じじぃの「コカvsペプシ・世界を席巻した飲み物!ケミストリー世界史」

『COLAWARS コカ・コーラvs.ペプシ』予告編【6/8 U-NEXT独占配信】

動画 YouTube
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『ケミストリー世界史 その時、化学が時代を変えた!』

大宮理/著 PHP文庫 2022年発行

第12章 資本主義から帝国主義へ より

重商主義、そして産業革命による工業社会の到来は、資本主義というシステムを発展させ、新しい市民階級=ブルジョワジー(資本家)と労働者を生み出しました。ブルジョワジーとはフランス語の「ブール」(町・都市)からきた言葉で、日本語なら「町人」のようなイメージです。シェルブールストラスブール、ドイツだとハンブルクなど、もとは同じ語源です。
ブルジョワジーによる議会が、政治の中枢になります。フランス革命の到来とともに、アメリカ合衆国に次いで、地球上に新しいステージとなる近代民主主義が生まれます。

1886年 「コカ・コーラ」の発売――世界を変えた20世紀を代表する飲み物

●世界を席巻した飲み物
18世紀の終わりごろから、発泡性の天然の鉱水(ミネラルウォーター)が健康にいいとされて、はやりはじめます。さらに、ソーダ(炭酸水素ナトリウム)とクエン酸を溶かして人工的な発砲飲料をつくる業者が現れて、ソーダ水と呼ばれるようになりました。
19世紀になると、発泡性のレモネードなどが炭酸飲料として普及してきました。さらに、この時代、アメリカではアルコールやカフェイン、モルヒネなどが含有された怪しい売薬がはびこるようになってきます。
この炭酸飲料のブームが融合しや結果、今日の世界的な飲み物、「コカ・コーラ」が誕生します。「コカ・コーラ」は世界を席巻した飲み物、20世紀を代表する飲み物といえるのではないでしょうか。
1886年ジョージア州アトランタの薬剤師ジョン・S・ペンバートンが西アフリカ産のコーラという木の実と、南アメリカ産のコカの葉のエキス、テキサス産の植物ダイアナ、そこに苦味を消す目的で砂糖を加え、これらを炭酸水に混ぜて強壮水、いまでいうエネジードリンクをつくりました。
スペイン支配下のペルーやボリビアでは、征服者たちが課す重労働に従事する人びとが、ペルーの非常に標高が高い地方の植物であるコカという木の葉を噛んで興奮剤として使用していました。コカの葉にはコカインがふくまれており、当時のペルー経済は、コカの葉の輸出で大いに潤いました。
1860年に、ドイツでコカの葉からコカインを分離精製する方法が発見されて、メジャーな興奮剤としての地位を固めていきました。イギリスの作家アーサー・コナン・ドイルの書いた「シャーロック・ホームズ」シリーズには、ホームズがコカインを興奮剤として愛用している記述があります。現代のコーラには、もちろんコカインはふくまれていません。
1894年には、ノースカロライナ州の薬剤師キャレブ・ブラッドハムがペプシのもとになる飲料を発売しています。発売当時、消化酵素ペプシンペプシンは胃液に含まれる消化酵素ギリシャ語で「ペプシス」は「消化」という意味)をふくんでいたので「ペプシコーラ」の名前になりました。

禁酒法で躍進した「コカ・コーラ
コカ・コーラ」が一大帝国を築くのは、アメリカで1920年禁酒法アルコール飲料の生産と販売を全面禁止した法律)が施行されてからです。酒類が禁止されると、「コカ・コーラ」の需要は一気に上ります。なお、アメリカでのアルコール製造業者は大きな痛手を受け、とくに発展しつつあったワイン産業は衰退しました。シカゴでは、有名なアル・カポネ率いるマフィアが密造酒をさばいて巨万の富を得ました。
第2次世界大戦のころになると、アメリカ軍にも納入されるようになり、さらに朝鮮戦争ベトナム戦争など、世界中の前線基地でコカ・コーラ社の社員が従軍して、原液から炭酸水を加えて瓶詰めされました。
コカ・コーラ」がアメリカ軍との一体化で発展するなか、「ペプシコーラ」は、アメリカのニクソン副大統領(当時)の根まわしでソヴィエト連邦ソ連。現在のロシア)のフルシチョフ書記長(当時の最高権力者)の試飲に成功し、独占契約を結んでいます。東西冷戦は、「コカ・コーラ」対「ペプシコーラ」にも広がったのです。
ちなみに、オリンピックは、1業種で1スポンサーが3大会12年間分を独占する契約制度ですが、コカ・コーラ社と、中国大手乳製品メーカー、蒙牛乳業が設立した合弁会社2032年まで更新した契約金は、一説には3000億円以上といわれています。