じじぃの「科学・芸術_551_宗教国家アメリカ・福音・富と成功」

Donald Trump The Success Story 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=7QvMvblvvt0
福音の国 「富と成功」nhk.or.jp HPより)


視点・論点 「富と成功の福音の国 アメリカ」 2018年02月20日 NHK
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ニューヨーク5番街は、「トランプタワー」があることで有名ですが、そこから南へ30分ほど歩いたところに、小さな教会があります。4百年近く前に創立された、アメリカで最も古い教会の一つです。
ここでは、「この世の成功」と「神の祝福」がイコールで結ばれています。ローマ時代の言葉で言えば、「民の声は神の声」ということです。直接神の声を聞くことはできないが、多くの人の声がそれを代弁してくれる。人びとが賞賛しているなら、それは神もその人を是認していることの印だ、と考えるわけです。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/290703.html
『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 森本あんり/著 NHK出版新書 2017年発行
何がトランプ政権を生み出したのか より
大統領選の真っ只中だった時期、トランプ勝利を予想した人はほとんどいませんでした。メディアは面白おかしくトランプの奇矯な言動やパフォーマンスを取り上げましたが、それでも最後はヒラリーが勝つだろうと思っていました。
私自身もそうでした。ただ、選挙戦の帰趨とは別に、トランプ人気の背景に「富と成功」の福音と反知性主義があるという分析は、大統領選の最中からしばしば話題にしてまいりました。
たとえば、なぜトランプは福音派に支持されるのか、という謎があります。福音派共和党の支持基盤とされるグループですが、それが単純にトランプ支持へとつながっているわけではありません。この謎は、アメリカ的なキリスト教の論理を知らないと読み解けません。
常識的に考えれば、聖書の字義どおりの解釈を旨とする福音派がトランプを支持するとは思えません。トランプは二度も離婚して、三度目の結婚をしています。中絶は支持するし、「自分の罪について考えたことがありますか」と聞かれて、「いやいや、そんなことは考えたこともない」と答える。
「聖書は好きな本だ」と言いながら、「では聖書のどこが好きですか」と記者に尋ねられると、まったく答えられない。新約聖書の引用をしようとして、聖書を読んでいるキリスト教徒なら「コリント第2(second)と言うところを、「コリント2つ(two)」と言ってしまう。
こうした言動を見る限り、彼はとてもキリスト教的人間とは言えないでしょう。にもかかわらず、得票率を分析すると白人福音派の8割が彼を支持したという結果が出ていました。それはなぜでしょうか。
その答えが、「富と成功」の福音です。
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トランプ現象をうけて、近年、多くの本が出版されています。私の読んだ限りで目を引いたのは、マイケル・ダントニオ『熱狂の王 ドナルド・トランプ』(Thw Truth about Trump)と、ワシントン・ポストが総力をあげて書き上げた『トランプ』(Truth Reveabled)の2冊です。
こうした本から浮かび上がるのは、なぜ彼は米大統領を目指したのか、という問いです。1987年のテレビ番組でトランプは「選挙戦なしで」大統領になれるとしたらどうか、大統領になりたいか、と尋ねられました。その時彼は、いや、大統領になること自体よりも「選挙に勝つ満足感」を得ることのほうが大きい、と答えたのです。
2011年のホワイトハウス記者クラブの晩餐会では、列席していたトランプをオバマ大統領が冗談のネタにして手ひどくからかいました。幼児からひたすら「負けないこと」を信念としてきた彼のことです。もしこの時、立候補を決意したとすれば、その目的は大統領として何かすることよりも、選挙に買って自分が最強の男であることを世界に示すことだった、と解釈できるかもしれません。
トランプにとっては、自分が誰よりもすぐれた人間であることを証明することが目的で、大統領選挙に勝ことはその究極の証明方法だったのかもしれません。だからこそ彼の選挙公約は曖昧で具体性がなく、人びとを引きつけて得票に結びつくものではあっても、実現可能性や実効性に乏しいのではないでしょうか。
アメリカは、目的をもつことで統一を作り出してきた国です。第1章でご覧いただいた「アメリカの進歩」に表われているように、アメリカを動かしてきたのは、自分で自分に課した使命でした。さて、目的や使命を見失ったアメリカは、今後どのような国になるのでしょうか。