じじぃの「謎だらけのジョロウグモ・痴呆症の予防薬?一寸の虫にも十分の毒」

ジョロウグモ

グルタミン酸はやっぱり頭を良くする? 2008年5月21日 FOOCOM.NET
今月の連休中に女子栄養大学で開催された第62回日本栄養・食糧学会大会における「うま味の基礎研究から高齢者のQOL改善への利用」は大変興味深いシンポジウムであった。内容は、食品添加物のうち、いわゆる「化学調味料」と言われて、食の安全を考える一部の人たちから極端に毛嫌いされている「うま味調味料」に関する様々な角度からの話題提供であった。
グルタミン酸は脳内でγ-アミノ酪酸(GABA)に変化し神経伝達物質として重要な働きをしている。そのため、GABAが脳機能回復の医薬品として多量に使用されたことがあった。しかし、この物質は血液脳関門を通過せず、脳内に入らないことから、医薬品としてのGABAの有効性は否定されている。ところが、グルタミン酸は間違いなくGABAに変化して神経伝達物質として働くのであるからGABAの無効性は逆にグルタミン酸の重要性を意味している。
http://www.foocom.net/fs/takou_old/1009/
『一寸の虫にも十分の毒』 川合述史/著 講談社 1997年発行
クモの毒素と脳・神経 より
グルタミン酸を多量にあたえると、神経細胞が破壊されるという現象は、以前から報告されていた。1969年、ワシントン大学のオルネイが、グルタミン酸ナトリウムをサルやラットに大量に投与すると、脳の中の視床下部とよばれる部分の細胞が破壊されることを報告していた。
このため、グルタミン酸ナトリウム、つまり化学調味料の使用が問題になるほどであった。当時、米国では、中華料理に化学調味料がよく使用されており、多量に摂取すると、人によっては、のぼせ感や全身の倦怠感が起こり、これを中華料理店症候群(チャイニーズ・レストラン・シンドローム)などとよんだこともあった。
しかし、この中華料理店症候群は、おそらく末梢性の症状で、グルタミン酸血中濃度が急上昇したために血管に変化が生じたものであり、グルタミン酸が脳に直接作用したとは考えがたい。
その理由は、グルタミン酸血中濃度がいくら上がっても、そのまま脳に入ることはないからである。血液と脳のあいだには、血液脳関門とよばれる関所があって、血液中の物質を簡単に脳に通さないしくみになっているのだ。
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脳では、血流が止まって、そのために多量のグルタミン酸が放出されると、そのあとで神経細胞が死んでしまうという話をした。
それでは、この過剰なグルタミン酸の作用を抑えてやれば、神経細胞は死なずにすむのではないか。このような考えに基づいて、血管性の痴呆症の治療薬や予防薬の開発がさかんになっている。
私たちの見つけたジョロウグモのJSTXには、グルタミン酸受容体を阻害する作用がある。そこで、この毒が痴ほう症の予防薬として応用できないかと考えた。
問題は、ジョロウグモ毒はそのままでは血液脳関門を通過できないことと、グルタミン酸受容体には、多くの種類、すなわち亜種が存在することである。
グルタミン酸受容体は、少しずつ部分的に異なるアミノ酸組成をもつタンパク質分子(サブユニットとよぶ)が部品となり、これが数個ずつ集まってでき上がっている。哺乳類の脳からは、これまでに少なくとも20を超える種類のサブユニット分子が見つかっている。グルタミン酸受容体に限らず、伝達物質の受容体の多くには、このように複数の亜種のあることが知られている。
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ところで、脳が短時間の虚血、あるいは血流障害を受けたあとには、グルタミン酸受容体のサブユニットの構成が考えられている。自治医科大学の坪川宏博士の研究によると、虚血後のグルタミン酸受容体は、ジョロウグモ毒の作用を受けやすくなるのだ。このことからも、ジョロウグモ毒をうまく利用すれば、虚血後に起こる神経細胞死を防ぐことが機体されるのである。
駆虫薬の話にも出てきた、グルタミン酸に似た構造をもつカイニン酸を、大量に脳に投与すると神経細胞が死んでしまう。しかし、滋賀医科大学の加藤進昌博士は、ラットの脳室にカイニン酸を注入すると、海馬の神経細胞が選択的に死ぬが、あらかじめジョロウグモ毒をあたえておくと、これが防がれることを示した。
このような例からも、ジョロウグモ毒もその構造を改良し、血液脳関門を通過できるように工夫してやれば、医薬品として用いられる可能性がある。

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どうでもいい、じじぃの日記。
血液脳関門とは・・・正常な脳組織には血液中のある物質、例えば脳にとって有害な物質が脳内に侵入するのを防ぐ機構があり、毛細血管の内膜の働きによるとされている。この機構を血液脳関門という。
インスリン膵臓だけで作られ、中枢神経系には無関係だと考えられていた。最近になって脳にもインスリンとその受容体が存在することを突き止められた。インスリン血液脳関門を通り抜けるだけでなく、少量だが脳でも作られていることが分かった。
ジョロウグモ」は、JSTXという毒を持っており、この毒は興奮性神経の伝達物質であるグルタミン酸を阻害する性質があるのだそうだ。
もしかしたら、ジョロウグモ毒は痴呆症の予防薬になるかもしれない、というお話。