じじぃの「科学・芸術_380_小説『赤と黒』」

Rouge et Noir Part I 1954 Full Movie 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=S_9PtjmYIjQ

スタンダール 「赤と黒
スタンダールの代表作である『赤と黒』(1830年)は、復古王政シャルル10世時代を舞台とした恋愛小説であるが、野心に突き動かされ立身出世を遂げようという青年ジュリアン=ソレルが、貴族社会の女性との間の激しい愛憎関係から、ついに破滅していくという、革命後の社会変動という背景を抜きには成り立たない作品となっている。
ジュリアン=ソレルは田舎の貧しい木工所の息子として生まれたが、ナポレオンを尊敬し、自分の力で出世したいと願っている。聖書をすべてそらんじてみせるという抜群の暗記力を発揮して村の神父に認められ、学費を得るために有力者の家庭教師に紹介される。やがてその家のレナール夫人と密通する。ジュリアンにとっては「木挽きの子」にすぎない自分が貴婦人の愛を得ることは「自分の義務、しかも英雄的な義務を果たしたのだ」と思う。危険を感じた神父のすすめで、神学校で学ぶことになるが、「仲間に言わせると、ジュリアンは、権威とか模範とかに、盲目的に従おうとせず、自分で考え、自分で判断するというとんでもない悪癖に染まっている、というのだ」。
http://www.y-history.net/appendix/wh1204-020.html
『賢者たちの人生論 プラトンゲーテからアインシュタインまで』 金森誠也/著 PHP文庫 2009年発行
スタンダール より
バルザックにおのれの見解を表明したスタンダールは、大小説家でありながら、小説を書くにあたり文学形式、批評家、読者、それに新聞の出方、また作品の永続性のあるなしなどについては考えず、自己中心的にひたすらおのれのたのしにのために執筆したといわれる。彼は若いときから領事などの職につき、『恋愛論』の他にも『イタリア絵画史』『ハイドンモーツアルト、メタスタジオ伝』など多くの著作があったが、いずれもベストセラーになるようなことはなかった。ところが、中年になり、40歳50歳の声を聞くようになってから、彼の書いた長編小説の売れ行きがよく、金儲けになることを発見した。人に知られぬ孤独の人もついに世界的作家へと成長したのである。
彼は47歳で第1の長編小説赤と黒、51歳で、『ルシアン・ルーヴァン』、56歳で『パルムの僧院』を書いた。この3つの長編小説は、いずれもスタンダールの青年時代の心の体験を再現している。とくに『赤と黒』と『パルムの僧院』を例に取れば、一方は農家のせがれ、他方は甘やかされた貴族の子弟であったが、いずれも19世紀初頭の情熱的な理想主義にかぶれ、ナポレオンを崇拝し、自由、英雄的生活の理念に憧れ、現実社会に抗していかにも冒険的な生活を送り、女性に恋する。小説でも一方は犯罪者として処刑され、他方は有名な僧院長となって世を過ごすという全く逆の結末をむかえたことになるが、2人の生き方は共に19世紀の英雄の歩んだ道をほのめかしているのだろう。

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『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
赤と黒』 (1830年スタンダール より
2巻にわたる『赤と黒』はジュリアン・ソレルの人格形成小説であり、田舎出の青年である主人公が19世紀フランスの社会序列をよじのぼろうとする姿を描いている。
製材所で働いて感受性の強かった子供時代から、のしあがって貴族の女たちとの恋愛を手立てに上流階級の世界にはいりこみ、最後には転落して恥辱にまみれるまでの軌跡をたどる。
フランスの作家スタンダール(1783年〜1842年)は小説の舞台を19世紀はじめのフランスに設定し、1830年七月革命に先立つブルボン政体の乱れぶりを風刺している。