じじぃの「科学・芸術_926_遺伝子DNAのすべて・臓器移植」

【日赤】BANK!BANK!vol 5 あなたの体の中にもある「HLA」 20170125

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9pRcVOx8wwk

Shirley Nolan, Anthony Nolan

骨髄移植とは

全国骨髄バンク推進連絡協議会
骨髄バンク
1991年12月に、血縁者にドナー(骨髄提供者)のいない患者さんを救うために骨髄バンクが設立されました。(日本骨髄バンク
骨髄バンクは患者さんと血縁関係のないドナーさんとの仲介役をする組織です。
https://www.marrow.or.jp/bank/marrow.html

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

適合性を生み出す遺伝子

私たちの遺伝子は、体と脳を形づくるだけではない。周囲の人々との適合性も支配している。

何世紀ものあいだ、医師たちはあらゆる体の部位の移植にも挑戦したが、ほとんどは成功しなかった。体のあらゆる部位から別の部位に移植された皮膚は成長するが、別の人から採った皮膚は拒絶されて壊死してしまうことがよく知られていた。臓器移植はさらに難題で、一卵性の双子でのあいだでしか成功しなかった。明らかに、誰かの血液や臓器が患者のものと適合するかどうかを決めるなんらかの要素が体内にある。それはご推察のとおり、遺伝子にコードされている。
血液構成成分のなかには、血漿(なかに血球が浮遊している液体)や血液を凝固させる血小板など、医学的に役立つものがいくつかあるが、輸血には酸素を運搬する赤血球が使われる。赤血球は、抗原と呼ばれる糖分子で覆われている。抗原は赤血表面から突き出ていて、AとBの2つの形状がある。血液型Aの人は赤血球にA抗原だけを持ち、血液型Bの人はB抗原だけを持つ。両方を持つ人はAB型で、AもBも持たない人がO型だ。
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免疫細胞は毎日、体内をパトロールして、すべてが順調に働いているかをチェックしている。
細胞たちが健康で正常に機能しているかを確かめ、侵入してくる異物(細菌やウイルスなど)を見つけて破壊し、損傷や欠陥のある細胞を取り除く。この作業を補助するため、細胞は、主要組織適合抗原(MHC)と呼ばれるカップ状のタンパク質に覆われている。このMHCタンパク質は、細胞内の分子の一部を取り出し、外に提示して免疫細胞に点検させる。抗原提示と呼ばれる過程だ。この分子の一部に少しでも異常がありそうなら、その細胞は体内の健康管理システムとしてつくられた過程で破壊される。
MHCタンパク質は、まとめて「ヒト白血球抗原」(HLA)遺伝子複合体として知られる多数の異なる適合遺伝子によってコードされている。これらはヒトゲノムのなかで最も多様な遺伝子で、それぞれに何千もの異なるアレル(対立遺伝子)がある。これらの遺伝子が、臓器や骨髄、または血液幹細胞の移植を必要とする患者に、適切な提供者になれる人かどうかを決定する。
毎年、血液のがん(白血病)や他の血液患者にかかった患者のうち何千もの人が、幹細胞移植を必要としている。以前は大腿骨などの大きな骨から採った幹細胞の豊富な骨髄を使って行われていたが、現在では移植の90パーセントはドナーの血流から採取した幹細胞で行われる。
この方法は痛みや侵襲性がずっと少ない。患者の約3分の1は、兄弟姉妹などの家族の誰かに適合性のあるドナーが見つかる。HLA適合遺伝子の同じアレルを受け継いでいる可能性が高いからだ。けれども、アレルは卵子精子がつくられるときに組み換えられて入れ替わるので、必ずしも一致するとはかぎらず、その場合は血縁者でないドナーを探す必要がある。

シャーリーとアンソニー より

1971年、アンソニー・ノーランは、ウィスコット・アルドリッチ症候群というまれな遺伝性血液疾患を持って生まれた。骨髄移植が治療法として唯一の頼みの綱だったが、アンソニーの家族に適合する人がいなかった。子どもの命を救おうと必死になった母親のシャーリーは、骨髄提供者候補のデータベースを立ち上げた。世界初の試みだった。
悲しいことに、それで息子を助けることはできず、アンソニーは8歳で亡くなった。しかし、「アンソニー・ノーラン」骨髄バンクには現在、50万人以上の提供候補者が登録していて、その全員が、白血病(血液のがん)や他の血液疾患にかかって絶望している患者に適合することを願い、適合遺伝子の分析を受けている。シャーリーの先例に鼓舞されて、今では48ヵ国で1900万人以上の提供候補者が登録リストに載り、100万例以上の骨髄あるいは血液幹細胞移植が世界じゅうで行われている。