じじぃの「科学・芸術_722_世界の文書・ロゼッタ・ストーンの解読」

ロゼッタ・ストーン

ロゼッタ・ストーン解読

『図説 世界を変えた100の文書(ドキュメント):易経からウィキリークスまで』 スコット・クリスチャンソン/著、松田和也/訳 創元社 2018年発行
ロゼッタ・ストーンの解読 (1822年) より
有名なロゼッタ・ストーンに彫られた謎の神聖文字を、何かに取り憑かれたように10年以上も研究した末、若きフランス人はその国を代表する学術機関の長に、驚くべき書簡を送りつづけた。その暗号を解読したと。
10歳の時、ジャン=フランソワ・シャンポリオン(1790 - 1832)はナポレオンのエジプト遠征の話に夢中になった。ピラミッドに、ヨーロッパ人が誰ひとりとして解読に成功していない奇妙な古代の神聖文字、奇妙な絵文字に飾られた古物の展示を見に行った彼は、いつの日か自分こそがこの謎を解き明かし、暗号を解読するのだと心に誓った。
1910年代、シャンポリオンイングランドの博識家トーマス・ヤングの厳格な経験主義の作業に肉薄していた。ヤングはロゼッタ・ストーンの研究に基づくエジプトの神聖文字に関する自説を発表していた。ファラオの時代に遡るこの古代の碑文は、1799年にフランス兵によってナイル・デルタで発見されたものであった。だが、見たところ3つの言語で書かれているらしいこの長大な碑文を解読しようとする試みは、ヤングを初め、誰にも成し遂げられていなかった。シャンポリオンはその暗号の解読を決意した。
1822年9月14日、パリにいたシャンポリオンは、神聖文字が表音文字であることを示す死活的な突破を成し遂げた。彼は「やったぞ!」と叫ぶや、その場で失神した。
彼は直ちにフランスの「碑文・文芸アカデミ」の総裁に、自分の意見を報告する書簡を送った。9月27日、シャンポリオンはアカデミの満員の部屋で、8頁の文書を読み上げた。「私は確信しています」と彼は言う――
ギリシャやローマの固有名詞も音を示すのに使われたのと同じ神聖文字/表音文字記号が、ギリシャ人のエジプト到達よりもはるか以前に彫られた神聖文字のテキストにも採り入れられているのです。そしてそれらはその遠い昔の時代に、ギリシャ語やローマ語の下に彫られたカルトーシュの中のそれと、既に同じ音もしくは発音を表していたのです。
その直後、シャンポリオンは44頁の小冊子の中で自分の発見を公表した。そこには4枚の図版が含まれていた。彼の業績は、紀元前196年に遡るロゼッタ・ストーンが国王プトレマイオス5世の名の下に公示された法令を3つの言語で記したものであることを示す契機となった。一番下のテキストは古代ギリシャ語、中間は民衆文字(エジプト語)、一番上は古代エジプトの神聖文字で書かれていたのである。この石には基本的に同じテキストが3種の言語で書かれており、その内のひとつ(古代ギリシャ語)は読むことができたので、これが残り2つの失われた言語を解読する鍵となった。
この発見により、シャンポリオンは「神聖文字解読の父」として知られるようになった。