じじぃの「歴史・思想_474_腸と脳・不健康な記憶」

Lactic Acid Bacteria Preparation & Usage_DoAG&Digital Green_Kadapa_June-2016

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=W7gMYTPx5x0

FIGURE 1

Lactic Acid Bacteria and Bifidobacteria with Potential to Design Natural Biofunctional Health-Promoting Dairy Foods

18 May 2017 Microbiology
FIGURE 1. Beneficial effects resulting from the consumption of biofunctional fermented dairy foods.
Lactic acid bacteria participating in milk fermentation in situ release and naturally enrich the fermented dairy product with a broad range of bioactive metabolites. Subsequent ingestion of this product can exert important health-promoting activities on the consumer, such as anti-hypertensive, and anti-diabetic, immune-modulatory, anti-cholesterolemic or microbiome modulation.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2017.00846/full

腸と脳―体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか 紀伊國屋書店

エムラン・メイヤー/著 高橋洋/訳
腸と脳のつながりを研究し続けてきた第一人者が、腸と腸内の微生物と脳が交わす緊密な情報のやりとりが心身に及ぼす影響や、腸内環境の異変と疾病の関係などについての最新知見をわかりやすく解説する。
健康のための食事や生活についての実用的アドバイスも必読。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011570

『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』

エムラン・メイヤー/著、高橋洋/訳 紀伊國屋書店 2018年発行

第5章 不健康な記憶 より

数年前、ジェニファーという35歳の女性が診察室を訪れ「これまでずっと腹痛を抱えて生きてきましたが、最近になってさらにひどくなったのです」という相談を持ちかけてきた。どのような腹痛かを知るために、あたしは彼女に便通について尋ねてみた。回答によれば、1日中トイレに駆け込まなければならない日もあれば、数日間便秘になることもあり、下痢の日には腹痛がひどくなるが、トイレに行くと痛みが一時的に収まるとのことだった。また面談を続けるうちに、彼女は10代前半のころから、パニック発作をともなう不安障害を抱え、周期的に抑うつを経験していることがわかった。ジェニファーは、私の他にも2人の胃腸病専門医と精神科医を含む数人の医師に相談し、消化管の上部と下位の内視鏡検査、腹部のCTスキャンなど、いくつかの標準的な検査を受けていたが、何も異常は見つからなかった。彼女はこう述べる。「最近診てもらった2人の医師には、特に問題になる異常はないといわれました。まるで、私の思い過ごしにすぎないとでもいいたそうでした」
ジェニファーを診察した医師たちは、抗うつ薬のセレクサや胃酸抑制剤のプリロセックなど、脳腸相関が関与する原因不明の症状によく用いられる薬を処方した。だがそれとともに、「それ以上の医学的処置はない」「症状と折り合って暮らしていくすべを身につかねければならない」と彼女に告げていた。「医療に対する信頼をまったく失いました」と彼女はいう。

幼年期のストレスと過敏な腸

ラットが子どもの脳が養育のちがいによっていかに変化するのかを報告する。最初の研究成果が刊行されてまもないころ、私は、アメリカ各地から生物学的精神医学の研究者を集めて行われた。米国神経精神薬理事学会の主催する会議に招待され、ストレスのメカニズムについて論じる小規模なシンポジウムに参加した。そこで私は、エモリ―大学のポール・プロツキーと初めて出会った。母親ラットが受けたストレスが、子どもの生物学的特徴や行動にもたらす変化について論じる彼の講演を聴いていたとき、慢性胃腸薬疾患を抱える私の患者にも彼の意見が当てはまるのではないか、そしてその知見を治療にうまく活かせるのではないかという思いが、顔をよぎった。
    ・
こうしてわれわれは、言葉や情動や腕力による虐待、放置、親の重病や死、両親の離婚やその他の家庭問題を18歳になるまで経験した。100人の成人健常者の脳画像を取得した。それを参照することによって、意外にも、不安、抑うつ、消化管障害などの症状をまったく呈していない健常者にさえ、脳の構造に加え、周囲の危険や身体刺激の意味を評価する役割を果たす脳のネットワークの神経活動に、変化が見られることがわかった。このいわゆるサリエンス・システム(何に意識を注意すべきかを決める脳のシステム)は、状況を評価して良い結果や悪い結果を予測する際にも、さらには直感的な判断を下す際にも重要な働きを担う。この発見は、いくつかの観点において注目に値する。われわれは、脳が、幼年期に経験した逆境に反応して再配線され、その変化が一生持続しうることを初めて示した。しかもまったく健康な被験者に見出されているので、必ずしも特定の健康問題をともなうわけではないことがわかった。確かにそのような人は、心配や不安を抱えがちであったり、危険を回避しようとする傾向が強かったりするのかもしれないが、ジェニファーのように消化管障害を発症したりはしない。サリエンス・システムの変化は、ストレスに敏感に反応する。IBS過敏性腸症候群)などの障害を発症する危険性を高めるのだろうか? われわれの研究が示すところでは、IBS患者には、食物の摂取に応じて消化管から送られてくる正常なシグナルや、心理的なストレスに対する過剰反応を導く主要因の1つである。脳のネットワークの変化が見られる。

