じじぃの「科学・芸術_342_小説『戦争と平和』」

Война и мир 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=klWYEhrJbrM
BBC制作 「戦争と平和

NHK for Schoo「戦争と平和」 (9/25〜) 2016年09月21日
戦争と平和」は、ロシアの文豪レフ・トルストイの代表作の一つである、長編小説です。この歴史的大作を、イギリスBBCが2年半をかけてドラマ化。
世界遺産のエカテリーナ宮殿(ロシア)をはじめ、ラトビアリトアニアなどで撮影を行った、壮大なスケールの歴史ドラマです。このスケールだからこそ醸し出せる当時の雰囲気を、大人はもちろん若者たちにも味わってもらい、世界文学に触れるきっかけになれば・・・。そんな願いが込められて制作されました。
https://www.nhk.or.jp/school-blog/300/252715.html
『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
人類はおろか、一国民の生活でさえ、そのまま記述することは不可能に思える 『戦争と平和』(1869年)レフ・トルストイ より
西洋の文学表現に対して複雑な心情から、トルストイはこんな記述を残している。「ロシアには芸術的な散文体は存在しない……小説や詩や物語に使えそうな文体などひとつもない」。
トルストイは自身の名作『戦争と平和』を型にはめることにも消極的で、「(この作品は)長編小説ではなく、まして叙事詩でも、歴史的な編年記でもない」と1868年に記している。トルストイの頭にあったのは、どんな歴史的資料にもかならず欠損があることと、全知の視点でもないかぎり歴史上の「真実」を把握することはむずかしいということだった。トルストイは『戦争と平和』で、膨大な数の登場人物(総勢500人以上)の体験を描くことによって、広範な視野を作り出そうとした。登場人物のなかには、実生活でトルストイがよく知る人物をモデルとした者もいて、たとえばナターシャ・ロストワはトルストイの妻の妹がモデルとされている。
      ・
物語は、ロシアで最も西洋化が進んだ都市サンクトペテルブルクの上流貴族の夜会からはじまる。ナポレオン軍がイタリアを行進し、さらに東進するさなか、この都市の貴族たちは寄り集まっては(フランス語で)噂話に花を咲かせ、ギャンブルや酒を楽しみ、女遊びにうつつをぬかしていた。書き出しとなる夜会の主催者アンナ・パヴロヴァナ・シェーレルのことばで、この物語の中心にあるのが歴史や戦争、そしてヨーロッパ情勢であることが明確にされている(「ねえ、公爵さま、ジュノヴァとルッカボナパルト家の領地になってしまいましたわ」)。
      ・
まもなく、ロシアは戦争に突入する。モスクワへと進軍中のナポレオン軍が、モスクワから西へ約100キロの地点にある街でロシア軍と激突し、1812年9月7日にボロディノの戦いがはじまる。トルストイは、この日だけで2万5000人もの死者を出した大量殺戮の様子を生々しく描いている。また、アンドレイやピエールなどの架空の人物と同様に、実在の人物であるナポレオンや、ロシア軍の指揮を執るクトゥーゾフの考えや行動も書き込み、戦時下の過酷な現実や混乱をあらゆる面から読者に見せようとしている。この戦いはナポレオン戦争全体の分岐点となる。
サンクトペテルブルクにいる貴族たちの日常がほぼ影響を受けることなく進む一方で、モスクワの街は退却前のナポレオンの大陸軍による略奪に遭い、大火にも見舞われる。その後の退却のさなかも、ナポレオン軍は多大な困難に苦しめられ、ロシアの極寒の気候と飢えという現実に直面するなかで、何千もの兵士がロシア軍に殺戮されることになる。
物語はふたつのエピローグで、トルストイは1813年とその後について語り、ナポレオン軍が退却して戦争が終わり、ロシアと国民たちがようやく平和を取り戻す様子を説明している。