じじぃの「葬儀屋・死の引受人・コールドリーディング!刑事コロンボ」

ホット&コールドリーディング

じつはこれはコールドリーディングっていうテクニックなんですけど。
このテクニック、得意としているのは占い師だけではないんですね。え、誰かって。
そうですね、有名どころではシャーロック・ホームズ刑事コロンボ。日本なら古畑任三郎とかですか。
http://www2.ttcn.ne.jp/~good.live/uranai011.htm

『新・刑事コロンボ〈死の引受人〉』

W. リンク, R. レビンソン/著、大倉崇裕/訳 二見文庫 2000年発行

第4章 灰とダイヤモンド より

午後9時、ダン・ライリーの葬儀を終えたプリンスは社のオフィスで一人くつろいでいた。
紅茶を濃いめにいれ、ゆっくりとその香りを楽しむ。秘書のアンジェラや他の社員も帰宅し、残っているのはプリンスだけである。
葬儀を無事に終えたあとのプリンスにとって、このひとときが唯一の憩いと言えた。
その穏やかな時間が電話のベルによってぶち壊された。
誰だろう、こんな時間に? プリンスは眉をひそめた。葬儀場の買収契約に関することで弁護士が連絡をくれと言っていたが。無視しようかと思ったが、すぐに思い直して受話器を取った。
「はい、エリック・プリンスですが」
「ああ、プリンスさん? ちょっといいですか」
――コロンボ

なんてしつこいやつだ。プリンスは言いようのない怒りをおぼえた。

    ・
「警部、私にはきみの言わんとしていることが、さっぱりわからん!」
「でしょうな……。プリンスさん。もしあなたがおっしゃるように、チャック・ヒューストン氏を水曜日に火葬し、そのあとすぐ夫人が灰を撒いたとすれば、ヒューストン氏の遺灰はハリウッドの丘に消えていたわけですね?」
「ああ、当然だ。すべてとどこおりなく済みました」
「でも、もし遺体が「すり替えられていたとしたら?」
「なにを言い出すんだ、ばかばかしい」
「まあ、ちょっと見てください」
コロンボは手にした骨壺を上下に振りはじめた。壺の中で灰がさらさらと音をたてる。
「やめたまえ! 死者に対してなんてことを……」
そのとき、コツンと何か固い物がぶつかる音がした。コロンボの手の動きにあわせ、その音が不気味に鳴っている。
コロンボが真顔でさらに壺を激しく振る。カンカンと耳障りな金属音が鳴り響く。
    ・
「彼女は、葬儀の直前にパープル・ハート勲章を遺体の襟元にそっと入れておいたんですよ。プリンスさん、あんたに内緒でね」
そこでコロンボは手にしたピンセットを持ち上げると、
パープル・ハート勲章勲章には、ダイヤが埋め込まれていましてね。ご存知のように、ダイヤってのは高温でも焼け残る」
コロンボは神妙な顔つきで、ピンセットを壺の中に突っ込んだ。プリンスはただ呆然とその手元を見つめるしかなかった。
やがて、探っていたコロンボの手の動きが止まり、ピンセットがゆっくりと引き出された。「ほら……ありましたよ」
ピンセットの先には、キラキラと輝くダイヤがあった。
「ね。やっぱりダイヤは何ともない。これ、チャック・ヒューストン氏のパープル・ハート勲章のダイヤです。鑑識で調べれば、明白になるでしょう」
プリンスは抗すべき言葉を必死に探した。
コロンボはそんなプリンスを上目使いに見つめ、
「どうしてカウフマンさんの遺灰のなかに、チャック・ヒューストン氏の遺品が混じってるんでしょう」
「それは……」

訳者あとがき より

30年にわたって続く長寿シリーズ「刑事コロンボ」。その魅力は尽きることがありません。コロンボ刑事のキャラクター、練りに練られたプロット、そして魅力的な犯人像。
70を越える作品のなかで、コロンボ刑事はさまざまな職業の犯人たちと対決してきました。精神科医、ミステリー作家、ワイン鑑定士、カントリー・ウエスタンの歌手、退役軍人、美術評論家、指揮者……。
今回、コロンボが挑む犯人の職業はなんと葬儀屋です。彼は自分を脅迫する芸能リポーターを殺害。その遺体を火葬に附し、灰にしてしまいます。この究極ともいうべき死体処理技術を持った犯人に、我らコロンボ警部は、挑戦します。本作品は新シリーズのなかでも傑作の1つにあげられるでしょう。

                  • -

どうでもいい、じじぃの日記。
新型コロナウイルスが世界中に拡散し、いまだ死者が増加している。
5月10日現在、新型コロナウイルスの感染者は世界で400万人を超え、死者は28万人に上っている。
ニューヨークのエルムハースト病院の近くにある葬儀場で現在保管されているのは、火葬待ちの25遺体だ。
通常なら一時保管は週あたり平均7、8体だが、今では1日20体以上を超えるという。
遺体は、家族や友人が近づけない場所で静かに土葬や火葬を待っている。
こんな状態では、「刑事コロンボ」の出番がありません。
刑事コロンボ」のような観察や会話を通して相手のことを言い当てる話術を「コールド・リーディング」と言う。
それに対して、事前リサーチをもとに相手の心を言い当てる話術を「ホット・リーディング」と言う。