じじぃの「科学・芸術_570_月のマグマ・オーシャン」

Earth's Moon: Giant Impact Theory 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=I68hvR96UQQ
巨大衝突(ジャイアント・インパクト)

又吉直樹のヘウレーカ! 「月はなぜヒトの心を捉えるのか?」 2018年8月8日 NHK Eテレ
【出演】又吉直樹 【解説】村上貴弘(九州大学准教授) 【ゲスト】小久保英一郎(国立天文台教授)
疲れると夜空を見上げ、しみじみ月を見入る又吉。「月ってでかくないか?」10代から抱く疑問をぶつけたのが、国立天文台の小久保英一郎教授だ。
実は月の成り立ちは解明されておらずいまだ研究途上。現在、小久保さんが打ち出した理論が世界でもっとも有力な説を支えている。月がなくなると世界はどうなるのか?
「月」は地球に衝突した原始惑星の破片でできている。これは月の形成に関し最も可能性が高いとされている「ジャイアント・インパクト(巨大衝突)説」だ。
http://www4.nhk.or.jp/heureka/x/2018-08-08/31/32214/1426006/
『地球はなぜ「水の惑星」なのか 水の「起源・分布・循環」から読み解く地球史』 唐戸俊一郎/著 ブルーバックス 2017年発行
マグマの海と地球の水 より
この章では、地球型惑星が最終的な大きさ(質量)になった段階から後の進化を考えます。とくに注目したいのは、惑星形成直後にできたと考えられるマグマ・オーシャン(マグマの海)の役割です。マグマはメルト(溶けた岩石)からできていますが、メルトは大量の水を溶かすので、マグマ・オーシャンは惑星の水の分布や大気・海洋の形成に大きな影響を及ぼしたはずです。
地球などの惑星は微惑星の衝突・合体によって形成されました。月や火星などの表面に見られる多数のクレーターがその証拠です。
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成長しつつある惑星では、衝突による加熱だけでなく、宇宙空間へ光(赤外線)としてエネルギーを放射することによる冷却も起こります。この2つの効果のかねあいで、実際の温度が決まります。ゆっくりと惑星が形成される場合には冷却の効果が強く、あまり温度は上がりません。冷却の効果の大きさは、形成途上の惑星に大気があるかどうかによっても違ってきます。大気があると、その中の温室効果ガスが赤外線を吸収するので保温効果働き、地表の温度が上がるのを助けるのです。
このように、加熱の程度には不確かさがありますが、惑星の大きさが火星程度の大きさを超えると、その表面温度が岩石の融点を超えると予測できます。したがって、形成途上の地球程度の大きさの惑星は、その表面の大部分が融けた岩石で覆われていたと考えられます。これをマグマ・オーシャン(マグマの海)と呼んでいます。
次項で説明するように、月にはマグマ・オーシャンがあったという強い証拠が見つかっていますが、地球にマグマ・オーシャンがあったことを直接的に示す証拠はありません。地球のマグマ・オーシャンはむしろ、惑星形成のモデルに基づいて推測されます。ともあれ、マグマ・オーシャンの存在を仮定すると都合のよい事実が多くあり、地球でもマグマ・オーシャンがあったと考えるのが一般的です。
月のマグマ・オーシャン
マグマ・オーシャンという概念が初めて提案されたのは、月に対してでした。アポロ計画で採集された岩石の分析結果から、月の地殻のかなりの部分が灰長石岩という岩石でできていることがわかりました。灰長石岩は、主に灰長石という鉱物でできた岩石です。灰長石は玄武岩マグマが冷えて固結するときにできます。灰長石岩は玄武岩マグマより軽いため、マグマが固結するとき、地表に浮いてくるのです。地殻に多量の灰長石岩があることから、月の大部分がかつてマグマで覆われていたと推定されました。
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ではなぜ、小さな天体である月にマグマ・オーシャンができたのでしょうか? この謎を解くのは巨大衝突(ジャイアント・インパクト)という月形成モデルです。
惑星の形成は微惑星の衝突・合体で起こりますが、微惑星自身も合体で成長していくので、衝突する物体のサイズは徐々に大きくなります。ですから、地球の形成の最終段階では、微惑星とは呼べないくらい大きな物体が衝突していたはずです。比較的大きな天体に大きな物体が衝突すると、大きな重力エネルギーが一挙に解放され、惑星の広範囲が高温になります。地球の形成の終盤に大きな物体が衝突した時には、1万℃を超える高温が発生したと考えられています。その結果、成長しつつあった地球や衝突した物体から多量の気体が放出されたでしょう。こうして気体として放出された物体が冷え固まって月ができました。