じじぃの「科学・地球_111_46億年の物語・灰色の地球・最初の花崗岩の殻」

火成岩・堆積岩を1から解説【中学理科】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=v6ZYJJJ-kAA

図-5 大陸型と海洋型クラスト岩石

書評 「地球進化の謎に迫る」

地球の変動を支配するプレートテクトニクスは、地球を覆う蓋(地殻)が水を含むために、流動性脆弱性によって動くことができたのである。水が存在しない金星では剛体の蓋がしっかり地殻を固め、その下でマントルが対流するだけで、蓋(プレート)が移動することはなかった。そこで注目したいことは地球表面の三割は陸でおおわれている。つまり陸と海は相補的に働いているのです。
図-5に大陸型と海洋型クラストの岩石を示しました。大陸地殻も海洋地殻ももとはといえば、地球内部が融けた状態のマグマが地上に出て冷えて固まったものです。固体地球の8割以上を占める岩石圏マントルと地殻)は二酸化ケイ素を主成分とする岩石です。
https://sendatakayuki.web.fc2.com/etc6/syohyou483.html

地球進化 46億年の物語 ブルーバックス

著:ロバート・ヘイゼン 訳:円城寺守 渡会圭子

はじめに より

岩石に刻まれた記録を調べるほど、生物と無生物のどちらも含めた自然界が、何度も形を変えているのがわかる。
これまで語られなかった壮大で複雑に絡み合った生命と非生命の領域には驚きがあふれている。私たちはそれらを分かち合わなくてはならない。それは私たちが地球だからだ。地球上の物質すべて、私たちの肉体をつくる原子と分子も、地球から生まれ、地球に戻る。私たちの故郷を知ることは、私たちの一部を知ることなのだ。
第1章 誕生 地球の形成
第2章 大衝突 月の形成
第3章 黒い地球 最初の玄武岩の殻
第4章 青い地球 海洋の形成
第5章 灰色の地球 最初の花崗岩の殻
第6章 生きている地球 生命の起源
第7章 赤い地球 光合成と大酸化イベント
第8章 「退屈な」10億年 鉱物の大変化
第9章 白い地球 全球凍結と温暖化のサイクル
第10章 緑の地球 陸上生物圏の出現
第11章 未来 惑星変化のシナリオ

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『地球進化 46億年の物語』

ロバート・ヘイゼン/著、円城寺守、渡会圭子/訳 ブルーバックス 2014年発行

第5章 灰色の地球 最初の花崗岩の殻 より

移動する大陸

プレートテクニクスが地球の主要な地質学的プロセスであるという発見は、実は地質学を超えて近代科学全体に大きな影響を及ぼすことになる。少なくとも400年に及ぶ観察から予想されていたとはいえ、大陸全体が地表を移動するというのは、最初は想像しにくい異端の説として扱われていた。1960年代に世界中で新たな発見が続いてようやく注目され、広く受け入れられるようになった。しかし数多くの証拠が集まり始めると、地球科学の分野で科学史上最速とも言えるパラダイム・シフトが起きた。事実、私がMITに在籍していた1970年代半ばには、すべての地質学の教科書を完全に書き換えなくてはならなくなり、以前は定番だった上下方向の地殻変動はほぼ削除された。
あとから考えれば、上下方向の地殻変動を否定する証拠の中には、見るからに明らかなものもあったはずだ。現在のロッキー山脈は高くそびえているが、標高8848メートルのエベレストや壮大なヒマラヤ山脈に比べれば見劣りがする。それと同じで、海の深さは平均3800メートルだが、地球で最も深い海溝は(南太平洋のマリアナ諸島沖にある)、1万1000メートルという驚くべき深さだ。そのように極端な地形が、地殻均衡の世界で維持できるわけがない。上下方向の地殻変動だけですべてを説明することはできないのだ。
新世界(アメリカ大陸)の海岸線の正確な地図が初めてつくられたとき、横方向の地殻変動(地球の地質的変化における横の動きの役割)があったという微かな手がかりが見つかった。1600年代初頭には、アメリカ大陸の東海岸線と、ヨーロッパとアフリカの西海岸線の、驚くべき一致がわかるようになっていた。同じ曲線を描く形、同じへこみとふくらみ、大きく丸くえぐれたアフリカ大陸南西部の輪郭と、それに合わせたように東側がふくらんでいる南米大陸。大昔はその部分がジグソーパズルのようにぴたりとはまっていたことを思わせる。
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初めて大西洋を挟む大陸を細かく比較したのは、地質学とはあまり縁のなさそうな分野の研究者だったアルフレッド・ウェゲナーだった。彼は人生のほとんどを、北極の研究に費やした(50歳のとき、冬のグリーンランド氷床への伝説的な探査任務中に死んだ)。彼が仕事として打ち込んだのは主に気象現象の原因の究明だが、最も記録され、のちの世に影響を与えた業績は”大陸移動説”に関わるものだった。これは横方向の地殻変動に関する提言であったが、先駆的すぎたためか辛辣な評価を受けた。彼が自分の専門分野ではない地質学に関するこのアイデアを思い付いたのは、第一次世界大戦中、ドイツ軍で予備中尉として服務していたときのことだ。ウェゲナーはベルギー侵攻のとき首を撃たれて前線からはずされ、回復を待つ間、研究に没頭できた。
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ウェゲナーの大陸移動説が初めて出版物として世に出たのは1915年だった。ドイツ語版が続けて3版。版を重ねるごとに詳しくなり、1924年には英語に翻訳され『大陸と海洋の起源(The Origin of Continents and Oceans)』というタイトルで出版された。その後もさらに他の多くの版が出された。かつて大陸がつながlっていたという説を支持する新しいデータが次々と見つかった。1917年に古生物学者のある研究グループが、特徴的な化石を含む地層が海をまたいで一致している例を10件以上あげている。彼らはこのデータから、大陸間をつなぐ陸地があったはずだと解釈している。カーネギー研究所から助成を受けて南米東部を訪れ、さらに多くの大洋を横断する一致の例を記録した。まったく同じ鉱物、岩石、化石が見られるなど、目をみはるような例があった。