脳腸相関の障害に対処する新たなセラピー

子どもがまだ子宮内にいる時点から、母親が経験するストレスのレベルによって。ストレス、腸疾患、不安障害、うつ病に対する子どもの脆弱性が変ることを見てきた。この初期プログラミングは、母親の振る舞いによってのみ変わるのではない。子どもの健康への大きな脅威になるいかなるできごとも、一連の障害に対する脆弱性を高める可能性がある。
ジェニファーの抱える健康問題の起源は、この知見に基づいて理解することができる。彼女がまだ母親の胎内にいたころ、母方の祖母が乳がんになり、それを知った母親が悲嘆にくれて激しい不安にかられたことを思い出してほしい。安定した養育環境が必要な幼年期には両親のけんかが絶えず、ジェニファーが8歳のときに両親は離婚している。幼年期に受けたストレスについてストレスについて報告するIBS患者は多いが、ジェニファーもつねにストレスを感じていた。それによって、成人後に不安障害、抑うつIBSを発症する可能性が高まったと考えられる。母親と祖母がジェニファーと類似のストレス障害を抱えていたという事実は、遺伝やエピジェネティクスのメカニズムを介して、ストレス障害に対する彼女自身の脆弱性が高まっていたことを示唆する。
最近私は、不安障害やIBSなどのストレスに起因する慢性的な症状を抱える、ジェニファーのような患者を診察する際には、本章で取り上げた、脳腸相関についての最新の知識に基づいて、「胃腸の症状も、不安障害やうつ病も、その症状の進行には、ほぼまちがいなく幼年期の経験が関係しています」と助言している。そして症状の生物学者な要因を説明し、他の医師がいうように症状が「気持ちの問題にすぎない」のではないことを理解してもらえようにしている。ジェニファーは、いくぶん意気消沈して、私に次のように聴いてきた。「でも、幼年期にすべてが配線されてしまっているのなら、しかも家族歴から考えて私がこういう症状を抱える可能性が高いのなら、一生この状況と折り合って生きていかねばならないのでしょうか?」この問いかけに対して私は、「確かに、あなたの脳腸相関はすでに配線されています。しかし、人間の脳には前頭前皮質と呼ばれるすばらしい領域があります。この領域は、変わってしまった脳神経回路の働きをくつがえし、新たな行動を結ぶ能力を与えてくれます」と応答した。
    ・
私はまた、脳腸相関の変化におけるマイクロバイオ―タ(ある環境中の微生物)の役割に関する新たな科学的知見に基づいて、プロバイオティクス(腸内で有益に働く微生物やそれらを利用した食品素材や製品)錠剤の摂取量を増やすようジェニファーに助言した。

発酵食品、ヨーグルト、プロバイオティクス錠剤の摂取によって体内に取り込まれる乳酸菌やビフィズス菌などの有益な微生物は、腸内微生物で構成される生態系の多様性を高める。また私は、発酵食品に含まれる自然なプロバイオティクスに加え、臨床試験によって有効性が実証された、数種類のプロバイオティクスの摂取を推奨している。

    ・
ジェニファーのような患者は、ある意味で若いころのストレス環境に完全に適応し、腸や脳、あるいは腸内微生物でさえ、危険に対処するためにさまざまな様態でプログラミングされてきたのである。
この事実がもっと多くの医師に知られれば、彼らは、IBSや、その他のストレス障害を抱える患者をもてあますのではなく手助けできるはずだ。また患者のほうでも、適切な治療をすばやく見つけて、心の平安を取り戻せるだろう。

じじぃの「擬態・タコの二足歩行!タコは海のスーパーインテリジェンス」

Octopus walks along ocean floor carrying coconut

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=pvzOAnfzR90

Octopus walks along ocean floor

This Octopus Walking Like A Human Nearly Caused Scientist To Drown From Laughing

What you can see below is an octopus that walks almost like a human and acts like a hermit crab. This guy found a coconut shell and found a way to use it as a mobile shelter. I guess you can now add that to their growing list of skills. I knew mobile biologists had awesome jobs, but I never knew it was this hilarious.
http://www.dailyliked.net/octopus-carries-coconut/

『タコは海のスーパーインテリジェンス 海底の賢者が見せる驚異の知性』

池田譲/著 DOJIN選書 2020年発行

タコが認識する世界より

二足歩行

骨がないのに骨があるような動きをするタコの腕の例を、もう1つ紹介しよう。それは「歩行」である。歩くという行為は、さまざまな動物に見られるが、2本の足で歩く二足歩行は私たちヒトに特有なものだ。系統的にヒトに近いサルやチンパンジーも時に二足で歩くが、継続的なものはなく、基本的には二本の腕も合わせた四足歩行が彼らの歩行だ。同じことはイヌやネコにも見られる。
    ・
この二足歩行がタコでも見られる。発見したのは、当時、カリフォルニア大学バークレー校(米国)の大学院生だったクリティン・ハッファード博士と共同研究者だ。ハッファード博士はインドネシアに生息するウデナガカクレダコの生態を潜水観察していた。そのとき、目の前をスタスタと歩くいていくウデナガカクレダコに遭遇した。それは、胴体がボールのように丸くなり、8本ある腕のうちの2本をまるでヒトの足のように交互に出して移動するというものだった。見ようによっては、裃(かみしも)をつけた侍が松の廊下を歩いていくような感じだ。
ハッファード博士はその様子をビデオで撮影して解析し、2005年に『サイエンス』誌に発表した。どことなくユーモラスな動きということもあり、このタコの歩行はとても話題になった。ハッファード博士はこの運動をバイペダルウォーキング、すなわち二足歩行と名付けた。ここでもタコは、腕の決まった箇所を曲げて歩いている。関節がないのにあたかもそれがあるかのように、だ。

                      • -

どうでもいい、じじぃの日記。
タコが岩場や海草に棲みついているが、自ら体を周りの岩場や海草の色や形に変化させているのだそうだ。
擬態として、蛾の一種に枯葉に擬態するのが有名だが、タコも擬態能力を持っているのだそうだ。
動画にタコが大きな貝殻のようなものを抱えて「二足歩行」するのがあった。
このタコたち、約1年しか生きられないのだとか。
考えてみれば、不思議な生き物です。

じじぃの「歴史・思想_473_腸と脳・微生物の言語」

THE GUT MICROBIOME AND THE BRAIN

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=mToHUKRsxhg

How your gut might modify your mind

How your gut might modify your mind

APRIL 8, 2019 c&en
The microbes that live in your body might be influencing your behavior. Researchers want to know what they’re saying to your brain and how
https://cen.acs.org/biological-chemistry/microbiome/gut-might-modify-mind/97/i14

腸と脳―体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか 紀伊國屋書店

エムラン・メイヤー/著 高橋洋/訳
腸と脳のつながりを研究し続けてきた第一人者が、腸と腸内の微生物と脳が交わす緊密な情報のやりとりが心身に及ぼす影響や、腸内環境の異変と疾病の関係などについての最新知見をわかりやすく解説する。
健康のための食事や生活についての実用的アドバイスも必読。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011570

