じじぃの「植物の生き残り作戦・ケシはモルヒネで陶酔しているのだろうか?ドラッグ大全」

Papaver somniferum, the opium poppy

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=rn1sRCZXvds

ケシの花

モルヒネを人類の宝として有効に使うために――がん疼痛緩和目的への応用

2015.05.01 SYNODOS
モルヒネという言葉で何を思い浮かべるでしょうか。
たぶん、麻薬とか犯罪、そして、麻薬について喧伝されている「ダメ! 絶対!」などの標語を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
確かにモルヒネは麻薬であり、密輸や濫用などの犯罪にもからむことが多い薬物ではあります。
https://synodos.jp/opinion/science/13936/

『危険ドラッグ大全』

阿部和穂/著 武蔵野大学出版会 2021年発行

天然は毒の宝庫 より

化粧品や食品を売る場合、医薬品のような有効性・安全性の確認が求められていないうえ、天然素材については原料となった植物名などを表示するだけでよい。具体的にどんな化合物が成分として含まれているかわからないし、極端にいえば何を売ってもいいのである。化学合成された添加物だと、十分な試験によって安全性が確認されたものしか使用が認められないのとは対照的だ。「天然」のほうが、得体が知れず、あやしいのだ。
第2章で紹介したように、危険ドラッグの元をたどると、モルヒネ、コカイン、メスカリン、カチノンTHC大麻成分)など、ほとんど天然成分だ。
ほかにも自然界には、フグのテトロドトキシンセアカゴケグモのα-ラトロキシン、トリカブトのアコニチンなどの毒がある。
地球上で最強といわれているのは、ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素で、体の筋肉を動かせなくなり息もできなくなってしまう。その半数致死量(半数の動物が死んでしまう量)はマウスで0.0000003mg/kgと報告されており、人工合成された毒ガス・サリンの半数致死量0.3mg/kgと比べると、実に100万倍強力である。人工的に作り出された毒は、自然界が生み出した毒には到底およばないのだ。
しかし、なぜ自然界にはこんなに毒やドラッグの元になる化合物が豊富に存在するのだろうか? もともと毒は、動物や植物が自分を守るために備えたものと考えられている。フグは泳ぐのが遅いが、毒をもったおかげで食べられずに済んだ。微生物の世界でも、細菌は抗生物質を作って出すことによって多種も繁殖を阻止し、自ら生き残ろうとしている。ただし、生物が自己防衛のために毒を作ろうと思ったわけではなく、たまたま使える毒を備えていた種類が生き残れたと考えた方がわかりやすい。
多くの植物はそれほど強い毒を持っていないが、食べると苦かったり、お腹を壊したりしやすい。植物は動けないから積極的に敵を攻撃することはできないが、動物や人間に対して「嫌い」「食べたくない」と思わせれば食べられずに済むという”静かな防護”が成立しているのかもしれない。
ジャガイモの芽や緑色の皮の部分には、ソラニンという毒素が含まれる。小学校の理科などの授業で育てたジャガイモを、家庭科の授業で食べるという実習が行われることがあるが、若いジャガイモを皮付きのまま食べた子供が食中毒になるという事故が、毎年のように発生している。
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ただ一つ疑問が残る。モルヒネ、コカイン、THCなどの薬効成分は植物自身に作用しないのだろうか? いつどこでどう役立つかわからない成分を、手間をかけて作り続けているとは思えない。きっと植物体内でも生理的な役割があるに違いない。ただ、ケシがモルヒネによって陶酔したり、コカノキがコカインによって覚醒したり、大麻草がTHCによって幻覚を見たりしているわけはないふだろう。毒や薬としての効果は、あくまで受け取り側によって決まっている。植物自身にとっては全く別の役割があるに違いない。
研究者が少ないために解明が進んでいないが、大麻草におけるTHC(植物体内ではTHCA)の新しい役割が最近発見されたので紹介したい。
植物が生長するためには、必要な器官を作るだけでなく不要な器官を取り除かなければならない。古い家を壊してから新しい家を建てるようなもので、細胞死は植物体の形成に必要な過程である。2007年九州大学薬学部の研究グループは、大麻草の葉に細胞死を引き起こす因子として内在性のTHCAが機能していることを発見した。
THCAは大麻草の体を支える植物ホルモンの一種なのかもしれない。本書のテーマとはそれてしまうが、今後の植物研究の進展にも期待したい。

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どうでもいい、じじぃの日記。
「ただ一つ疑問が残る。モルヒネ、コカイン、THCなどの薬効成分は植物自身に作用しないのだろうか? いつどこでどう役立つかわからない成分を、手間をかけて作り続けているとは思えない。きっと植物体内でも生理的な役割があるに違いない」
一般的に植物の毒は、自らの葉や茎を虫などから守るためと考えられている。
「植物が生長するためには、必要な器官を作るだけでなく不要な器官を取り除かなければならない。古い家を壊してから新しい家を建てるようなもので、細胞死は植物体の形成に必要な過程である」
植物が生長にするには、新しい器官を生かすために、古くなった器官を捨てなければならない。植物の毒は古くなった器官に対して死ぬように作用する。
まあ、こんなこともあるだろうなあ。
もうすぐ、モルヒネのお世話になります。