Race Matters: America in Crisis, A PBS NewsHour Special
「文明の衝突」 現在の主要文明は7個または8個とした
人種の坩堝
文明の衝突
ウィキペディア(Wikipedia) より
『文明の衝突』は、アメリカ合衆国の政治学者サミュエル・P・ハンティントンが1996年に著した国際政治学の著作。原題は『The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order』(文明化の衝突と世界秩序の再創造)。
冷戦が終わった現代世界においては、文明化と文明化との衝突が対立の主要な軸であると述べた。特に文明と文明が接する断層線(フォルト・ライン)での紛争が激化しやすいと指摘した。記事の多くはイスラム圏、ロシアについてであり、他の地域に関してはおまけ程度の扱いである。
●諸文明の世界観
エマニュエル・トッドは家族構造と人口統計にもとづいて世界を認識している。このため『文明の衝突』をまったくの妄想と見なしている。
ただし世界政治における行為者として文明を位置づけているわけではない。文明は文化的なまとまりであって、政治的なまとまりではない。あくまで文明はさまざまな行為主体の政治行動を方向付けるものである。近代世界以後の日本を除く全ての主要文明が2ヵ国以上の国家主体を含んでいる。文明の総数については歴史研究において学説が分裂している。
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『地図とデータで見る移民の世界ハンドブック』
カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行
新世界――移住の地 より
アメリカ、同化か多文化主義か
アメリカに同化した新規移民たちの影響力は、国籍の迅速な取得、労働市場への参入、大量消費のアメリカ式生活様式、1960年代の市民権運動となってあらわれている。その結果、黒人の中流層があらわれて、メディアにも存在感を示すようになり、2008年にはバラク・オバマが大統領に選ばれるまでになった。しかし貧民街に人種や民族がかたまって住むいわゆるゲットー化は、都市暴動や、人種差別への抗議運動(2020年のジョージ・フロイド事件)へとつながっていった。アメリカ国籍を得た移民たちは、民主党も共和党も無視できない勢力をもつ有権者となっている。
同化、「他民族の国家」
アメリカでは、5100万人が外国生まれであり、移民が人口の13パーセントを占めている。おもな出身国は、メキシコ(28パーセント)、インド(5パーセント)、フィリピン(5パーセント)、中国(4パーセント)である。1130万人の移民がアメリカ国籍を取得し、投票権をもって政治にも参加している。とくにメキシコ出身の「チカーノ」は、政治運動を展開するなどしている。
2000年代はじめ、サミュエル・ハンティントンの著書(『分断されるアメリカ――ナショナル・アイデンティティ』)の発表とともに、同化の問題についての関心がふたたび高まり、ネ―ティヴィズムが再燃する。ネ―ティヴィズムは南北戦争(1865年)後に広まった、社会的進化論の影響を受けた思想で、白人はみずからを守るために、白人でない者を差別するという排外主義につながっていった。アメリカ人のアイデンティティについての議論は、同化主義と多文化主義とのあいだでゆれうごいている。
多文化主義
多文化主義は、少数民族や移民をナショナル・アイデンティティの定義に貢献するものとみなしている。国家のなりたちにかんするイメージがいくつかある。最初のイメージは、「メルティングポット(るつぼ)」のイメージである。これは1908年に発表された戯曲のタイトルに由来する。今日では、それを「サラダボウル」のイメージに置き換える人々もいる。サラダボウルのなかでは、それぞれがもとのまま保たれているので、共同体主義を戯画化した表現にもなっている。多文化主義的政策は、1960年代の移民権運動の遺産であり、差別主義や奴隷制の過去を修復して、多様化をはかるために、少数民族を優遇する措置がとられるようになった。
しかしこのような政策がいままた、問いなおされている。差別を是正するために、被差別集団への優遇措置をとる、1996年の「アファーマティブ・アクション」政策は、カリフォルニア州やミシガン州では住民投票により廃止された。2007年には最高裁判所が、人種が学生の多様性を構成するひとつの要素であることことは認めたものの、大学入試にアファーマティブ・アクションは適用されないという判決をくだした。しかし、多様性が強調されつづけたことで、アメリカの「中産階級」神話に反する社会的分裂が、おおい隠されてしまったのかもしれない。根強い人種差別は、アメリカの一部の都市の衰退をまねいている。
多文化主義の見なおし
アメリカが人種融合社会であるという神話は消滅した、という認識が生まれている。サミュエル・ハンティントンの著書、『文明の衝突』(1996年)で、イスラーム教が国内外の新たな敵とみなされ、さらに2011年9月11日の同時多発テロ事件が起こったことにより、移民にかんしても、重要な脅威としてセキュリティーチェックがおこなわれるようになった。イスラーム教を嫌悪する集団も形成された。とはいえアメリカの国勢調査では、宗教を特定することはおこなわれていない。世俗主義的でありながら、社会的にはきわめて宗教的なこの国が、逆に民族についての統計をとっているのは、民主制と共和制に共通する概念によるものである。
経済危機が起こったとき、もっとも大きな影響を受けたのは、白人ではない少数民族であった。訃報滞在者の合法化に反対する、保守派極右の「ティーパーティー運動」と、ラテン系移民とのあいだで、移民論争が激しくなったが、それは移民によって建国されたこの国の歴史的遺産と矛盾するものだった。
2008年には、帰化移民の75パーセントが、バラク・オバマのために投票した。それ以来、民主党政権は、連邦政府のかわりに警察が不法滞在者を取締まることを認めている州に対してたびたび訴訟を起こし国境警備の自警団を自称する人たちと戦った。しかし、ふたたび安全保障政策が重視されるようになると、グリーンカード抽選制度の廃止計画によって、ポスト・レイシャル[人種問題が消滅した状態を仮定した理論上の世界]社会の建設がもくろまれることになる。