じじぃの「人の死にざま_1550_ウィリアム・ドナルド・ハミルトン(進化生物学者)

Apis Mellifera 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ZtmPt0_v4IE

ウィリアム・ドナルド・ハミルトン ウィキペディアWikipedia)より
ウィリアム・ドナルド・”ビル”・ハミルトン(William Donald "Bill" Hamilton, 1936年8月1日 - 2000年3月7日)は、イギリスの進化生物学者、理論生物学者
血縁選択説と包括適応度を提唱し、ダーウィン以来の難問であった生物の利他的行動を進化の観点から理解する道を拓いた。近親交配性の狩りバチなどに見られる異常な性比を説明する局所的配偶競争や、進化ゲーム理論のさきがけとなる「打ち負かされない戦略」を提唱した。

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『面白くて眠れなくなる進化論』 長谷川英祐/著 PHP研究所 2015年発行
「説明できる」とはどういうことか? (一部抜粋しています)
ダーウィンは「自然選択説」を唱えました。また、メンデルの「遺伝法則」や「当然変異」の発見がありました。そして、遺伝子であるDNAに起きた変化が「自然選択」によって適応をもたらす、という「総合説」ができあがりました。また、「遺伝的浮動」も含めて、進化は遺伝子頻度の変動として記述・解析できるという認識が広がってきたことも示しました。
以上の認識に基づいて、「集団の中の遺伝子頻度がどのように変化するか」を考える学問が「集団遺伝子」と呼ばれる分野です。たしかに、複雑な進化の力学を遺伝子頻度の変動というただひとつの尺度で理解することができるので、学問的には便利です。ドーキンスの布教活動もあり、「進化を遺伝子頻度の変化として捉える」という見方は、現在の進化学でも一般的なものになりました。
しかし、生物の示す生態現象を理解するという立場からは、「遺伝子頻度の変動」を進化に還元することには問題があるケースもあるのです。
私の専門の1つは、ハチやアリのような社会を構成する生物の行動ですが、ある問題に関して大きな論争が起こっています。
ハチやアリは、女王だけが子どもを産み、ワーカーは子どもを産まずに働きます。ワーカーは、女王と血縁関係にあることから、子を産まずに女王を助けるというワーカーの行動を発現させる遺伝子が、女王を経由して次世代に伝わることにより進化するのだと解釈されてきました。
もちろん、女王とワーカーが協力した場合、「女王を通して次世代に伝わるワーカーの遺伝子量」は、自分で子どもを産むのを止めることで減った分を補ってあまりある(単独でやるより社会を作るほうが有利になる)ことから進化するのです。
この考え方を「血縁選択」と呼びます。
「血縁選択」を最初に考えたハミルトンはこれを定型化するために、他人のために尽くす個体の遺伝子伝達量(=適応度)を記述する場合、自分が残した遺伝子量に加えて、自分が助けた相手由来の遺伝子量を考えなければあらないと説きました。
自分が助けた相手の分を考えた適応度を「包括適応度」と呼びます。相手経由での適応度(間接適応度)の値を考えるためには、相手が残した遺伝子の数を、相手とどのくらいの血縁の近さがあったかで割り引いて考えなければなりません。
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したがって、「血縁選択」を考えると、自分が子どもを産まなくなるという社会性の進化を自然選択の枠組みの中で理解することができます。ドーキンスが提唱した遺伝子ベースの考え方を先取りしていたと言えるでしょう。
しかし最近では、ワーカーと女王という複雑な相互作用を考えなくても、集団の中での社会性の遺伝子の頻度を親と子の世代で比較すれば進化の方向はわかります。