じじぃの「歴史・思想_409_日中漂流・中国を縛る神話・大一統」

【“2050年世界一流の軍隊へ” 「米軍並みの軍事力」習近平氏の野望とは・・・】報道1930 まとめ20/12/23放送

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=veBY9lPup9Y&feature=emb_title


報道1930

2020年12月23日 BS-TBS
【キャスター】高畑百合子、松原耕二 【コメンテーター】堤伸輔 【ゲスト】宮本雄二(元・中国大使)、興梠一郎(神田外語大学教授)、松本哲哉(国際医療福祉大学主任教授)
“米軍並みの軍事力“人民解放軍と習政権の狙いは。米の台湾接近けん制か。最大の目標「台湾武力統一準備」

“米軍並みの軍事力“人民解放軍と習政権の狙いは

人民解放軍と習主席の関係は…
人民解放軍について。
1927年、中国共産党緊急会議で毛沢東主席が「政権は銃口から生まれる」と発言。
中国では2012年に習近平国家主席に就任してから反腐敗闘争、大規模な腐敗撲滅キャンペーンを実施。
スローガンは「トラもハエもたたく」。
共産党については全国の党員114万人以上を処分。
人民解放軍に対しては100人以上の軍幹部を摘発し、1万3000人以上の軍人を処分。
軍の制服組トップで江沢民の腹心と言われた郭伯雄(カクハクユウ)は軍の将校を賄賂で昇進させたなどとして逮捕されている。
興梠一郎、「いつも同じパターン。まず政治運動を起こしてカモフラージュで包んで政敵を倒す。毛沢東時代から続くやり方。人民解放軍は個人に忠誠を誓う組織に仕上げたい」
宮本雄二、「党が大きく割れたときにどちらに人民解放軍がつくかが致命的な重要性を持っている」
●習主席が掲げる新100年目標

中国・習近平国家主席の100年目標

2021年 共産党結党100年

2027年 中国軍創設100年「建軍100年奮闘目標」

2049年 中国建国100年
中国の経済成長率(ニッセイ基礎研究所・三尾幸吉郎上席研究員による)、高齢化率(中国/米国。中国国家統計局、国連資料より)を紹介。
興梠一郎、「南シナ海と台湾が1つのキーワード。米国と摩擦がある。軍、国家、党の100年がそろったから彼にとっては3つのトップであるという象徴にもなる」
宮本雄二、「10年が勝負の時。10年の間にできるだけ米国とがっぷり4つに組めるような体制にしておかないと危ないのではないかと。経済成長が2030年から少子高齢化もあり落ちていく。巨大インフラ投資はプロジェクトがなくなる。2027年までに米軍と均衡する軍事力を確保し台湾制圧などいろいろなことを固めておきたい」
習主席・強軍100年目標の野望とは。
宮本雄二、「米中関係が厳しくなり、中国国内では国難きたりと習近平主席のもとに集まろうと。全体としてはナショナリズムが強くなっている。強軍という路線は変えない。急に尖閣諸島で中国が静かになることは当分期待できない」
●緊迫する尖閣 どうする?
ことし6月、沖縄・与那国島の漁師が撮影した中国公船。
米国・バイデン次期大統領との電話会談で尖閣諸島に対する日米安保条約第5条の適用について発言。
きのう菅義偉総理大臣が東京都内で講演し、「従来米国政府首脳に公の場で第5条の尖閣諸島への適用を表明してもらうためには相当な時間をかけた入念な外交努力が行われてきた。初めての電話会談で先方から言及があるとは想定していなかった」と述べた。
宮本雄二、「中国はバイデンとはパイプがあり、尖閣諸島に対する日米安保条約第5条の適用については折り込み済みなのではないか」
https://www.bs-tbs.co.jp/houdou1930/

『日中漂流――グローバル・パワーはどこへ向かうか』

毛里和子/著 岩波新書 2017年発行

中国は「帝国」になるか より

帝国の条件

最後に「帝国たる資格条件」を考えてみよう。要件は藤原や山本有造によれば4つ想定できる(藤原帰一・2002、や山本有造編・2004)。
第1に、世界に「公共財」を提供できるかどうか。
第2に、世界に「文化力」(支配的価値)を提供できるかどうか。
第3に、周縁に自律的国民経済を許さないグローバルな経済力を提供できるか。
第4に、世界秩序のメトロポールたる「帝国」になりたいという欲望をもつか。
「非公式の帝国」だった米国の事例から考えると、まず、公共財の第1は世界に通用する「通貨」であり、国際機構についてのイニシアティブ――主導力であり、世界・地域の安全を支える「安全保障力」である。つまり、ドル・ガバナビリティ・軍事力だ。第二次世界大戦後から米国はこの3つの公共財を地域および時には全世界に提供してきた。第2が、世界や地域秩序、世界の倫理を支えるソフト・パワー、ソフト・ヴァリューである。20世紀末に「冷戦」に代わってグローバリゼーションの時代が始まったと考えると、以来、市場経済と民主主義がそれに当たるだろう。とくに、人権などの「普遍的価値」は「非公式帝国」たる米国のミッションとして世界がほぼ受け入れるところとなった。第3が、グローバルな経済力、基軸通貨ドルと最高度、最広域の市場・資本を提供できるかどうかである。米国は20世紀後半の50年間それらを提供しようとしてきたと言えよう。最後が世界秩序の「帝国」になる意思と欲望をもつかどうか、である。第二次世界大戦の結果、世界の財を集中した米国が半世紀間その意思と欲望をもち続けてきたことは否定できない。

中国を縛る神話

問題は、米国に代わる「帝国」がうまれるのか、中国が新「帝国」の座を目指すのか、手にいれるのか、である。以下に、中国にとって緩やかで寛容な「帝国」の道がありうるかどうかを考えてみよう。

私は、現代中国には、歴史から継承してきた「3つの神話」があり、この神話に呪縛されて「自縄自縛」になるのではないかと考えている。

第1の神話が、主権は唯一絶対、不可侵である、とするもの。
第2の神話が、中国は一体であるとする「大一統」論は無条件に正しい、とするもの。
第3の神話が、必ず政治(すなわち党)が軍をコントロールする、という確信。
主権神話は、19世紀中葉以来の屈辱の歴史が、「一等国」になりことを通じて払拭されれば後景に退くかもしれないし、「失われた台湾」を回復することで克服できるかもしれない。だがいずれも、かなり長い時間を要しよう。中国の歴史を繙けば、帝国の周縁統治は決して一元的ではなかったし、「大一統」は決して現実ではなかったにもかかわらず、「大一統」神話の引力はきわめて強い。
ちなみに、現代中国の民族政策には次の3種のアプローチが想定できる。①「近代版大一統」アプローチ(同化論)、②民族識別・区域自治の3大政策を柱とする限定的な多元主義アプローチ(旧ソ連型)、③連邦主義・国民主義アプローチ(米国型)の3種が想定できるが、そのうち現代中国が現実に採用してきたのは②の限定的多元主義である。
だが21世紀に入ってチベットのラサ暴動(2008年)、ウルムチ騒乱(2009年)への国家の過敏な反応を見ると、むしろ①の同化主義に近くなっている。現に2011~13年にかけて中国の学界では民族政策について論争が起こっており、②の旧ソ連型アプローチは失敗した、第2段階の民族政策、つまり米国型の連邦主義・国民主義に切り替えるべきだという考え方も一部に出てきているなかで、実際の政策は「大一統」の抑圧政策が幅をきかせている。台湾・新疆・チベットは「国家の核心的利益」とされているが、「大一統」の引力はきわめて強いのである。