じじぃの「歴史・思想_526_老人支配国家・日本の危機・移民を受け入れよ」

お年寄りに優しい台湾人の国民性。佛光山が板橋の高齢者介護施設にお米とミルクを贈呈へ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9ghXQv6spAE

台湾の高齢化を支える介護「移民」

台湾の高齢化を支える介護「移民」――外国人が溶け込む社会の実情

2018/01/05 Yahoo!ニュース
日本における介護分野の人手不足は深刻だ。誰がこの仕事を担うのか――同じ東アジアで、この問題でひとつの解を見出そうとしている国がある。それが台湾だ。
インドネシアやフィリピンなどから家庭滞在型の介護人材を積極的に受け入れ、いまやその数は20万人を大きく超える。社会全体が「外国人と共に生きる」ことを選択した台湾は、日本の未来を考える教材だ。
https://news.yahoo.co.jp/feature/844/

文春新書 老人支配国家 日本の危機 エマニュエル・トッド

本当の脅威は、「コロナ」でも「経済」でも「中国」でもない。「日本型家族」だ!
【目次】
日本の読者へ――同盟は不可欠でも「米国の危うさ」に注意せよ

Ⅰ 老人支配と日本の危機

1 コロナで犠牲になったのは誰か
2 日本は核を持つべきだ
3 「日本人になりたい外国人」は受け入れよ

Ⅱ アングロサクソンダイナミクス

4 トランプ以後の世界史を語ろう
5 それでも米国が世界史をリードする
6 それでも私はトランプ再選を望んでいた
7 それでもトランプは歴史的大統領だった

Ⅲ 「ドイツ帝国」と化したEU

8 ユーロが欧州のデモクラシーを破壊する
9 トッドが読む、ピケティ『21世紀の資本

ⅳ 「家族」という日本の病

10 「直系家族病」としての少子化磯田道史氏との対談)
11 トッドが語る、日本の天皇・女性・歴史(本郷和人氏との対談)

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『老人支配国家 日本の危機』

エマニュエル・トッド/著 文春新書 2021年発行

3 「日本人になりたい外国人」は受け入れよ より

”完璧さ”は日本の長所であり短所

日本の最高の長所は、日本の唯一の問題にもなりえます。それは”完璧さ”に固執しすぎることです。
移民を受け入れない日本人は「排外的」だと言われてきました。日本人自身がそう思い込んでいるところもある。しかし、私が見るところ、そうではありません。日本人は、異質な人間を憎んでいるというより、仲間同士で互いに配慮しながら摩擦を起こさずに暮らすのが快適で、そうした”完璧な”状況を壊したくないだけなのでしょう。
しかし出生率を上げると同時に移民を受け入れるには、”不完全さ”や”無秩序”をある程度、受け入れる必要があります。子供を持つこと、移民を受け入れこと、移民の子供を受け入れることは、ある種の”無秩序”を受け入れることだからです。
フランスの場合、誰もが身勝手です(笑)。もともと”無秩序”なのですから、移民受け入れを誰も不安視しませんでした。
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日本に来るたびに将来を悲観する声をよく耳にします。しかし、日本の教育水準、秩序ある社会、技術力と工業力は申し分なく、世界をリードしています。この点で悲観的になる必要はありません。ただ、少子高齢化と人口減少だけは、危険水域に達しています。
2018年5月、幕末にペリーの黒船が来航した下田を訪れる機会がありました。そこで寂れたシャッター街を通り、日本の人口減少を実感しました。おそらくこうしたことは、日本のあちこちで起きていて、日本の経営者にとって、人手不足は深刻な問題となっているはずです。
ですから、この度の移民受け入れ拡大は、日本にとって大きな一歩です。ただ、移民の受け入れにあたって肝要なのは、流入を賢明に管理することです。
そこで、移民受け入れにあたって犯しがちな過ちのリストをいくつか挙げてみます。これを「日本を愛する一人のフランス人からの提言」と受け取ってもらえたらありがたいです。