『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』

エムラン・メイヤー/著、高橋洋/訳 紀伊國屋書店 2018年発行

第4章 微生物の言語 より

幼年期における浣腸の負の効果

ダリアは執拗な便秘のために診察を受けに来たのだが、問題は便秘にとどまらず、他にも全身の慢性疼痛、疲労、偏頭痛などの症状が現れていた。また面談から、彼女はつねに抑うつ状態にあり、その原因が胃腸にあると考えていることが明らかになった。彼女の話では、便秘は、母親が定期的に彼女に浣腸をしていた子どものころにさかのぼるようだ。ちなみに当時は、日々の便通を確保するために、母親が子どもに浣腸することがよくあった。
遺憾ながら、ダリアは日々の便通を確保するために毎日浣腸をし、週に一度結腸洗浄(結腸上部に湯水を注入する浣腸)を施さなければならなかった。毎日浣腸をしていないと、何週間も自然な便通が起こらないことがあったのだ。彼女は、自分の結腸が「死んで」いるために内容物を動かすことができず、浣腸で毎日便通を誘導しなければ、耐え難い不快感を覚えると主張した。これらの事実は、便秘による不快感に対する恐れと結びつき、絶対に浣腸をやめられないという強い信念を生んでいたのである。
ダリアはそれまでに数々の治療を受けていたが、いずれも効果がなく、薬でうつ症状を抑えても、便秘は一時的にしか緩和しなかった。どうやら未知のメカニズムが、腸と脳のコミュニケーションを阻害する方向へと引き戻しているらしかった。私は一連の検査を受けるような彼女に指示したが、その結果からは便秘の原因はまったくわからなかった。結腸通過検査と呼ばれる特殊なテストで、消化後の食物の残滓が結腸を通過する時間はまったく正常だとわかったのだが、もっとも注目すべき結果だった。
ダリアはまた、不安、抑うつ疲労、慢性疼痛などの諸症状が、消化管における有毒な老廃物の発行によって生じているのだと、また、それを廃棄できないために、全般的な健康が蝕まれているのだと確信していた。彼女のような、さまざまな症状を抱え、奇怪に聞こえる訴えを起こす患者を前にした医師は、結腸な内視鏡検査を行なって最新の下剤を処方し、精神科医を紹介するのが関の山だ。今日では、そのような扱いは、症状の基盤をなす重要な生物学的要因を無視していると見なされるだろう。子どものころにダリアが受けていた浣腸は、幼年期における腸内微生物の正常な構成の発達を妨げ、腸内微生物と神経系のコミュニケーションの様態を長期にわたって変えていたことが大いに考えられる。腸内微生物のいかなる変化が、それらの症状を引き起こすのかについて現在のところ正確にはわかっていないが、彼女の症例は、健康なマイクロバイオ―ム(微生物叢)の発達の阻害が、消化管と脳のコミュニケーションの生涯にわたる障害とともに、精神症状を発現するリスクをもたらす可能性を示唆する。

微生物語と体内インターネット

腸内微生物は、私たちの消化管、免疫系、腸管神経系、そして脳とつねに会話を続けている。どんな協力関係にも当てはまるが、健全なコミュニケーションが肝要である。最近の研究によれば、この会話が攪乱されると、炎症性腸疾患、抗生物質による下痢、肥満、およびそれによる有害な症状など、消化管疾患が引き起こされうる。また、うつ病アルツハイマー病、自閉症などの重度の脳障害の発症を促す可能性も考えられる。
腸と脳のコミュニケーションは、特定の分子が炎症シグナルとして脳と転落を取る方式、ホルモンのように血流を伝わる方式、神経シグナルの形態で脳に達する方式など、伝送方式が異なるいくつかの並列的な「伝送経路(チャンネル)」に沿って生じる。これから見るように、おのおののチャンネルに沿うコミュニケーションは孤立して生じるのではなく、チャンネル間でさまざまな混線が起こる。腸内微生物は脳の会話に、脳は腸内微生物の会話に聞き入る。また、腸内微生物が脳とのコミュニケーションに用いている生物学的なチャンネルを介した情報の流れは、きわめて動的である。
このシステムが捉える情報量は、腸の表面を覆う薄い粘液層の厚さと、総合度、腸壁の浸透性(漏れやすさ)、血液脳関門の状態に強く依存する。通常この関門は比較的堅固で、腸内微生物から脳への情報は制限される。しかし、ストレス、炎症、高脂肪食、ある種の食品添加物は、体内の関門を漏れやすくすることがある。
    ・
腸の免疫系は、いかなる形態で微生物を検知しようとも、サイトカイン(主にタンパク質からできており、細胞から生産・分泌される物質。細胞同士の情報を伝達し、免疫細胞を活性化させたり抑制したりするはたらきを持っており、免疫機能のバランスを保つための重要な役割を担っている)と呼ばれる分子を生成することでそれに反応する。炎症性腸疾患、急性胃腸炎などに見られるように、特定の条件下では、サイトカインは腸内で本格的な炎症を引き起こす。のみならず、ひとたび腸内でサイトカインが生成されると、そのシグナルは脳に達することがある。たとえばサイトカインは、腸と脳を結ぶ情報ハイウェイたる迷走神経の感覚神経[迷走神経には求心路と遠心路があるが、そのうちの求心路を刺す]終末に備わるレセプターに結合して脳の枢要な領域に長距離メッセージを送り、エネルギーレベルの低下、疲労感や痛覚感受性の高まり、さらには抑うつさえ引き起こす。また軽度の炎症を起こしても、満腹を示すシグナルに対する迷走神経終末の感受性が低下し、食物の過剰な摂取を控えさせるメカニズムが損なわれる。脂肪分を取りすぎている患者には、このメカニズムの阻害は問題になりやすい。
サイトカインは、ホルモンのように血流に入って脳に達し、血液脳関門を横切って、ミクログリア細胞と呼ばれる脳内の免疫細胞を活性化させるケースもある。脳内の細胞の大多数はサイトカインに反応するミクログリア細胞であるため、脳はこの経路を通じて、腸と微生物と免疫系で構成されるシグナルメカニズムの標的になるのだ。さらにいえば、腸から脳へと送られる。その種の長距離免疫シグナルは、アルツハイマー病などの神経変性疾患の発症に関与すると考えられている。
微生物は免疫系との複雑な精巧なコミュニケーションに加え、免疫系を介する方法より劇的ではないとしても等しく重要な、代謝物質を介する方法を用いて脳と連絡をとる。腸内微生物は多様で、その数も多い。腸内には、ヒトの遺伝子1個につき360個の微生物の遺伝子が存在する。また腸内微生物は、人体には消化不能な物質の消化が可能で、その活動を通して数十万種類の代謝部物質が産出される。しかもその多くは、私たちの消化器系によっては生成されない。微生物が産生した代謝物質の多くは血流に入り、そこで循環するあらゆる分子のほぼ40パーセントを占める。その多くは神経刺激性の物質と考えられており、神経系と交換し合うことができる。このような代謝物質には、大腸で吸収されて血流に入るものもある。なお腸が漏れやすいほど、それだけ大量の代謝物質が血流に入る。このように血液循環に乗った代謝物質はホルモン同様、脳を含むさまざまな身体組織に達する。
微生物の代謝物質が脳にシグナルを伝えるもう1つの重要な方法は、腸壁に存在する、セロトニンを含む腸クロム親和性細胞を介したものである。

