1983年オーストラリア・ウェスタンオーストラリア大学の983年ロビン・ウォレン(Robin Warren)とバリー・マーシャル(Barry Marshall)両氏がはじめて胃粘膜で発見したらせん形の細菌です。

②肝炎ウイルスと発がん

肝炎ウイルスも病原体そのものが宿主細胞の増殖、破壊、修復機構に働いて感染細胞にがんを引き起こします。

③炎症とがんの発生、進展、転移

炎症ががんの発症を促してその進行を早めるであろうことは、じつはかなり昔から推測されていました。実際、炎症に伴って出現するがんはたくさん知られています。
炎症局所でがんが起こる理由は、ひとつには、炎症が続くことにより局所の細胞が傷つき、死滅し、再生しようとする過程で、炎症細胞から分泌されるサイトカインや活性酸素種などが局所の細胞に対して継続的に増殖刺激を与えるとともに、ゲノムの不安定状態をもたらし、細胞に遺伝子変異が起こりやすくなるためです。
さらに、私たちのゲノムには傷つくと修復するという機構が存在しますが、炎症が起こるとこの修復機構が抑制されるようで、ゲノム不安定性によって誘導された変異が炎症のために修復されにくくなり、これも炎症によりがん化が起こりやすくなる理由のひとつと考えられます。
これまでわれわれの体細胞のゲノムには300万種類もの変異が報告されていますが、決してすべての遺伝子変異ががん化につながるわけではありません。がんが起こりやすくなるのは、がん遺伝子(もともとは正常に存在する遺伝子で、細胞の分化や増殖に関わり、変異をするとがんを起こす遺伝子)やがん抑制遺伝子(がんの発芽を抑制する遺伝子)など重要なものに変異が起こった場合です。このような遺伝子をドライバー遺伝子、そこに起こる変異でがんの発生に直接関わるものをドライバー変異といいます。
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炎症はさらにがん細胞の転移も促進します。がんで患者が亡くなるいちばんの理由は転移なので、これも大変なことです。
炎症が転移を促進する機構には主に、次に挙げる3つのものがあります。ひとつは、炎症やがん化の際に作られるTGF-βというサイトカインが互いに密に連結する非運動性の上皮細胞に働いて、運動性を持つ細胞に機能転換させることです(これによりがん細胞の運動性が高まり、転移がおこりやすくなります)。次に、炎症刺激によってマクロファージががん組織の近傍に寄ってきて基質分解酵素を作るために、がん細胞のまわりの細胞外基質が分解されて、がん細胞が働きやすくなり、外へ移動しやすくなります。さらに、もうひとつは、炎症によって作られる様々の生理活性物質が局所の血管に働いて、血管やリンパ管の壁が緩くなり、同時にがん細胞が取りつきやすくなるために、がん細胞が血管やリンパ管の中に入り込みやすくなることです(画像参照)。
つまり、炎症の過程で作られるさまざまな生理活性物質が、がん細胞、周囲の細胞や血管、リンパ管に働いて、がん細胞の運動性や湿潤性を上昇させ、がん細部が外に飛び出ていって、遠隔臓器への転移が起こりやすくなるのです。そうなると、不要な炎症を止めることが転移予防のためには大事であり、炎症予防はがんの転移予防につながる可能性があります。
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炎症とがんについてもうひとつ触れましょう。これまで炎症が起こるとがんになりやすくなることを説明してきましたが、確かに胃や腸管、肝臓などの消化管系組織や肺のような呼吸器系組織ではこれがあてはまるようです。一方、関節リウマチの患者では慢性的に関節に炎症があっても関節にがんができることはまずないので、必ずしも慢性炎症だけでがんができてくるのではないようです。おそらく、慢性的な炎症刺激に加えて、環境由来の因子も発がんに重要な役割をするのでしょう。そのような因子は。食道や気道から入ってくるので、消化管や呼吸器では濃度が高くなりますが、関節などではそれほど高くならないはずです。