じじぃの「キリスト教のアメリカ!繁栄から取り残された白人たち」

【紹介】ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち (J D ヴァンス) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9ljoU6f1CfA
The Secret World of Mormonism - Mormon Cartoon 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=7q6brMrFw0E

ヒルビリー・エレジーアメリカの繁栄から取り残された白人たち〜 e-hon
「私は白人にはちがいないが、自分がアメリカ北東部のいわゆる「WASP(ホワイト・アングロサクソンプロテスタント)」に属する人間だと思ったことはない。そのかわりに、「スコッツ=アイリッシュ」の家系に属し、大学を卒業せずに、労働者階層の一員として働く白人アメリカ人の一人だと見なしている。」――トランプ支持者である白人労働者層の実態、アメリカ分断の深層を描いた、全米ベストセラー! 待望の邦訳!
http://www.de-hon.ne.jp/digital/bin/product.asp?sku=2000003357833800100E
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』 J.D.ヴァンス/著、関根光宏、山田文/訳 光文社 2017年発行
次々と変わる父親たち より
キリスト教は、私たち、とりわけ祖母の生活の中心だった。
私たちは教会には行かなかった。ケンタッキーでごくまれに、あとは、母が私たちの生活に宗教が必要だと思ったときに、足を向けるぐらいだった。とはいえ、祖母は奇抜ながらも、きわめて個人的な信仰を持っていた。
祖母が「既成の宗教」という言葉を口にするとき、そこにはいつも軽蔑がこめられている。教会は、変質者と両替人の温床と考えていたのだ。それに祖母は「やかましくて誇らしげなやつら」を毛嫌いしていた。自らの信仰をこれ見よがしに誇示して、いかに自分が敬虔な信者かをみずからぺらぺら語る人のことだ。
それでも祖母は、収入の一部を、ケンタッキー州ジャクソンの複数の教会に送金していた。とくに、ドナルド・アイソンという、映画『エクソシスト』の神父そっくりの年配牧師が管轄する教会には、かなりの額を送っていた。
祖母の考えでは、神はけっして私たちのそばを離れない。私たちがうまくいっているときには、ともに祝福し、うまくいっていないときには慰めてくれる。
私は祖父と一緒に何度もケンタッキーへ行ったが、ある日の道中、ガソリンを入れた後に、祖母がふたたび高速道路に合流しようとした。標識を見ていなかったのか、気がつくと車は、一方通行の出口ランプを逆走していた。怒ったバイク乗りたちが、私たちの車をよけてすれちがっていく。私は恐ろしくなって叫んだが、3車線の州間高速道路に出てUターンすると、母はこう言ってのけた。「大丈夫だよ。まったく。この車には、ジーザスがあたしと一緒に乗ってんだ、知らないのかい?」
祖母が教えてくれた”神学”は、洗練されてはいなかったが、私が必要としていたメッセージは十分提供してくれた。楽をして生きていたら、神から与えられた才能を無駄にしてしまう、だから一生懸命働かないといけない。クリスチャンたるもの、家族の面倒を見なくてはならない。母のためだけでなく、自分のためにも、母のことを許さなければならない。神の思し召しがあるのだから、けっして絶望してはいけない。
祖母がよく語ってくれた寓話がある。若い男が家にいると、ひどい嵐がやってきた。しばらくすると家が浸水した。誰かが玄関までやってきて、車で高台まで連れていってくれると言う。男はこう言って断った。「神さまがなんとかしてくれるさ」
数時間後、洪水が男の家の1階部分を飲みこんだ。するとボートが通りかかり、船長が安全なところへ避難させてくれると言う。男は断った。「神さまがなんとかしてくれるさ」
さらに数時間後、男の家は完全に水に浸り、屋根の上にいると、今度はヘリコプターがやってきて、パイロットが陸地まで連れていってくれると言う。またもや男性は断って、神様がなんとかしてくれると言った。その後すぐに男は水にさらわれ、天国で神の前に立つと、自分の運命について抗議した。
「信じていれば救ってくれると約束したじゃないですか」すると神は、こう答えた。「車で迎えに行かせたし、ボートを送ったし、ヘリコプターも派遣した。死んだのはおまえ自身のせいだ」
神はみずから助くるものを助く。これが祖母にとっての聖書の智慧なのだ。
キリスト教で描かれる堕ちた世界は、まさしく私の周囲の世界と一致していた。楽しいドライブが、一瞬にして惨劇と化す。ひとりが悪い行いをしただけで、それが家族やコミュニティの生活へ影響を及ぼす。
神は本当に私たちのことを愛しているのかと祖母に尋ねたとき、私が確かめたかったのは、キリスト教が、私たちの暮らす世界の意味を、いまでも教えてくれるのかということだった。心の苦しみや混沌の根底には、深い正義や意味が隠されているということを、請けあってもらいたかったのだ。
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進化論とビッグバン理論は理解すべき説ではなく、対決すべきイデオロギーとなった。牧師の説教では、他宗派のクリスチャンを批判するのにかなりの時間が割かれていた。神学上の戦線が引かれ、反対側にいる人たちは、聖書解釈がまちがっているというだけでなく、クリスチャンとしては認めない。私はダンおじさん(母の妹・ウイーおばさんのだんなさん)を誰よりも敬愛していたが、カトリックとして進化論を受けいれているという話を聞かされたとたんに、敬愛の念に懐疑心が混じった。
新しい信仰のせいで、私は異端者に目を光らせるようになった。仲のいい友人でも、聖書の一部の解釈がちがうだけで、悪い影響を与える人物とみなした。あげくのはてに、祖母さえも信頼できなくなっていった。祖母はクリスチャンだというのに、リベラルなビル・クリントンも支持していて、それになんの葛藤も感じていないようだったからだ。
ティーンエイジャーの私は、初めて、自分が何を信じるべきか、なぜそれを信じるのかということを真剣に考えだした。切実に感じたのは、”本物の”クリスチャンたちが社会の隅に追いやられているということだった。

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どうでもいい、じじぃの日記。
アメリカのミシガン、オハイオペンシルバニアイリノイインディアナなど五大湖周辺はラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれている。
昔は、石炭や鉄鋼、自動車などで栄えた地域だ。
ヒルビリー・エレジー』とは「田舎者の哀歌」という意味らしい。
アメリカの白人の大多数はクリスチャンだ。
アメリカでは新しい大統領が大統領就任式で聖書に手を置いて宣誓する。
この本の著者は若い頃、「聖書」についてかなり心の葛藤があったようだ。
クリスチャンでも聖書に書かれていることを信じる人が少なくなったとはいえ、聖書を心の拠りどころにしていることが分かる。