体内における無数の会話

マイクロバイオ―タ(ある環境中の微生物)の役目で興味深いのは、この微生物のかたまりが、内臓反応と内臓刺激を分かつ境界(インターフェイス)の位置を占めている事実である。内容物の有無、またそれがある場合には食物の種類に応じて、腸管神経系は消化管内の環境を変え、消化液の酸性度、流動性、分泌量や、消化管の機械的な収縮を調節することで消化を管理する。
    ・
20世紀を通じて科学者たちは、微生物という私たちのパートナーを観察できなかった。というのも、そのほとんどは実験室で培養できなかったからだ。また、微生物の種を同定する自動化された遺伝子配列決定技術と、微生物に関する膨大なデータを処理するスーパーコンピューターが登場するまでは、腸内に宿る微生物の種類や、微生物が総体として持つ遺伝子、さらには微生物が生成する代謝物質を確定するための、徹底的な調査ができなかった。だから当時の科学者は、「脳ー腸ーマイクロバイオ―ム」相関を構成するさまざまなメンバーが、いかに連絡を取り合っているのかに関して、限られた知識しか持っていなかった。
現在では、腸内微生物は、ある1つの特権的な役割を担っているだけではないことが判明している。マイクロバイオ―ムの著名な研究者でスタンフォード大学に所属するデイヴィッド・レルマンは、「ヒトマイクロバイオ―タは、人間の基本的な構成要素の1つである」と述べている。

腸内微生物は、体内に取り込まれた食物の大部分の消化を助けてくれるという、私たちにとって不可欠な貢献をしているのに加え、食欲をコントロールする脳のシステムや情動操作システム、私たちの行動、さらには心にすら、まったく意外な影響を及ぼしていることがわかってきた。私たちの消化器系に宿る目に見えない生物たちは、感情、直感的判断、さらには脳の発達や老化に関しても、一家言あるのだ。

じじぃの「中国全人代を徹底検証・経済&対米政策・習主席の狙いと実情は!プライムニュース」

中国全人代を徹底検証 経済&香港&対米政策 習主席の狙いと実情は 【後編】

動画 fnn.jp
https://www.fnn.jp/articles/-/155302

習近平政権の“外交戦略”は

プライムニュース 「中国全人代を徹底検証 経済&香港&対米政策 習主席の狙いと実情は」

2021年3月12日 BSフジ
【キャスター】長野美郷、反町理 【ゲスト】宮本雄二(元駐中国大使)、興梠一郎(神田外語大学教授)、杜進(拓殖大学国際学部教)
中国の国会「全人代」が、1週間の日程を終えて閉幕。世界に先駆けた“コロナ禍”からの脱却を誇示するかのように、経済目標「6%成長」を掲げた。GDP規模でアメリカに肉薄する勢いを加速する一方、香港に対する“新たな選挙制度”を導入するなど、国際社会の懸念に関しては意に介さない姿勢を貫いている。
国の内外に強硬政策を打ち出す習近平政権は、どのような戦略と展望を描いているのか。外からは見えにくい内情に“危うさ”は無いのか。
習近平政権の“国家戦略”は
中国・全人代全国人民代表大会)が7日間の日程を終え、3月11日閉幕。
全人代は毎年の政策方針、予算、法改正を審議する“中国の国会”。
全国の省や市の代表者と軍関係者ら約3000人が参加。
基本政策は党執行部により昨年10月に決定済。
経済界TOPも集まり中期的な方針を周知。
宮本雄二、「前の年に党が基本方針を打ち出しているので、そこに対しては挑戦できない。日頃、住民が困っている問題や農村の人たちが困っている問題については全人代の委員がその場で発言して、それに対して政府がどうするか答える義務がある。大きな方針に関しては党が決めたことをそのままやるということ。中国共産党規約には、中国共産党の中で物事をやる時には中国式根回しをやらないといけないと書いてある」
興梠一郎、「組織法を今回改定した。もともと総則がなかったが、そこに『中国共産党の指導を堅持』と入れた。習近平思想を指導として全人代を運営すると書き込んだ。憲法では全人代は国家の最高機関となっているが、これだと共産党が国家の最高機関の上に行くということ。習近平は中国化政策を打ち出してきた。少数民族、宗教の中国化だ。最終的には中華民族思想に統一化することを目指している」

