じじぃの「人の生きざま_617_ジャック・アタリ(経済学者)」


ジャック・アタリが唱える自己中心的な利他主義 Tigh Mhichil
アルジェリア生まれの経済学者ジャック・アタリ(1943 - )のインタビューを観た(NHK BS1, 20160127)。
ヨーロッパへの難民流入問題について訊かれたアタリは、ヨーロッパは難民受入れは可能と、人口比率の点から話し、さらに人口移動は世界的な潮流であると語った。
現在の国際情勢は「無極化」と呼ばれるリーダー不在、超大国不在の時代。この混迷のゆくえについて、アタリは世界のリーダーにとっても個人にとっても〈他者の成功が自己の成功の条件である〉という興味深い理念をしめす。これをアタリは一言で「自己中心的な利他主義」(selfish altruism)と呼ぶ。
http://michealh.hatenablog.com/entry/2016/02/03/190000
『戦後70年 にっぽんの記憶』 橋本五郎/編、読売新聞取材班/著 中央公論新社 2015年発行
欧州の難題 悲観しない 仏経済学者 ジャック・アタリ (一部抜粋しています)
私は世界の行方に関心がある。
欧州に代わって戦後、世界を主導してきた米国が相対的に衰えている。もはや単独では世界の問題に対処できない。中国が米国の意に反してアジアインフラ投資銀行開設を強行したのも米国の衰えの表れだ。
この先どうなるのか。米国が大英帝国に取って代わって世界に睨(にら)みを利かせたように、新たな「帝国」が出現するのか。ローマ帝国末期のように後継不在のまま、緩慢に没落するのか。
私は後者だと思う。中国が米国に取って代わることは考えられない。中国は周辺支配の欲望をあらわにし、日本との緊張が増幅しよう。露シベリアに領土的野心を抱き、中露戦争を引き起こす恐れもある。ただ、中国の野心は周辺に限られる。歴史的に見て中国に世界的な使命感はない。
日本はどうか。「90年頃に世界一の大国になり得る」と私は考えていた。科学技術に習熟し、外国に積極的に投資していたからだ。日本は今でも科学技術力を維持しているが、人口減少問題で適切な政策を講じず、自滅を選んでいるように見える。大胆な人口政策に踏み出す政治決断が必要だ。
米国の衰退に伴い世界はさらに多様化する。10ヵ国ほどの主要国が秩序作りに努めるだろうがうまくいかず、「Gゼロ」に向かう。
  <「Gゼロ」は近年、米政治学者イアン・プレマー氏が提唱している概念として知られる。米欧の衰退で、国際秩序に責任を持つ国がなくなる事態を指す>
市場の力がますます拡大し、世界は1つの市場になる。だが、それを監督する「政府」はない。法治は利かず、犯罪的な経済が幅を利かせる。失業はさらに増加し、不平等は拡大し、世界は混沌に陥る。民主主義は無力になる。
その後、国家と国家、または国家と非国家集団の戦争が世界で起き、人口大移動が起きた末に民主的な世界秩序に行き着く。あるいは、世界戦争に至る前に人々が私利私欲ではなく、利他主義の利益に気付いて民主的秩序作りに向かう――。
これが私の描く「未来の世界」だ。