じじぃの「人の生きざま_651_小阪・憲司(精神科医・レビー小体病)」

主な認知症 (tokyo.med.or.jp HPより)

レビー小体型認知症がよくわかる本』(小阪憲司) 講談社BOOK倶楽部
●ひと目でわかるイラスト図解 《講談社 健康ライブラリーイラスト版》
監:小阪憲司(コサカケンジ)
1939年、三重県生まれ。金沢大学医学部卒業。名古屋大学医学部精神医学教室講師、東京都精神医学総合研究所主任研究員、横浜市立大学医学部精神医学教室教授、横浜ほうゆう病院院長などを経て、現在、メディカルケアコートクリニック院長。横浜市立大学名誉教授。専門は認知症の臨床と脳病理の研究。
レビー小体型認知症」の発見者として世界的に知られている。レビー小体型認知症研究会の代表世話人レビー小体型認知症家族を支える会顧問を務めるなど、日本の認知症医療と家族のサポートを牽引。認知症関連の著作多数。講演なども行いながら、認知症の啓蒙活動に努めている。2013年度「朝日賞」受賞。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062597791
臨床医が語る認知症脳科学 岩田誠/著 日本評論社 2009年発行
認知症のいろいろ より
レビー小体病もあまりめずらしいものではなく、その気になって見れば案外に多い病気です。ピック病(前頭側頭型認知症)より多い。昔は一括して老人性痴呆と呼ばれていたものが、今では別々のいろいろな病気へ分けられてきましたが、そのなかでかなり最近になってわかってきたのがレビー小体病です。
この病気でいちばん多いのは、まずパーキンソン症状が出てくるタイプです。抗パーキンソン薬を出すと幻覚・妄想が非常に派手に出てきてしまい、おかしいと思って、この病気を考えるに至る、ということが多いのです。
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レビー小体病の発見に関連して私が考えていることをお話しします。今から考えると、私がニューヨークにいたとき、1976年から78年ごろですが、病理の研究室にいたので、亡くなった方々の脳を調べていましたが、そのとき、どうもへんだなと思ったことがありました。なぜこんな組織の異常が生じるのかと不思議に思った脳が2例あり、どちらもパーキンソン病アルツハイマー病が加わったようなへんな病気だなと思いました。ちょうどその頃、日本で小阪憲司先生が、その病気(レビー小体病)について最初の報告を発表されました。私はニューヨークにいるときはそれを知らなくて、日本に帰ってきてから小阪先生が話しておられるのを聴いて、ああこれだったのか、と思ったのです。
病理学的にいうと、パーキンソン病で侵される脳内の場所は、主に黒質という部分――中脳の前方にある部分――であり、そこの神経細胞の内部にレビー小体という顕微鏡で見える小体ができます。ところがレビー小体病では、この小体が黒質の細胞だけではなく大脳皮質の細胞の中にもたくさんできてしまいます。大脳皮質のあちこちの部分は、パーキンソン病の場合に黒質に起こる変化と同じような変化が起こってしまう。しかし、それまでみんなは、そんなはずはないと思っていました。いろいろ調べて見ると、どうもレビー小体に似ているが、これはなにかの間違いだろうと思っていたのです。ところが、それが別のすごい病気だという説が日本から出てきた。おもしろいもので、欧米でもたぶん、みんながすでにこの細胞変性を見ていたのでしょうが、誰かが言い出すまでは、へんだなと思いながらも何かの間違いだろうと見過ごしてきたのでしょう。こういうことは、病理学と臨床医学の結びつき方の問題に根ざします。