反町理、「全人代は国家の最高機関であるといいながら、共産党全人代の上にあるというのはおかしいのではないか」

興梠一郎、「香港の選挙制度の改定のやり方もそっくり。本当は香港の議会で議論しないといけないが、今回は全人代の決定を香港に下して、香港が後でやる」
習近平政権の“国家戦略”・香港めぐる法改正の狙い
今回の全人代では世界から注目されている香港問題についても新たな動きが見られた。
去年6月に施行された「香港国家安全維持法」に続き、今回の全人代では「選挙制度改正案」が承認された。
全人代議員らの「選挙委員会」が行政長官と議員を事実上選出する仕組みとなり、李克強首相は改正について「愛国者による香港の統治を堅持し、一国二制度を安定的に維持する」と説明。
宮本雄二、「数年前から香港が不安定化して、香港当局が完全になす術がないということで漂い始めた。あれに中国・北京は大変な危機感を持った。中国当局は今、管理することしか考えていない。いかに上手に管理して社会を安定化するか。一国二制度香港人による香港人の統治、高度な自治をやると彼らは言っている。これをやるためには香港に住んでいる人たちの観点が必要不可欠。今日に至るまでそれが見えていない。全部上からいかに管理するかということで決められている。中英共同声明で英国に対する国際約束だが、中身に修正を加えつつあるのは間違いない。国際社会からは強い反発が出る。中国は最後まで突き進むと思う」
香港の選挙制度改正について。
杜進、「今回の選挙制度の改正は香港の情勢が不安定化して、何年も前から中国政府は考えてきた。政治制度の中でも政府がいて行政府、法による支配、政府の説明責任。今回の改正は基本的に政府の説明責任のところ。他のところで法による支配、行政の独立性が全然動いていない。金融については香港ドル、香港の制度、全然違うことをやる。そういった意味では限定的と考えるべき」
●経済成長の実態とリスク

李克強首相・全人代“政治活動報告”(要旨抜粋)経済政策の方針

・今年の経済成長率目標名目GDP6%以上
・外需依存から内需主導へ双循環実現
・民間と外資の参入で国有企業改革推進など
杜進、「報告の中でも雇用が最初に出てきた。環境、社会保障など様々な問題があって成長のみということではない。目標値を設定したほうが調整しやすいということで6%以上と言う結果になったと思う。いちばん重要なのはおそらく雇用」
宮本雄二、「コロナ対策の頃から眺めているが、李克強首相はよく見てよく状況を分析してそれに対する対応策を打ち出している。国務院で経済を実際に管理しているのは李克強首相という印象を強く持った。地に足のついたしっかりした経済政策をやってきていると思う。今回の全人代の報告を見ても記者会見を見てもそこは変わりない」
6%という数字、双循環という言葉について。
興梠一郎、「中国国内での色々な専門家の議論で李克強首相の出している数字とぜんぜん違う。具体的には北京大学の教授は失業率は20%だといっている。新華社が出している雑誌では100万ぐらい店が潰れていると書いている。人民大学の研究員は統計局が出しているGDPは5%だと発表しているが実質は1.67%だといっている。このことはユーチューブで流れたが、おしかりを受けてその後情報は消えてしまった。報告書に出ている数字は全くどうなのか。失業、財政難、高齢化の構造的な問題。研究者たちの発言の方が遥かに正直だ。構造的に公共事業で経済を回すのがもう難しくなってきている」
習近平政権の“外交戦略”は
王毅外相・全人代“外交方針会見”(要旨抜粋)対米、対欧、対日。
宮本雄二、「私からすると相当抑えた記者会見をやったなと。中国指導部として米国との関係改善に努めたいと伝わってくる。習近平就任以来やってきた対外政策、国防政策が今日の米国と中国の対立関係の根本にある。それに手をつける気配はない。中国の理性的認識というのは、私から言わせると中国の主観的認識になる。国内で正しいと思われることを対外発信すれば今みたいなことに全部なっていく。王毅外相も日本を離れて長い。今の日本のことをあまり知らないと思う。そのことでこうした発言につながっている面もある。後は国内への配慮」
反町理、「王毅外相が日本に理性的な行動を求めると言っていることをどう思うか」
宮本雄二、「尖閣などを含めて日本は右傾化しているのではないかと言っている。彼の考えは中国の立場だけでしか発言していない」
興梠一郎、「王毅外相の会見内容は支離滅裂で矛盾している。ポイントは習近平国家主席が“日本のメディアに問題がある”と発言したことがある。王毅外相は習近平国家主席の顔色を見て話している。今は強気に出たほうが国内的に有利」

【提言】 「これからの中国との向き合い」

宮本雄二 「戦略的、能動的に」
 日本が「クアッド」の一員として行動すれば、中国に対する圧力になるだろう。
杜進 「建設的な競争」
 お互いの競争が国の発展につながる。
興梠一郎 「物極必反」
 中国は極端な方向に行っている。習近平の言うことに日本は振り回されている。いろいろな国と関係を深めていく。習近平のことをあまり気にしない。
習近平政権について聞きたい事、言いたい事
視聴者からの質問、メッセージ。
質問者、「香港の再編はあと20数年待てば堂々と実行できたはず、なぜ今のタイミングで国際世論の反発を買ってまで強行したのか」
宮本雄二、「習近平政権は盤石でコントロール出来ているというのが外から見たイメージだが実、実際はそうではないと思う。国内が脆弱だから一生懸命管理しようとする。習近平政権が管理しなくてはいけないということで香港があの事態」
質問者、「習近平国家主席は軍出身でもなく過去の指導者と比べても実績やカリスマ性で見劣りする。何が一強独裁を支えているのか」

興梠一郎、「自信がないので最初恐怖によって王岐山(国家副主席)と組んで派閥を潰し、憲法改正して制度化していっている。対外的に適度な緊張感、カリスマを人工的に作っているが本当のカリスマではない」

https://www.fnn.jp/subcategory/BS%E3%83%95%E3%82%B8LIVE%20%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9

じじぃの「歴史・思想_472_腸と脳・脳に話しかける腸」

The Gut-Brain Connection

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=oym87kVhqm4

図1.消化管に分布する腸管神経節

腸管神経系

2016年7月18日 脳科学辞典
●構造
腸管神経系は食道から肛門に及ぶ消化管と膵臓、胆嚢や胆道系の壁内に存在し、神経節と神経節間を結ぶ神経線維、および粘膜上皮や小動脈などへ投射する神経線維から成り立っている(図1)。ヒトの腸管神経系に存在する神経細胞の数は4億から6億に達し、他のどの末梢器官に存在する神経細胞の数より多く、脊髄に存在する神経細胞の総数に匹敵する。
腸管神経節には神経細胞グリア細胞が存在し、多くの点で中枢神経系の構造に類似している。しかしながら、腸管神経節には結合組織性の要素は存在せず、中枢神経系でみられる血液脳関門のような構造も存在しない。
神経線維束には腸管神経系の軸索と消化管に投射する外来神経である交感神経や副交感神経の軸索及びグリア細胞が含まれる。なお、外来神経の中には中枢神経からの指令を効果器に伝える遠心性神経ばかりでなく、消化管からの情報を中枢神経系に伝える求心性神経も含まれている。
筋層間神経叢と粘膜下神経叢は、形態的・機能的に互いに連絡し、さらに外来神経である副交感神経系(迷走神経や骨盤神経)や交感神経系(血管運動神経など)とも連絡している。
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%85%B8%E7%AE%A1%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB

