じじぃの「ゲノム医療の新時代・パンドラの箱はついに開けられた!遺伝子欠陥の少年」

福島香織×saya】中国ゲノム編集ベビー誕生の背景 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=vC5HcETn3RM

暴走する中国ゲノム研究 2018年12月6日 ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
<やはり中国か――世界中の研究者が頭を抱えた危険な「遺伝子ベビー」誕生の背景を探る>
数年前、科学誌サイエンスの中国通信員をしていた当時、見知らぬ若手研究者からメールが送られてきた。その頃私の元には自分の研究をメディアで取り上げてほしいというメールがよく来ていたが、そのメールは必死さで群を抜いていた。
●スタンドプレーの温床
癌の治療から作物の品種改良までさまざまな分野に革命をもたらしてきたクリスパー。
いずれはヒトの生殖にもこの技術が使われる可能性があると、専門家はみていた。ただ、デザイナーベビーの誕生につながる危険性もあり、ヒトの受精卵を使った研究には一定の歯止めをかけるべきだというのが研究者の一致した見解だ。米国科学アカデミーは、研究の対象を既存の技術では対応不能な医療上の必要性が明らかに認められる場合に限定するよう推奨している。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/post-11379.php
『10億分の1を乗りこえた少年と科学者たち――世界初のパーソナルゲノム医療はこうして実現した』 マーク・ジョンソン、キャスリーン・ギャラガー/著、梶山あゆみ/訳 紀伊国屋書店 2018年発行
越えられない一線――2009年6月 より
ニックにとって今日という日は少しも特別ではなく、百何回目かの手術室行きにすぎない。中に入れば、何度やってもきりのない処置が待っている。これが始まったのは2年以上前のこと。母がニックのお知りに奇妙なおできのようなものが発端だった。以来、少年の腸には、食事をするたびに瘻孔(ろうこう)と呼ばれる小さな穴があく。静脈経由で栄養をとらざるを得ないのはそのためだ。穴はトンネルのように腹部の表面にまで通じ、そこから便が漏れだしてくる。これでは感染症の危険とつねに背中合わせだ。医師にはこの病気の正体がまるでわからず、新しい穴ができるのを止めることもできない。なんとかして感染症を防ぐのがやっとだ。
だからアミリンは毎日のように、こうしてニックと一緒に待つ。時間がくれば麻酔医が息子を眠らせ、担当の女性外科医マージョリー・アルカが傷口をきれいにするだろう。これまで何十回と処置してきた同じ傷口を。
未知の領域――2009年7月 より
ヴォルカー夫妻の許可がないかぎり、ニックの遺伝子を詠むことはできない。そこで、ふたりに決断が委ねられた。
一見すると、家族がどう決断を下すかは火を見るより明らかに思える。すでに医師たちはできるかぎりの手を尽くし、残るは骨髄移植のみだが、診断が確定しなければそこにたどり着けない。ニックのDNA配列を解析することが、この袋小路から抜け出す唯一の手段だと考えられる。答えが得られる保証はないものの、そこに賭ける以外に望みはない。夫妻はすでにそうした説明を医師から受けており、ノーというのは息子に死の宣告をするに等しい。
しかし見方を変えると、ニックのゲノムに科学のメスを入れることはけっして単純な問題でなく、軽はずみに手を出せるものではなかった。人間の青写真を覗きみることには、利益と危険がともに潜んでいる。そのことを科学者は最初から認識していた。ゲノムはパンドラの箱である。国家安全保障局が電話を盗聴し、コンピュータがハッキングされ、なりすまし犯罪が横行する現代にあって、ゲノムのなかにあるものは究極の個人情報だ。他人に知られたくはないし、自分自身ですら知りたいかどうかよくわからない。ゲノムに何かを見てしまったら、もう見なかったことにはできないのだ。自分の未来を、健康を、自分の生と死を垣間見ることになる。
ギリシャ神話によれば、パンドラは甕(かめ)を贈られ、けっして中を覗いてはいけないと釘を刺された。時代とともに「甕」は「箱」に変わったものの、それが象徴するものは同じである。パンドラの箱は抑えきれないほどの好奇心をそそった。だが、それをあけてしまったとき、思いもかけない恐ろしい結果がもたらされた。
現代にあって、それと似たような好奇心と恐怖をかきたてるのがゲノムである。その中身を私たちはどれだけ切実に知りたがっているのか。知ることに伴うリスクを受け入れる覚悟がどの程度あるのか。
そもそも、遺伝子の文字を読むかどうかは本人だけの問題ではない。自分の遺伝子は両親から受けついだものであり、兄弟や姉妹ともその多くの部分を共有している。つまりゲノムから何かがわかれば、その結果は周囲の人間にも波及していくわけだ。ニックの遺伝子を調べることは、両親やきょうだいや、ほかの血縁者の遺伝子に埋め込まれた秘密を暴くことでもある。

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どうでもいい、じじぃの日記。
『10億分の1を乗りこえた少年と科学者たち――世界初のパーソナルゲノム医療はこうして実現した』という長ったらしいタイトルの本は、ひどい腸の炎症疾患を患った少年の話だ。
クローン病も同じような腸の炎症性疾患で患者の多くが痔ろう(お尻に小さな穴があく)を経験している。
少年の体の遺伝子は徹底的にゲノム解析された。
クローン病は自己免疫疾患でIL-6などタンパク質が炎症に関わっているとされるが、この少年の場合はXIAP遺伝子というたった1つ遺伝子異常が重い腸の疾患を起こしていた。
少年は原因が特定され、骨髄移植により快方に向かっているとのこと。