じじぃの「科学・芸術_356_ホモ・サピエンスの誕生・オモ川流域」

Where it Happened: Oldest human fossils found here 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kT0YW5B9ewc
最初のホモ・サピエンス

先史:ホモ・サピエンスの誕生 2017-02-20 歴史の世界
ホモ・サピエンスの誕生(起源)
現生人類すべての起源が東アフリカにあるという説は科学界においてほぼ合意に近い状態になっている。
現生人類の最も古いおよそ195,000年前の化石がエチオピアのオモ遺跡(英語版)から発見されており、分子生物学の研究結果からすべての現生人類がおよそ20万年前のアフリカ人祖先集団に由来するとした証拠が示されている。
http://rekishinosekai.hatenablog.com/entry/sensi-homo-sapiensu-tanjou
『ヒト―異端のサルの1億年』 島泰三/著 中公新書 2016年発行
どこでホモ・サピエンスは出現したのか? より
ホモ・サピエンスのもっとも古い化石が発見された19万年前のエチオピア南部のオモ川流域とは、どんな環境だったのだろう? それは「最後から2番目の氷河期」と呼ばれる寒冷気候が19万年前から13万年前まで続く時代である。
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19万年前のオモ川流域の川辺には、イチジクの大木などが25〜30メートルの高さに聳え、あちこちに魚類とそれを漁る水鳥の多い湖沼と丈の高い草原のあるモザイク状の環境だった。それは現在まで続く環境である。
形態人類学が指し示すホモ・サピエンスの骨の特質は、なによりもその華奢な作りにある。
ネアンデルタール人の骨格の骨組みは、現代人の基準ではかなりがっしりしていた。(略) 実のところ、例外と思われるものこそ、私たち自身のどちらかというと弱々しい骨なのである」
ホモ・エレクトゥス北京原人ジャワ原人)の骨は重く、ネアンデルタールではその骨質部分がホモ・サピエンスよりも厚い。ホモ・サピエンスは、潜航するホモ属人類の骨と比べると、骨の緻密質が薄く、骨そのものが細く、華奢で、生き物としての力強さには欠けるものがある。
「バビルーサ(水牛に似た動物、体毛がない))と同じこと」――アフリカの湖沼群地帯にて
ゾウやサイなど1トンを超える巨大動物を除くと皮膚が裸の陸棲哺乳類の例はごく少なく、人間のサイズに近いものは、コビトカバとバビルーサしかいない。両種の生息域が熱帯の水辺であることは、裸の皮膚で生きてゆくには、一定以上の気温があって体温が維持でき、皮膚から蒸散する水分を常時補給できる環境が必須なのだと推測される。
ホモ・サピエンスの起源は、オモ川で見たように水辺にある。それが、バビルーサのような熱帯の水中や水辺にすむ動物を、ホモ・サピエンスの誕生との関係で私が重視する理由である。
しかし、だからといってホモ・サピエンスが水中に適応したとは、私は考えない。ホモ・エレクトゥスの突然変異によって裸の別種であるホモ・サピエンスが誕生したと、私は想定する。裸の皮膚が水中生活に適応している証拠はない。
ホモ・エレクトゥスは、王獣であり、陸の支配者だった。ゴリラやチンパンジーが水域を好まないように、ホモ・エレクトゥスの重い構造の骨と筋肉の塊のような体では、水辺では暮らしても水中に入ることはなく、ネアンデルタールがそうであったように魚も貝も食べなかったはずである。
いっぽう、ホモ・エレクトゥス類の裸の別種はことさら水辺や水中を好んだだろう。彼らは泳ぎができるので、王獣ホモ・エレクトゥスと競合することなく、貝類や魚を捕るようになった。ホモ・サピエンスは原人たちの世界の辺縁である水辺に、新しく魚や貝類などの海棲、水棲動物、そして海藻など、水中、水辺の植物を食料とする生計手段を確保したのだった。
化石の証拠が示すように、当時のアフリカの水中には無限の魚がいた。現存するいかなる魚よりも大きな魚がいたというオモ川の19万年前の事実である。