じじぃの「オピオイド受容体・モルヒネはなぜ効くのか?くすりをつくる研究者の仕事」

How to grow opium poppies 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Wa-647QtNBM
モルヒネの鎮痛作用部位bsd.neuroinf.jp HPより)

『くすりをつくる研究者の仕事』 京都大学大学院薬学研究科 化学同人 2017年発行
薬が効く仕組みを探求する――イオンチャネルが拓く新しい創薬 (一部抜粋しています)
薬理学を定義すると、化学物質(薬や毒)と生体(体)の相互作用を研究する学問です。これまでの薬理学は、すでに存在する薬や毒を対象にして、それらが働くメカニズムを明らかにしたり、あるいはメカニズムがわかった化学物質をツールとして使ったりして、体の動きや病気の仕組みを研究してきました。
1例として、京都大学薬学部の薬理学教室で古くから研究してきたモルヒネについて紹介しましょう。モルヒネはケシの実の乳液を固めたアヘンから精製できる化学物質で、人類は古くからアヘンを経験的に痛み止めや多幸感を得る目的で使ってきました。しかしアヘンは強力な麻薬で、アヘン摂取は精神的にも肉体的にも依存性を引き起こし、薬を止められない状態にまで人間を追い込みます。19世紀中ごろの中国(清)ではイギリスがインドからもち込んだ大量のアヘンが人々のあいだで蔓延し、その貿易赤字がもとになってアヘン戦争が勃発したのですから、人々に対する麻薬の依存症の強さが窺(うかが)えます。
さて、アヘンからモルヒネという有効成分がドイツで見つけられたのは19世紀はじめのことです。その後、化学合成によってつくられたモルヒネの類縁体の鎮痛活性や依存性を調べるなかで、さまざまなモルヒネ誘導体が合成されました。こういった研究が進められたのは、アメリカの南北戦争で多数の兵士がモルヒネ依存症に陥ったことから、より依存性の少ない鎮痛剤を探そうという機運が生まれたためといわれています。しかし皮肉なことに、脳への移行性がよいために最も強力な鎮痛活性と依存性をもつヘロインも、19世紀末に化学合成によってつくられ、これが蔓延することになるのです。
さて、モルヒネやヘロインが化学合成できるようになっても、それがなぜ痛みに効くのか、あるいは依存性があるのかはわかりません。その薬理の研究が進展したのは1960年代のことでした。きっかけはモルヒネに似ていながら、まったく鎮痛作用をもたない、それどころかモルヒネの作用を打ち消してしまうナロキソンという合成のアンタゴニスト(拮抗薬)が見つかったからです。薬理学では、アンタゴニストがしばしば強力な研究ツールになります。
1970年代になり、ナロキソンが脳神経の細胞膜に結合したモルヒネと置き換わるようにして強固に結合してモルヒネの作用と拮抗することや、モルヒネがナロキソンと置き換わることが見いだされました。脳内にモルヒネの受容体(アヘン、opiumにちなんでオピエート受容体と最初はよばれました)があるという概念が提唱されました。つまり、モルヒネやナロキソンを”鍵”にオピエート受容体を”鍵穴”にたとえると、モルヒネは鍵穴に挿さるだけでなく鍵を回すことができますが、ナロキソンは鍵穴には挿さるものの鍵が回らない、と理解することもできます。
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もともとオピオイド受容体をもっていない細胞にオピオイド受容体の遺伝子を強制的に導入することによって、薬が受容体を活性化した後に細胞内で起こる現象を調べることができます。このようにして、モルヒネオピオイド受容体を活性化した後、サイクリックAMPという細胞内の情報伝達物質を減らしたり、カルシウムという細胞内にカルシウムイオンを招き入れる通路を閉じて痛みの伝達を遮断したり、あるいはカリウムチャネルを活性化して、神経の興奮を抑えたりすることがわかりました。
ラットの脳や脊髄にごく微量のモルヒネを注射することによって、実際にどこへ注射したときに最も強い鎮痛作用が起こるかを調べることができます。また、動物の痛み反応で調べるだけでなく、どのような物質が神経から放出されてくるかをモニターすることも可能です。
これらの研究から、モルヒネのおもな作用点は脳幹にある中脳水道周囲灰白質や巨大細胞網様核といった特定の微小な神経核、あるいは脊髄後角などだとわかりました。それらの部位でもモルヒネは、神経終末にあるカルシウムチャネルを抑制する結果、痛みを伝える神経伝達物質が遊離し、さらに痛覚情報の伝達を抑制していることがわかってきました。

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どうでもいい、じじぃの日記。
暇なもので、病気に関する本をよく見ている。
医薬品のなかには、人体に薬または毒として作用しても、なぜ効くのかが分からずに使われているのがある。その代表がモルヒネだ。
モルヒネやヘロインなどのオピオイドは、鎮痛薬として、医療用にも使用される。
おそらく、脳幹や脊髄のある部位に作用するのだろうと言われている。
モルヒネに似た化学構造式を持つナロキソンというのがあるが、ナロキソンは全く鎮痛効果がないのだそうだ。
とか、本に書いていました。