じじぃの「科学・芸術_370_映画『激突!』」

Duel 1971 Full Movie HQ (sa prevodom) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=VB_zLWpjuBA
Duel (1971)

スピルバーグの最高傑作!恐怖の体験「激突!」 All About
言わずと知れたスピルバーグ出世作『激突!』
元はTV用に作られた作品ですが、映画用に編集され劇場公開されました。
後の『ジョーズ』に繋がる作品としても有名です。
砂漠の真ん中を走る1本道
前を遮ってノロノロと走るタンクローリーにクラクションを鳴らし
追い抜いた時から、主人公の恐怖の体験が始まります。
追い抜かれた事が癇に障ったのか、タンクローリーから
執拗に嫌がらせを受け始めるのです。
https://allabout.co.jp/gm/gc/425081/
『巨匠たちの映画術』 西村雄一郎/著 キネマ旬報社 1999年発行
恐怖のテクニック より
お化け大会でもそうだろう。人間は見てしまえばなんてこはないが、実体がわからない目に見えないものに対しては、限りなく不安を抱くものだ。
この原理を映画に利用して、犯人や加害者や怪物の姿を最初まったく見せず、ストーリーが展開していくなかでチビリチビリと見せていく。このチラリズムが、観客のサスペンス感を醸成していくのだ。さあ出るぞ、出るぞ、出るぞ……そら出た!っ! ともったいぶったほうが、恐怖感は増幅されるはずだ。
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すなわち、スピルバーグジョーズが襲ってくる瞬間、必ずといっていいほど、カメラを眼の高さにもってきて、臨場感を倍加させていたのだ。
冒頭、裸体になって泳ごうとする女性が海中に入ったところで、カメラもいっしょに海のなかに入る。その時、カメラは水面スレスレの位置に構えられ、ゆらゆら揺れ始める。その揺れるカットを見ると、観客も海中に浮かんでいるような錯覚にとらわれてしまう。
そうして、今度はカメラを水中にもぐらせ、泳いでいる女性を下から見上げる”あおり”の視線でとらえる。もちろんこのカットはジョーズの見た目である。
つまり襲われる者を水平に、襲う者を下から……。被害者と加害者の立場をカメラ・ポジションとカメラ・アングルによって明確に対比させたからこそ、あれほどまでに下からの恐怖感を作り出せたのだ。
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ところで”あおり”の視点といえば、「激突!」でも効果的に使われている。デヴィットが踏切で列車が通り過ぎるのを待っていると、突然、乗っている自分の車がタンク・ローリーからグイグイと押されているのに気がつく。彼は驚いてふりかえる。そのとき、タンク・ローリーは”あおり”の視点で写されている。
われわれも背の高い人の前に行けば、うわぁ、高いなあという気持ちで見上げているはずだ。同じように、”あおり”の視点を多用すれば、無慈悲なまでの巨大感が強調されるのだ。
また「激突!」の踏切の”あおり”カットは、広角レンズで写しているために、グロテスクに見えて気持ちが悪い。
「激突!」は、前編、広角レンズが多用されている点でも、記憶にとどめておきたい作品である。
広角レンズはカメラの視野角度が広いため、被写体を普通以上に広がった大きさに見せてしまう。これは特に移動しているものを撮る時に効果的なのだ。走っている車をフォローする時は、より速く見えるし、車から主観移動で写す時は、周りが普通以上に動いて見えるから、画面のスピード感が倍増される。
「激突!」は全篇、車が突っ走る映画なので、広角レンズの活用は、大きな必然性があったわけである。