The Meteora Monasteries , Greece
本の表紙
『ビジュアルストーリー 世界の秘密都市』
ジュリアン・ビークロフト/著、大島聡子/訳 日経ナショナル ジオグラフィック社 2019年発行
ギリシャ北部、山の上の修道院 より
ギリシャ正教では、救いを求めて山にこもる修道士も多かった。ギリシャ北部、テッサリア平原に奇岩群があり、その上には、俗世間とのかかわりを断つのに理想的な場所だった1000年以上たった今でも、修道士たちは同じ場所で祈りを捧げている。9世紀に、孤独を好む隠修士たちが住み着いたのが始まりで、最盛期には24の修道院があった。
テメラオ修道院群のメテオラというギリシャ語は、「中空に浮かびこと」を意味している。石灰石の険しい崖の上に建てられた修道院は、現在でも、活動しているものが6つもあり、世界中から観光客が訪れている。
しかし、いまだに入場が厳しく制限されている修道院もある。ハルキディキ半島東端にあるアスト山の修道院自治州などがそうだ。この聖山では、15世紀初期に女人禁制が敷かれ、のちに、男性に対する1日あたりの受け入れ人数も制限された。アスト山の修道院共同体はギリシャ国内で最も古く、治外法権も認められている。またEU法によっても、特別な法的地位を与えられている。始まりは、1700年前の荒野の教父たちの時代に、陰修士たちがこの地に建てたスケーテと呼ばれる小さな僧院だった。最近の調査によれば、20の修道院に約2000人の修道士は共同生活を送っているという。中には海に突き出た小さな都市のような大規模な修道院もある。