じじぃの「科学・芸術_905_未来を読む・毎年3万人の自殺者」

Which Countries Have The Highest Suicide Rates?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=84r_HVs2vA8

「世界で40秒に1人が自殺」 年間80万人近く WHO報告

2019年9月10日 AFPBB News
AFP】世界保健機関(WHO)は9日、世界の自殺者数は年間80万人近くに上り、戦争や殺人、乳がんによる死者数を上回っていると報告し、悲劇を防ぐための行動を促した。
WHOのテドロス・アドハノン(Tedros Adhanom)事務局長は、「進歩はあるものの、依然として40秒に1人が自殺している」と述べ、「すべての死が、家族、友人、同僚らにとっての悲劇だ」と強調した。
統計の最新年に当たる2016年の自殺率は、世界全体で10万人当たり10.5人だったが、国によってばらつきが大きく、10万人当たり5人にとどまる国々がある一方、最も高いガイアナでは同30人を超えた。
ガイアナに次いで自殺率が高かったのはロシアで、10万人当たり26.5人。その他、リトアニアレソトウガンダスリランカ、韓国、インド、日本で高く、米国でも同13.7人だった。
https://www.afpbb.com/articles/-/3243772

本の紹介 2019-21 サピエンス全史下 ユヴァル・ノア・ハラリ

TNコーポレーション公式サイト
●第4部 科学革命
ここでは一番多くのボリュームを割いて書かれています。知は力であることを説明し、いよいよその成果である科学の進歩と帝国の結びつきへと繋がってきます。
資本主義と科学革命から人々の生活は変わりました。さてそれは人々にとって幸せになったと言えるのでしょうか。後半では幸福論に近い展開がなされています。生産性は上がり、子供の死亡率が大幅に減少したのに自殺する人が増えた現代。その答えを幸福度を図る科学的な手法で説明しています。
しかし科学的または物質的な絶対幸福はなく、幸福は期待によって決まる。言い換えれば自分で決めることができる。「汝自身を知れ」のようです。ここは私の得意分野。自分は運が良く幸せだと思える私はどの時代でもそこそこいい人生を送れるのではと思っています。
https://www.tn-corporation.com/blog/4906

『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』

大野和基/編 PHP新書 2018年発行

ユヴァル・ノア・ハラリ(イスラエル歴史学者

ストーリーを守るために、戦争が生まれる より

――多くの人が人権のために血を流し、国家に殺され、お金や法人(会社)に起因する悩みによって自殺します。いわば虚構によって現実の生命が消されているわけですが、これについてどう思われますか。

ハラリ

先にも述べましたが、われわれはこの世にリアルに起きていることと、想像の中で創り出したストーリーを区別する能力を失いつつあります。
多くの人にとって、ストーリーの重要性が増しているのです。神に関するストーリーがあり、国家に関するストーリーがあり、人権に関するストーリーがあり……そういうストーリーに心惹(ひ)かれてしまう。そういうストーリーは、自分のアイデンティティや人生の意味につながっています。そのストーリーに反するものがあれば、それが何であってもストーリーを守るために行動する。かなりの苦痛を生じさせてまでも、戦争に行く人たちがいるのは、そういうことです。これは大問題だと思います。
今、コンピュータや携帯電話など新しい技術が進歩したことで、現実と虚構の区別をつけるのがさらに難しくなっています。というのも、人間の仕事や生活がサイバースペース上で行われることが増えているからです。
スマートフォンやパソコンで、メールを頻繁にチェックし、ほかの場所や過去に起きたことを夢中で検索すればするほど、匂いをかいだり、味を確かめたり、実際に起きていることを聞いたり見たりする能力は失われます。自分の体への接触、今ここで起きていることの目前のリアリティへの接触を失いつつあります。
経済の面からみると、これはいいことかもしれません。上司は絶えず、あなたにメールをチェックしてほしいでしょうし、スマートフォンでいつでも電話にも出てほしいからです。でも「心の平和」のためには問題があります。自分自身の身体や五感が、目前の現実との接触を失えば、自分で人生をコントロールできなくなり、幸せを失うからです。

人類はパワーを幸福に転換できていない より

――日本では毎年少なくとも3万人の自殺者が出ており、実際は10万人とも言われています。日本は他の国よりも安全な社会であり、本来、日本人はもっと幸せであってもいいように思います。『サピエンス全史』ではまさに「人間は豊かになった、しかし幸せとは限らない」と書かれています。その理由を詳しくお聞かせください。

ハラリ

こうした状況は日本のみならず、韓国など東アジアの国も同じですし、アメリカなどでも見られます。他の先進国でも、自殺者の増加は社会問題になっています。たとえばイスラエルといえば、戦争やテロリズムのニュースを絶えず耳にしますが、公式統計では、戦争やテロリズムで死んだ人と犯罪で亡くなった人の数を合わせた数値よりも、自殺者の人数が多いのです。その数は毎年増えています。
また、おっしゃるように、数値に表れない自殺者の数は、それよりはるかに多いかもしれません。自殺の場合でも、感情的、あるいは法的な理由から、それが自殺であったとは報告しないで、事故やほかの原因による死であることもあるからです。保険金をもらいたい、という事情もあるでしょう。自殺の場合、保険が出ない場合もありますから。そうした可能性を考慮してもなお、公式の統計では、平均的なイスラエル人は、テロリストや兵隊や犯罪によって殺される確率よりも自殺する確率のほうが高いということです。ですから、日本特有の問題ではありません。こうしたことは現代世界のあちこちで起きています。
以前よりも裕福になれば、以前よりも生活環境がよくなれば、以前よりも食料が多ければ、過去に経験した悩みはなくなるはずです。生活への満足度も上がることでしょう。
でも実際はそうではありません。自殺だけではなく、鬱や不安障害などさまざまな精神疾患の割合も実際には上昇しています。
1つの理由は、人間の幸福が、「どれだけ食料があるか」「どれだけお金をもっているか」といった客観的な指標を根拠にしていないことです。
幸福は、「期待」によって左右されます。何かを期待し、その期待が満たされると、幸福になります。一方、期待が満たされないと、不幸を感じます。
しかし、生活状況がよくなれば、期待も上がっていきます。心理学の分野では、人間は達成感や楽しいことを経験しているときに、「満足」ではなく、「もっと欲しい」と感じることがわかっています。おいしいものを食べると、もっと欲しくなるのが、普通の反応です。
「もっと欲しい」という反応を示している限り、満足することはありません。個人のレベルでもそうですが、私は集団のレベルでもそうなっていると思います。
人類は今、石器時代の何千倍ものパワーを手にいれました。しかし何千倍も幸福になっているとは思えません。われわれはパワーを獲得することには長(た)けていますが、パワーを幸福に転換する方法はわかっていません。『サピエンス全史』の中で私が指摘したかったのは、まさにこの問題なのです。