じじぃの「モルヒネ・夢の神モルペウスに抱かれて!世界毒草百科図鑑」

Morphine: What You Need To Know 動画 YouTube
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ケシ

『世界毒草百科図鑑』 エリザベス・A・ダウンシー、ソニーラーション/著、船山信次、柴田譲治/訳 原書房 2018年発行
モルペウスに抱かれて アヘン より
ケシは古代から治療薬として利用され栽培もされてきた。古代アッシリアの多くの工芸品にははっきりケシの螬果(さくか)とわかる図柄が描かれ、古代エジプト墓所壁画にもケシの花が描かれている。古代エジプトの最初期の医学文書が掛れているエーベルス・パピルス(C.1552-1534BC)では、泣き止まない子どもにケシの抽出物を与えることが推奨されている。こうしたケシの用法は19世紀まで続き、「ローダナム」というアヘンチンキを処方箋なしで購入することができた。ケシの薬物依存性がよく知られるようになってからも、顕著な鎮痛効果があるため、この卓越した植物の有益な特性を利用する安全な方法を発見する試みが繰り返された。
モルヒネ1800年代はじめにアヘンから最初に単離されたアルカロイドで、夢の神モルペウスにちなんで命名された。モルヒネが大量生産されるようになり1850年代に注射器が発明されると、小手術の術後慢性痛の管理に、また一般的な麻酔薬の補助としてモルヒネが利用されるようになった。鎮静と麻酔の効果に加えモルヒネには強力な呼吸抑制作用がありかつてはコフ・エレキシール(咳止め薬)として用いられることもある。副作用として便秘になるが、この作用も逆手にとりモルヒネを陶土に混ぜて止瀉薬としても利用されてきた。
しかし、アヘンそのものと同じモルヒネにも習慣性があり乱用の恐れがあることがわかった。さらにこうした習慣性と誘発される多幸感、そして治療領域が小さいことから、モルヒネの使用は特に安全なわけではない。そこで常習性のない安全で効果のあるオピロイドの開発に多大な労力が傾けられ、その結果半合成誘導体のジアセチルモルヒネ(ジアモルフィン)が開発された。最初に合成されたのは1874年のことだったが、人気が出るようになったのは1898年に再合成された「ヘロイン」という商品名で市販されるようになってからである。残念ながらこの薬はモルヒネより格段に毒性が高く常習性も強かった。現在は多幸感を得るための違法レクリエーショナル・ドラッグとして蔓延している。
アヘンには習慣性のあるモルフィナン構造のもつモルヒネコデイン、さらに非習慣性のテバインなどいくつかのイソキノリンアルカロイドが含まれている。モルヒネコデインなどのオピエート(天然のオプオイド)は、脳に広く分布し脊髄や消化管にもみられる特定のオピオイド受容体を刺激して中枢神経(CNS)に作用する。これらの受容体は内在性神経伝達物質(体内で生産されるペプチド、いわゆるエンドルフィンのこと)にも、この受容体に結合する投与された植物アルカロイドのどちらにも反応する。コデインモルヒネより作用は弱く、偏頭痛などの激しい痛みを緩和する鎮痛剤として利用される。しかしコデインを連用した場合の問題も明らかになってきていて、コデインの作用に対する耐性が増し、また異常な痛覚感受性などの副作用があることがわかっている。

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どうでもいい、じじぃの日記。
アヘンは、未熟のケシの実を傷つけ、そこからしみ出す乳状の液体を集めて乾燥させた麻薬である。アヘンにはモルヒネを主成分とするアルカロイドが含まれ、アヘン中毒になると、極めて重い依存症に陥る危険性があることでも知られている。
現在、世界最大のアヘン生産国はアフガニスタンである。きっかけはイスラム主義組織のタリバンだった。当初麻薬撲滅をめざしていたタリバンだったが、2001年、アメリカ軍主導の多国籍軍アフガニスタンに侵攻して、タリバン政権が崩壊すると、タリバンは一転してアヘンを活動の資金源として活用する道をとった。現在、アフガニスタンのアヘン生産は世界の生産量の8割を占めているといわれる。
終末期鎮静にはモルヒネが使用されることが多い。特に末期がん患者へのモルヒネによる疼痛コントロールは標準的な治療とされている。