寛容な「同化主義」を

率直に言えば、日本は、中国出身者ばかりが増えすぎることを注意して避けるべきです。
フランスでも見られることですが、北京政府は、外国に渡った中国人同胞との絆を維持する政策を明らかに採っています。つまり、求めに応じた中国系移民が、北京政府による他国介入のエージェント役を果たす可能性があるということです。
ただ、これもフランスでは、別に、問題視する必要はありません。まずフランスは中国から地理的に遠いからです。また、フランスに来た中国系移民は、個人主義的なフランスの文化にほぼ完全に「同化」してしまうからです。ところが、日本にとって中国は、地理的に近い大国で、その影響力は無視できません。
私には中国系の友人もいますが、こう申し上げるのは、私が中国人に対して個人的なシンパシーや友情を抱いている事実とは別問題です。
もし私が日本の「移民省大臣」として政策決定責任者であれば、「用心の原則」に則って、中国出身の移民は最小限に留めようとするでしょう。現在の中国があまりにも帝国主義的な政策を採っているからです。
もちろん、日本にいる中国系移民のほとんどは、日本社会にむしろ好感を持っていて、反抗心など抱いてはいないでしょう。しかし、なかにはそうでない人も出てくる可能性がある。ですから、そこは用心するに越したことはありません。

日本は自信を持つべきだ。

一般的には日本人は、外国人に対して寛容です。しかし、外国人を社会に統合していくという点では、今の日本は成功しているとは言い難い。そこだけ見ると、日本は「同化」
と無縁な社会のように見えます。
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日本は、ドイツと同じ「直系家族」(子供のうち1人が跡取りとなり、結婚後も親と同居し遺産を相続する)です。この直系家族は、「(親子間の)権威主義」と「(兄弟間の)不平等主義」という2つの基本的価値を併せ持っています。
このうち「権威主義」という価値は、「1つの秩序のなかに包摂する」という日本社会の同化主義的傾向につながります。他方、「不平等主義」という価値は、移民を「異なる人間」と見なす日本社会の隔離主義的傾向につながります。
問題は、日本の直系家族の「権威主義」より「不平等主義」の価値が前面に出てしまうことです。
ただ、外国人を受け入れるというのは、いわば国家の大改造です。明治維新や戦後改革のような大変革期には、むしろ天皇や官僚システムといった垂直的な「権威」がうまく機能します。
ですから日本の移民受け入れ拡大は、組織的に制御して行うべきです。「放っておけばいい」というフランス的方法では、うまくいかないでしょう。日本は秩序の社会で、決定が上から下される社会ですが、それでいい。「上からの改革」に合った社会だからです。
日本は、明治維新の際、わずかな期間に、西洋の文明に適応し、近代化を実現しました。考えてみれば、日本は古代から、舶来物を吸収し、環境の変化に不断に適応してきた社会です。この適応能力こそ日本文化の真髄ではないでしょうか。
いま日本は、幕末期のような国家的危機に直面していますが、今こそ、そうした本領を発揮すべき時だと思うのです。
移民の受け入れは、日本にとって、「第2の明治維新」といった大変革です。当初は、不安に思う人も多いかもしれません。しかし、その不安から日本の社会が硬直化してはいけません(日本のような直系家族社会の短所の1つは、完璧さを目指して柔軟性を失うことです)。
まず日本は自信を持つことです。日本の文化は、間違いなく、人類史の素晴らしい達成の1つです。実際、日本文化に魅了されて、多くの外国人が日本にやって来ています。
そのようなやって来た外国人が長く定住するようになれば、次第に日本社会に属することを誇りに思い、さらには「日本人になりたい」と思うはずです。
日本は、そのくらいの自信を持った方がいい。自信をもって外国人に寛容に接すれば、必ずや「同化」は成功するはず。私の愛する日本がそういう日本になることを心から願っています。