腸と脳―体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか 紀伊國屋書店

エムラン・メイヤー/著 高橋洋/訳
腸と脳のつながりを研究し続けてきた第一人者が、腸と腸内の微生物と脳が交わす緊密な情報のやりとりが心身に及ぼす影響や、腸内環境の異変と疾病の関係などについての最新知見をわかりやすく解説する。
健康のための食事や生活についての実用的アドバイスも必読。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011570

『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』

エムラン・メイヤー/著、高橋洋/訳 紀伊國屋書店 2018年発行

第3章 腸はいかに脳に話しかけるのか より

私たちが気づく内臓刺激は、一般に対応に迫られるものに限られる。空腹感は何かを食べるよう促す、満腹感はそれ以上食べるのをやめさせる。便意はトイレに駆け込ませる、などだ。それ以外のほとんどの内臓刺激については、胃の痛み、胸焼け、吐き気、執拗な腹部の張り、あるいは悪くすると食中毒、ウイルス性胃腸炎など、胃腸に問題が生じない限り、私たちは安心し切ったまま気づかないでいる。もちろんいつもと変わらない量の食事をしたあとでも、食べ過ぎや胃もたれを感じる程度のことはある。突然、胃腸からの感覚情報[Sensory informationの訳で、感覚を生み出す刺激情報の意。実際に感覚を感じるのは刺激が脳に達してからであることに留意]が、自分にとって意味を持ちはじめるのには理由がある。不快感を覚えることによって何らかの対処を余儀なくされ、また、そのような状況を引き起こす食べ物には今後手をつけないよう肝に銘じさせるのだ。

過敏な脳

たいていの人は、ほぼすべての内臓刺激に気づいていないが、顕著な例外がいくつかある。その1つは、心臓の鼓動や腸内における食物の動きに容易に気づく人がいることだ。彼らは、胃腸を含め身体から送られてくるあらゆるシグナルに対して敏感である。そのような人々を対象に行なわれた脳画像実験では、注意や顕著性(サリエンス)の評価に関与すう脳のネットワークに、反応の高まりが見出されている。
もう1つの例外は、消化管から脳に送られた感覚情報が、破損したシグナルとして脳に届く、不運な人々が10パーセントほどいることだ。私が診察した数々の患者のなかでも、身体刺激に対する気づきの鋭敏化を顕著に呈するある紳士の症例は、その独自性において突出している。
この患者フランクは75歳の元教師で、私の診察室に来るまで5年間にわたり、腹部膨満、腹部の不快感、不規則な便通など、典型的なIBS過敏性腸症候群)症状を含む消化管の障害を抱えていた。だが、問題はIBS症状のみではなかった。かれはまた、食道の上部に何かがつかえているような不快感(ヒステリー球とも呼ばれる)を慢性的に覚え、げっぷを繰り返し、胸骨の背後にメントールのような刺激性の感覚を覚えて頻繁にせきをし、息を吸ったときに十分に空気を取り込めていない気がすることがあったのだ。これらの症状は、私の診断室に来るおよそ5年前、重病の妻を亡くしたちょうどその時期に突然発現したという。
診断に役立てようといくつかの質問をしたところ、フランクは、子どものころからIBSに似た軽い症状があったようだ。これまでに何度も胸部、消化管、心臓を徹底的に検査してきたにもかかわらず、症状の原因がまったくわからないとのことだったが、消化管に何らかの機能的障害を抱えている可能性が高かった。彼の症状は、食道から結腸に至る消化管の各領域から送られてくる内臓刺激に対する過敏性に由来する、といったあたりがもっとも妥当な診断だと思われた。
    ・
フランクのような患者は、収縮、膨張、酸の分泌などの消化管の正常な機能に過敏なばかりではない。彼らのなかには、腸内で風船を膨らます、食道に酸性溶液を垂らすなどといった実験的な刺激に対し、健常者より敏感な人もいることが数々の研究からわかっている。
消化管が備える感覚系の複雑さを考慮すると、普通の食べ物、あるいは不健康ながらたいていの人にはいかなる症状も引き起こさない食べ物や食品添加物に過剰に反応するなど、彼らの消化器系が混乱の影響を受けやすいことは特に驚きではない。彼らは、危険をいち早く察知できる、いわば炭鉱のカナリアなのだろうか?

セロトニンの役割

セロトニンは、腸と脳のシグナル交換に用いられる究極の分子である。セロトニンを含む細胞は、小さな脳と大きな脳の両方に密接に結びついている。腸を本拠地とするセロトニン・シグナルシステムは、食物、腸内微生物、薬の作用もよって生じた反応を消化器系の活動、さらには感情に結びつけるのに重要な役割を果たす。その一方、腸の神経や脳に含まれる少量のセロトニンには、それとは別の大事な役目がある。セロトニンを含む腸内の神経は蠕動反射の調節に関与し、脳内の一群の神経細胞は、さまざまな脳領域にシグナルを送って、食欲、痛覚感受性、気分など、生存に必須の一連の機能に影響を及ぼす。

情報としての食物

消化管が備えるさまざまなセンサーや迷走神経(脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経)の複雑さや、消化プロセスにおけるそれらの動きを考慮しつつ、内臓刺激という広い文脈で消化管の働きをとらえると、人間の消化器系の革新性がよくわかる。私たちが備える消化管は、食物に含まれる種々の栄養素やカロリーを吸収するだけでなく(消化できなかった食物は腸内微生物が面倒を見てくれる)、その高度な監視システムで、食物の栄養を分析し、最適な消化に必要な情報を引き出している。

