Deep Coral Diversity at Emperor Seamounts - Week 01 Update - FK190726
天皇海山群
天皇海山列
空絵人/SORAE-BITO
カムチャッカ半島からほぼ南へ、北太平洋の海底に日本列島とほぼ同じ長さの海底山脈がある。
この名前がまたふしぎで、「天皇海山列」というそうで……なんでこんな名前になったのかというと、この海山列を調査したのがロバート・シンクレア・ディーツというアメリカの海洋学者だったんですが(1954年のこと)この人が、なぜか、海山の一つ一つに日本の天皇の名前をつけたんですね。で、「天皇海山列」。「天皇海山群」ともいうそうですが……
https://soraebito.wordpress.com/tag/%E5%A4%A9%E7%9A%87%E6%B5%B7%E5%B1%B1%E5%88%97/
太平洋 その深層で起こっていること
公益社団法人 日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高(東京大学)
第4章「威風堂々! 天皇海山群の謎」ではちょっとトーンが変わり,天皇海山群に古代の天皇名が付けられた謎を解く歴史ミステリーが展開される.
命名者であるアメリカの海洋地質学者ロバート・ディーツ博士の足跡を辿りながら,天皇名命名の理由を探っている.謎解きの展開が面白く,著者の視野の広さと物事へのこだわりが読み取れて,対象が異なっても研究者の探究心は変わらぬことを感じさせられた.
この興味の広がりは「ダイアローグ,天皇海山群をめぐって」と題した COLUMNに書かれており,小泉八雲が登場するくだりに著者の探究心と遊び心が感じられる.
第5章「島弧海底火山が噴火するとき-それは突然,火を噴く」では,著者の本職に戻って,海底火山の噴火について,明神礁の大噴火や自身が遭遇した手石海丘の噴火の体験を交えて,臨場感のある文章が綴られている.
ここで再び,ロバート・ディーツ博士の研究が出てくるあたりに,著者の緻密な文章構成力が感じられて心地よい.
http://www.jpgu.org/wp-content/uploads/2019/02/JGL-Vol15-1.pdf
太平洋 その深層で起こっていること
蒲生俊敬 (著)
世界最大の広さを誇り、世界最深点をそのうちに秘める太平洋。人類最後の秘境=深海底はどんな世界なのか? 水深1000mにひそむ火山の正体とは?
第1部 太平洋とはどのような海か
第2部 聳え立つ海底の山々
第3部 超深海の科学――「地球最後のフロンティア」に挑む
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『太平洋 その深層で起こっていること』
蒲生俊敬/著 ブルーバックス 2018年発行
第2部 聳え立つ海底の山々 より
第4章 威風堂々! 天皇海山群の謎
海底に居並ぶ古代天皇たち
第3章でも述べましたが、ハワイ島・ロイヒ海山を起点に、西へ向かって直線状に連なるハワイ諸島は、北緯30度、東経170度付近までくると、直線の向きが急に北向きに変わり、その先になおたくさんの海山が、やはり直線状に並んでいます。
2本の直線が、じつに美しく「く」の字形に折れ曲がっているのが目を惹きますね。なぜ、これほどきれいに折れ曲がっているのでしょう? その理由については、いま興味深い論争が続いているところです。この章の終盤で詳しく紹介します。
確かなことは、これらすべての島や海山が、現在ハワイ島付近にあるホットスポットによって火山として誕生したこと、火山活動を止めたあとは太平洋プレートの動きに乗って移動していること、そして、いずれは海溝に沈み込み、その姿を消していく運命にあること、の3点です。
さて、くの字の先の方に並ぶ山々には、「天皇海山群」の名がつけられています。天皇海山列とよぶこともありますが、本書では天皇海山群で統一することにします。
天皇海山群は、日本列島のほぼ真東、東経170度付近の深海底に、南北約2000キロメートルにわたって並んでいます。深さ約6000メートルの深海底から、富士山と同程度、もしくはそれ以上の巨大な海山が連々と聳えているのです。
天皇海山群(Emperor Seamounts)という名前のとおり、それらほとんどの海山に、日本の天皇名がついています。これはわが国だけで、勝手に呼び習わしているわけではありません。世界中どこでも通用する、れっきとした国際名です。
大洋底拡大説からプレートテクトニクスへ
ロバート・ディーツ(海洋地質学者)は1961年、有名な「大洋底拡大説」を「ネイチャー」誌に公表しました。ほとんど同時に、米国のハリー・ハモンド・ヘスも独自に同じ説を発表し、彼らはこの業績によって、不朽の名声を博することとなります。
大洋底拡大説おは、新しい海洋地殻が中央海嶺で生み出され、マントルの対流に乗って左右に拡がっていき、やがて海溝で地球深部にもぐり込んで消失するという考え方です。
大洋底の動的な成り立ちを、矛盾なくスマートに説明できる画期的な学説でした。なにしろ、海底堆積物の厚さが地球の年齢から見て薄すぎることや、海底からジュラ紀以前の古い岩石がいっさい採取されないことなど、それまで太平洋の謎とされてきた諸問題を一挙に解決してしまったのですから。
ハワイを起点とする諸島、そして天皇海山群へとつながる一連の海底地形を詳しく描き出しそれを太平洋の海底の動きに結びつけたことが、ディーツを大洋底拡大説の構築へと向かわせたのです。先に紹介した海老名卓三郎博士の記述(著書『頭は文明に体は野蛮に : 海洋地質学者、父・田山利三郎の足跡』)は、この点に言及したものでした。
大洋底拡大説は、地球のダイナミックな営みを正しく理解しようとする研究に格段の弾みをつけました。ほどなく、20世紀最大のパラダイムシフトともいわれる「プレートテクトニクス」理論へとゆくことになります。