じじぃの「人の生きざま_614_ダニエル・ガイジュセク(ウィルス学者)」

BSEプリオン (gov-online.go.jp HPより)

ダニエル・C・ガイジュセク コトバンク より
ダニエル・C・ガイジュセク(1923年9月9日 - 2008年12月11日)は米国の小児科医、ウィルス学者。
国立神経病研究所大学教授。1958年から国立衛生研究所教授をつとめる。
ニューギニア高地において食人習慣のあるフォレ族のみに多発する慢性進行性神経疾患のクールー病について研究し、ウィルスが原因であることを発見した。その業績により、1976年度ノーベル医学・生理学賞をブランバーグとともに受賞した。

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『脳はどこまでわかったか』 井原康夫/編 朝日新聞社 2005年発行
不思議なプリオン病 【執筆】金子清 (一部抜粋しています)
一連のニュースで、「プリオン」という言葉を読んだり聞いたりされたことがあるでしょう。Proteinaceous infectious particles からつくられた言葉で、感染症がある特異なたんぱく質のことです。このプリオンによって、主に脳や脊髄など神経系を侵される病気を「プリオン病」と呼びます。「牛海綿状脳症BSE)」や、ヒトの病気である「クロイツフェルト=ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)」が代表として挙げられます。
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英国を中心としたヨーロッパでBSEが発生した理由は、くず肉や骨などからつくる飼料の「肉骨粉」を介した共食いのためです。ウシの肉骨粉というかたちで、ウシがウシを食べるというこの食物連鎖の中に、いったんBSE感染牛由来の産物、とりわけ脳や脊髄といった感染性の強い部分が紛れ込んでしまったら、あとは爆発的に蔓延してしまうからです。
共食いに関しては、ウシのみならず人間にも、かつて同様な状況が存在したことが知られています。
1900年代の前半、パプアニューギニアで「クールー」という病気が流行しましたが、これは、近親者や友人が遺体を食するという食人習慣に由来するとされています。食人は、葬儀の際に個人への敬意と感謝を表現するための宗教的な儀式でしたが、人の遺体も貴重なたんぱく源とみなされていたということもあるでしょう。男性は肉の部分を、女性と子どもは脳などを食べたとされます。たいへん不幸なことに、食された故人の中に自然発症型のCJDが混在し、その脳や脊髄を食べた女性と子どもがつぎつぎに発症したのです。
感染力の強い部分である脳を食べた女性と子どものみが発症し、肉を食べた男性は発症していなかったことからも、感染力の強い部位の摂取とプリオン病発症との因果関係がうかがわれます。
また、食人習慣が止んでから30〜40年たってもCJDが発症したという事実は、今回のBSE由来の変異型CJDが、数十年たってから発症するかもしれないという推察の根拠にもなっています。
プリオン病関連ではノーベル賞受賞者が2人出ていますが、最初の受賞者であるダニエル・ガイジュセクは、この「クールー」が伝播性であることを証明した業績により、1976年、医学・生理学賞を受賞しました。