岩石のサイクル

花崗岩は浮かび、玄武岩は沈む。それが大陸誕生の鍵だった。花崗岩質マグマは源岩である玄武岩よりはるかに密度が低い。そのため新しくできた岩石はゆっくりと融解し、必然的に上昇して、表面近くの岩塊として固結したり、火口から噴き出して噴石や火山灰をまきちらす。数十億年の間に数え切れないほどの花崗岩の島が、この継続的なプロセスによってつくられた。
プレートの移動によって、花崗岩を基盤とした、連なるような諸島が生まれただけでなく、それらの島がまとまって大陸を形成した。その鍵は、花崗岩は沈まないという単純な事実にある。花崗岩玄武岩の上に浮いているが、玄武岩は密度が高いためマントルの中に沈んでいく。しかし花崗岩は軽いコルクのように、いったん形成されたら表面に留まり、そのままの状態で保存される。沈み込みによってさらに島ができると、花崗岩の部分が不可逆的に増加する。
沈んでいく海洋地殻のプレートに、沈まない花崗岩の島が散在しているようすを想像してみてほしい。玄武岩は沈むが島は沈まない。島は地表に留まり、沈み込み帯の上に帯状に連なる島をつくる。何億年もお時間が過ぎ、さらに花崗岩の島が増えて面積が大きくなるとともに、沈んだスラブから溶けた花崗岩が新たに上昇してきて、大陸をさらに厚く大きくする。島がまとまって原始大陸を形成し、それらがさらにまとまって大陸を形成する。ちょうど太陽系のコンドライトが微惑星を形成して、それがやがて惑星になるのと似ている。
プレートテクトニクスの壮大なサイクルが、私たちの世界を変えている。地球の薄くて冷たくてもろい地表はひび割れ、煮立ったスープの上に浮く、あくのように動いている。火山性山脈からあふれ出る新しい玄武岩質の地殻は、地中深くの対流セルが上昇する位置を示している。沈み込み帯で飲み込まれる古い地殻は、対流セルが下降している領域を明らかにしてくれる。地表のひどい崩壊(強烈な地震、大きな火山噴火)も、深層部の地球規模の激しい動きに比べれば、偶発的に起きた小さな出来事にすぎない。
プレートテクトニクス理論は地球科学をも大きく変えた。それ以前の上下方向の地殻変動が定説だった暗黒時代、地質学は他のどんな分野とも関連がない、切り離された学問と考えられていた。この大変革の前には古生物学者海洋学者と議論する必要はなかった。火山の研究は鉱床地質学とほとんど関係なかった。地球物理学者が生物の起源や進化に関心を持つことはなかった。ある国に存在する岩石が他の国に存在する岩石、ましてや遠く離れた海底の岩石と関連があるとは思われなかった。
プレートテクトニクス理論によって、地球に関するすべてのことが統合された。今では希少な生物の化石の発掘場所を、広大な海洋を超えて比較できる。消滅した火山地帯を調べれば、はるか昔に固まって沈み込み帯に隠れた、貴重な鉱床をさがすこともできる。大陸移動についての地球物理学的研究は、植物と動物の進化への重大な影響を指摘する。プレートテクトニクス理論によって、地殻から核、ナノから地球全体のレベルまで、地球は統合された惑星であり、空間と時間を超えて統一する単独の原理があることが明らかになった。