じじぃの「人の生きざま_710_スタンリー・ベン・プルシナー(生化学者・医師)」

What are Prions? 動画 Dailymotion
https://www.youtube.com/watch?v=J0TyPWdDniU
プリオン ウィキペディアWikipedia)より
プリオン(prion)は、タンパク質から成る感染性因子である。
現時点でこの性質を有する既知因子は、いずれもタンパク質の誤って折りたたまれた(ミスフォールドした)状態を伝達することにより増殖する。
スタンリー・ベン・プルシナー(Stanley Ben Prusiner、M.D.1942年5月28日 - )はアメリカ合衆国の生化学者、医師。プリオンの発見。
【発見】
1982年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のスタンリー・B・プルシナーは、彼のグループが仮説上の存在だった感染性因子の精製に成功し、同因子の主成分が特定のタンパク質一種類であることが判明したと公表した(但し、このタンパク質の単離に満足の行く成功を収めたのは、この公表の2年後である)。
プルシナーはこの感染性因子を「プリオン」(prion)と命名したが、プリオンを構成する特定のタンパク質自体はプリオンタンパク質(Prion Protein, PrP)の名で呼ばれ、感染型と非感染型の両構造を取りうる物質として扱われる。1997年、プルシナーはプリオン研究の業績によりノーベル生理学医学賞を受賞した。
【伝播】
現在、プリオンの正体や一般的性質はよく理解されているが、プリオンの感染・伝播のメカニズムは未だに謎に包まれたままである。よく言われる仮説は、異常型のプリオンタンパク質が正常型のプリオンタンパク質と直接相互作用して、正常型の構造を異常型に変換するというものである。
現在の研究によれば、哺乳類におけるプリオン感染の主要経路では経口摂取である。堆積したプリオンは、動物の死骸から尿や唾液などの体液を介して土壌に流出し、粘土やその他の無機物と結合するのではないかと考えられている。
プリオンが血液感染するかどうかは、2014年7月現在、判明していない。日本では、狂牛病汚染地域からの帰国者の献血を事前問診で厳しく確認しており、すべての献血者が正直に行動しているならば、献血経由の血液感染の心配はない。

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『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』 立花隆/著 文春文庫 2003年発行
死の病原体、ゴダール、モスクワのソクラテス (一部抜粋しています)
1987年、イギリスの狂牛病が流行しはじめたとき、脳に穴が開いてスポンジ状になってしまうという病態の恐ろしさに驚くとともに、その病原体がプリオン感染症タンパク質の意味)と呼ばれるタンパク質らしいと報道にさらに驚いた。タンパク質が病原体になって感染する病気があるなんて聞いたことがなかったからだ。
しかもこの病原体、驚くほど強い。ホルマリンにつけておいても死なない。30分間煮沸しても死なない。2ヵ月間冷凍しておいても死なない。2年間乾燥状態においても死なない。強い紫外線をあてても死なない。
さらに驚くべきことに免疫反応がない。免疫反応がないから、肉体の防衛機構が働かない。潜伏期間が長いが、発病したらほとんど確実に死ぬ。まず小脳がやられて、肉体のバランスがとれなくなり、全身にふるえがきて、立っていられなくなる。あらゆる肉体の活動の調和がとれなくなる。やがて、大脳がやられ、痴呆状態になり、悲惨な死を迎える。
リチャード・ローズ『死のプリオン』(草思社)は、この不思議な病原体の謎ときの記録だ。
実は、狂牛病と似た病気が、これまでも、世界のあちこちで、さまざまな動物に起きていた。
ニューギニアの食人族の間に流行していた「クールー」。18世紀ごろからヨーロッパの羊の間でときどき流行した「スクレイピー」。20世紀のはじめにドイツで発見された人間の奇病「クロイツフェルト・ヤコブ病」。家畜として飼育されていたミンクの間に起きる「感染性ミンク脳症」。いずれも症状がほとんど同じで、死後解剖してみると、脳がスポンジ状になっていた。
はじめ無関係と思われていた病気が、やがて基本的に同じ病気であることがわかってくる。沢山の動物を使った感染実験によって、ちがうと思われていた病気が同じであることが証明されていく。そして、あらゆる物理的、化学的攻撃に耐えて毒性を維持するその病原体が、タンパク質分解酵素を与えると、たちまちその感染力を失ってしまうところから、これはタンパク質そのものなのではないのかということになってくる。
というと、難病奇病の病原体発見物語、克服物語と思われるかもしれないが、話はそんな単純なものではない。
すでにこれらの病気をめぐって、ノーベル賞受賞者が2人も出ている(1976年、ガイデュシェック「感染症の発生と伝染に関する新しいメカニズムの発見」。1997年、プルシナープリオンの発見」)というのに、実はまだまだ謎が多く、かつ深く、この病気はよくわからないところがあるのである。そもそも、プリオンの毒性がどこから生ずるのかがよくわからない。プリオンにも正常(毒性なし)なものと異常(毒性あり)なものがあり、正常なものはみんな体内に持っているらしい。しかし、それが何のためにあるかがわからない。その遺伝子をつぶして、プリオンが産生されないようにしても、何事も起きない。