食物には最適な消化方法に関する指示や詳細説明が記載されているのだ。それについては、最近になるまでほとんど何も知らされておらず、現在でもその意味の解明が進まれている。この事実は、あなたが菜食主義者、魚菜食主義者、雑食者、肉食者のいずれでもあろうが、ファストフードばかり食べていようが、ダイエット中であろうが、あるいはメキシコ旅行中に腸感染を起こして苦しんでいたとしても、何ら変わりはない。注目すべきことに、消化管の精巧な感覚系は、食物が口に入ったその瞬間に情報を引き出しはじめ──舌の感覚レセプターと、食道の腸管神経系[腸管神経系は消化管の全体にわたって存在する]が、入ってきた食物に関する情報を送りはじめ──結腸に達するまで働き続ける。そして消化管は日常生活に何ら支障をきたすことなく、一連の機能を実行しているのである。
感覚レセプターが消化管壁に沿って広範かつ濃密に存在していることを考えると、消化管は、消化に関係する複雑なプロセスによって、またそこに宿る100兆のおしゃべりな微生物が生み出す膨大な量の情報を常時脳に送っていることがわかる。つまり脳腸相関は、大量の情報の収集、蓄積、分析、それへの反応という機能に鑑みれば、かつて考えられていたようような地道に働く蒸気機関などではまったくなく、真のスーパーコンピューターなのだ。
以上はすべて、消化管の機能に関して最近得られた知見の一部であり、マクロ栄養素、ミクロ栄養素、代謝、カロリーなどといった詳細への拘泥(こうでい)から、「私たちの消化管とその神経系、そしてそこに宿る微生物は、実のところ驚異的な情報処理装置であり、それに関与する細胞の数という点では脳をはるかにしのぎ、能力という点でも脳が持つ機能のいくつかに匹敵する」という最新の見解への移行を反映するものでもある。このシステムは体内に取り込まれた食物が、いかに飼育、栽培されたのか、どんな肥料が使われたのか、いかなる化学物質が添加されているのかなどに関する重要な情報を拾いつつ、私たちを周囲の世界に密接に結びつける。そして次章で詳しく説明するように、体内に取り込まれた食物と感情の結びつきには、腸内微生物が注目すべき役割を担っている。

じじぃの「フランツ・カフカ・現在も身近な病気の結核!ひきこもり図書館」

カフカ「変身」【予告編】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=TQsMbKNYyc4

“絶望名人”カフカが愛おしい。ぼくには絶望している権利がある【書評】

2019年3月19日 THE RUNNING JOURNEY
フランツ・カフカ Franz Kafka
・1883年、ボヘミア王国(現在のチェコ共和国)の首都プラハに生まれる。
・生家はユダヤ商人の裕福な家庭。
・半官半民の労働者災害保険協会に勤めて、サラリーマン生活を送りながら、ドイツ語で小説を書いた。
・生前に発表した作品はごく一部の作家(リルケなど)にしか評価されず、ほぼ無名。
・40歳の時、結核で死亡。
https://running-journey.com/2019/03/19/%E7%B5%B6%E6%9C%9B%E5%90%8D%E4%BA%BA%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%AB%E3%81%8C%E6%84%9B%E3%81%8A%E3%81%97%E3%81%84%E3%80%82%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%AB%E3%81%AF%E7%B5%B6%E6%9C%9B%E3%81%97/

『ひきこもり図書館』

頭木弘樹/編著 毎日新聞出版 2021年発行

フランツ・カフカ 「ひきこもり名言集」 より

  家にひきこもることは、
  いちばん楽だし、勇気もいらない。
  それ以外のことをやろうとすると、
  どうしてもおかしなことになってしまうのだ。
          (日記)
  進んでみたい道を、進むことはできません。
  いえ、それどころか、
  その道を進んでみたいと望むことすらできません。
  ぼくにできるのは、
  じっとしていることだけです。
  その他には何も望めません。
  実際、他には何も望んでいません。
          (恋人のミレナへの手紙)
カフカの日記や手紙を読んでいると、ひきこもり願望のすごさに驚かされます。
前にも書いたように、まだ「ひきこもり」という言葉もない時代です。
本当に、カフカは現代人のようだなと思います。今なら、こういう人も少なくないでしょう。
会社に行くのが嫌で、でも家が好きなわけでもなく、ようやく実家を出て、自分の部屋を持つのですが、すぐに結核になってしまいます……。
親友もいましたし、恋人もいましたし、会社でもうまくいっていました。はた目には、恵まれて見えたかもしれません。実際、カフカの父親は、足の古傷を見せては、自分が子どもの頃の苦労話をして、「お前は恵まれている」と説教しました。
しかし、当人としては、つねに絶望していて、地下室、それもいちばん奥の部屋で過ごしたがっていました(もちろん、そんな部屋は実際にはなく、空想ですが)。

                      • -

どうでもいい、じじぃの日記。
頭木弘樹編著『ひきこもり図書館』という本は、主に作家の作品について書かれている。
カフカ正岡子規結核で亡くなった。萩原朔太郎は肺炎で亡くなった。
結核結核菌が原因だが、肺結核脊椎カリエス結核性胸膜炎、腎結核など全身の様々な臓器に病巣ができる。約90%は肺結核だそうだ。
結核菌も新型コロナウイルスも症状的には似ている。
どちらも、咳やくしゃみをしたときに空中に飛び散り、周りの人がそれを吸い込むことで感染する。
3月10日は、ポカポカ天気だった。
さくら日和とは、春のポカポカ天気にさくらの一番の見ごろの頃をいうんだろうなあ。
コロナ日和とは、どんな天気なんだろうなあ。

じじぃの「歴史・思想_471_腸と脳・心と腸のコミュニケーション」

Inside a Stomach - Guts: The Strange and Mysterious World of the Human Stomach - BBC Four

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3AUlUH4-13Q

GUT HEALTH DISRUPTORS

Exploring the Connection Between Gut Health and Hair

SEPTEMBER 2019 Practical Dermatology
●GUT HEALTH DISRUPTORS
Threats to a healthy gut microbiome include stress, frequent antibiotic use, poor diet, and other behaviors.
Antibiotic overuse, societal obsession with “germ” avoidance, and use of diet and grooming products antithetical to fostering commensal bacteria have all been cited as potential contributors to the trend for decreased microbial diversity in adults.
https://practicaldermatology.com/articles/2019-sept-supplement/exploring-the-connection-between-gut-health-and-hair

