じじぃの「科学・芸術_182_白血病・フィラデルフィア染色体」

201503 きょうの健康慢性骨髄性白血病 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Kpm9F-nLGVM&t=22s
フィラデルフィア染色体 (qlife.jp HPより)

【診察室】抗がん剤グリベックの問題点 2011年6月21日 群馬県保険医協会
年に何回か健診に訪れる父の同級生は、数年前から慢性骨髄性白血病を患っている。近くの病院で処方された抗がん剤グリベック2錠を内服中だ。調べてみると1錠約3,000円、薬代だけで月に18万円という高額に驚いた。
冒頭の患者は、国民年金暮らしの高齢者なので、月に8,000円または12,000円の外来自己負担限度額で済んでいる。しかし、70歳未満で、常用量4錠の場合、月36万円の3割で、自己負担額は10万円にもなる。
http://gunma-hoken-i.com/news/2143.html
慢性骨髄性白血病とは 医療総合QLife
●原因は何か
すべての遺伝子は、細胞のなかにある46本の染色体(ひも状のもので、1番から22番まで2本ずつある常染色体と、2本の性染色体からなる)に存在しています。慢性骨髄性白血病では、ほとんどの場合で9番染色体と22番染色体が途中で切断され、それぞれ相手方の染色体と結合する異常が認められます。
この異常な染色体をフィラデルフィア染色体と呼んでいます(図 フィラデルフィア染色体)。この結果、新たにbcr/ablと呼ばれる異常な遺伝子が形成されます。この遺伝子からbcr/abl蛋白質が産生され、これが慢性骨髄性白血病の発生原因と考えられます。しかし、どのような原因によってフィラデルフィア染色体が形成されるのかはわかっていません。
●症状の現れ方
急性期(急性転化)では、動悸・息切れ・全身のだるさなどの貧血症状、皮下出血・鼻血・歯肉出血などの出血症状、発熱などの感染症状のほか、関節痛、骨痛などが現れる場合があります。
https://www.qlife.jp/dictionary/item/i_230214000/
『薬をつくる研究者の仕事』 京都大学大学院薬学研究科/編 化学同人 2017年発行
がん細胞の遺伝子やタンパク質を見ることで効く薬がわかる (一部抜粋しています)
がん細胞の多くは突然変異によって生まれています。すなわち、血液や口腔粘膜で調べる個人の遺伝子とは異なった配列をもつわけです。それががん化の原因となるため、がんの特徴を調べた治療は、効果増大に繋がる最も近道となります。
これまで1番画期的だったのが、イマチニブ(商品名;グリベック)という薬の誕生です。慢性骨髄性白血病のうち一部で、22番染色体と9番染色体間での転座(組換え)が起こり、フィラデルフィア染色体とよばれる特殊な染色体がつくられます(図.画像参照)。この染色体が、がんの原因となる「bcr-abl」というタンパク質をつくることが、1960年ころにわかりました。治療薬の開発までには相当時間がかかり、ようやく2001年にこの新しい遺伝子の働きを抑える薬としてイマチニブが販売されました。
イマチニブが発売されるまでは慢性骨髄性白血病の患者さんの約50%が3〜4年のあいだに病期が進行し、その結果、生存期間も短いのが現状でした。しかし、この薬が誕生すると、bcr-abl遺伝子が関連する慢性骨髄性白血病では、9割以上の人が5年間以上生きられるようになりました。しかも、がんにだけの特別な遺伝子を抑えるので、副作用も普通の抗がん剤と比べて格段に低くなります。このような真の原因遺伝子はドライバー遺伝子とよばれ、肺がんや悪性黒色腫でも見つかっています。その遺伝子を抑えることで、かんの治療にとても高い効果が出ています。
遺伝子以外にも、がん細胞を染色することでさまざまなタンパク質の発現を調べることも行われています。たとえば、乳がんは、3つのタイプを調べます。まずは、乳がん組織を生検でサンプリングするか手術で摘出して、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2受容体の3つの発現を調べることで、治療戦略を立てます。エストロゲン受容体もしくはプロゲステロン受容体が陽性なら、ホルモン療法をします。HER2陽性ならHER2にくっつく抗体医薬品を投与します。このように、がん細胞の特徴を調べることは、治療選択をするうえで広く活用されています。
がんは「早期発見をすれば治る病気」から、「原因が同定できれば治る病気」になりつつあります。新しい技術を活用したがん化の原因の同定が、効果の高い新薬の開発を加速し、治療成績を向上させています。そこには、多くの大学の研究成果が生かされており、bcr-ablはアメリカ・フィラデルフィアの研究グループ(このためフィラデルフィア染色体と命名)、肺がんのドライバー遺伝子EML4-ALKは東京大学の間野博行教授のグループ、イリノテカンの副作用予測は名古屋大学の安藤雄一教授のグループの発見です。