腸と脳―体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか 紀伊國屋書店

エムラン・メイヤー/著 高橋洋/訳
腸と脳のつながりを研究し続けてきた第一人者が、腸と腸内の微生物と脳が交わす緊密な情報のやりとりが心身に及ぼす影響や、腸内環境の異変と疾病の関係などについての最新知見をわかりやすく解説する。
健康のための食事や生活についての実用的アドバイスも必読。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011570

『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』

エムラン・メイヤー/著、高橋洋/訳 紀伊國屋書店 2018年発行

第2章 心と腸のコミュニケーション より

胃腸こそ情動のドラマが上演される劇場であることを、もっと多くの医師や患者が知っていれば、ドラマが患者を主人公とする悲劇と化す可能性を減らせるはずだ。アメリカ人のほぼ15パーセントは、IBS過敏性腸症候群)、慢性の便秘、消化不良、機能性胸焼けなど、胃腸に何らかの異常を抱えている。これらはすべて脳腸相関の障害に分類され、患者は吐き気、腹鳴(ふくめい)、腹部膨満から耐え難い痛みに至るまで、さまざまな症状を呈する。驚くべきことに、胃腸に異常を抱える患者の多くは、その問題が情動状態の反映であることをまったく知らない。
それどころか、その事実を知らない医師も多い。

嘔吐が止まらない男

胃腸病専門医としての長い経歴を通じて、私がこれまで診察してきた患者のなかでもビルは際立つ。52歳の母親に連れられてきた当時のビルは25歳で、胃腸の症状を除けば至って健康だった。驚いたことに、口火を切ったのは母親のほうだった。「どうかビルを助けてください。あなたが最後の望みです。私たちは藁(わら)にもすがる思いでここまで来ました」
それまで8年にわたり、ビルはあちこちの緊急救命室(ER)で相当な時間を過ごしてきた。激しい胃の痛みと、とどまるところを知らない嘔吐に悩まされ続けていたのだ。ひどいときには、1週間に数回、ERの世話になっていた。ERのの医師たちは、苦痛を和らげるために鎮痛剤や鎮静剤を与えるのが関の山で、何が真の問題なのか、誰も的確に把握していなかったらしい。さらに具合の悪いことに、ビルの訴える症状の激しさと診断の結果がマッチしないために、彼が薬物をほしがって病院に来ているのではないかと疑う医師すらいた。
    ・
一般に周期性嘔吐症候群では、強いストレスがかかる人生の重大事を経験することによって発作が引き起こされる。無理な運動、月経、高地での滞在、あるいは長期にわたる心的ストレスなど、見かけは無関係に見えるさまざまな刺激が重なると、発作を引き起こすのに十分な身体的不均衡が生じかねない。意識的か無意識的かを問わず、このような脅威を検知した脳は、生存のために必要なあらゆる機能を調整する脳領域、視床下部にシグナルを送り、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)と呼ばれる、脳(と身体)をストレス反応モードに置く作用を持つストレス分子の分泌を促す。この障害を抱える患者は、CRFシステムがつねに働きかけられていても、数ヵ月、あるいは数年にわたり、症状をまったく呈さないこともある。しかし何らかのストレスがさらに加わると、症状が発現する。
CRFのレベルが一定の限度を超えると、腸を含む身体のあらゆる組織や細胞がストレスモードに切り替える。UCLAの同僚で、ストレスに起因する脳腸相関の障害を専門とする世界的な研究者の一人イヴェット・タシュは、一連の巧妙な動物実験を行なって、CRFがさまざまな身体の変化を引き起こすことも明らかにした。
CRFレベルの上昇は不安の高まりをもたらし、腸からのシグナルを含めさまざまな刺激に対してその人を鋭敏にする。だから激しい腹痛を感じるのだ。

腸内の鏡像

ビルのような周期性嘔吐症候群の患者や、他の脳腸相関の障害を抱える患者に、私が提供できる重要な情報の1つとして、何が苦痛に満ちた症状を引き起こすのか、そしてその患者が抱える症状の治療法の決定に、この知見がいかに役立つのかをわかりやすく説明する科学的論拠がある。単純な説明ではあれ、論拠を示すことで、診断にともなう不確実性がある程度取り除かれ、患者や家族の不安が和らげられる。またもちろん、科学は効果的な効果的な治療を実施するための合理的な基盤を与えてくれる。
私はビルに、彼の脳がCRFを過剰に分泌していることを説明した。脳内でCRFが過剰に分泌されると、不安のみならず、動悸、手の平の発汗、さらには蠕動を逆転させて内容物を上に向かって戻す胃の異常な収縮が引き起こされる。また、結腸の過度の収縮が起こり、それによって痙攣性の痛みが生じ、胃の内容物が下方に送られる。この説明を聞いたビルと彼の母親は、安堵の表情を浮かべていた。というのも、症状に関する科学的な説明を聞いたのは、そのときが初めてだったからだ。
「でも、発作がつねに早朝に現れるのはなぜでしょうか?」と、母親が訊いてきた。その質問に対して私は、「腸内での聖城なCRFの分泌は早朝にピークを迎え、それから正午になるまでゆっくりと減退していくからです」と答えた。だから周期性嘔吐症候群の患者の場合、脳内のCRFが早朝になると不健康なレベルに達する可能性が高い。
    ・
ビルもそのような(適切な治療を受けたこと)経過を辿った。3ヵ月後の再診時には、「発作はたった一度しか起こりませんでした」といった。私が処方した抗不安薬のクロノビンが効いて、発作がほとんど起こらなくなったようだ。彼は、何年にもわたって苦しみ続け、ERの医師たちの屈辱的なコメントをさんざん耐え抜いて、ようやく普通の暮らしを取り戻したことを喜んでいた。私が診察した他の周期性嘔吐症候群患者は、回復するのに認知行動療法や睡眠など他の治療法を必要としたが、ビルは投薬だけで済んだ。彼は再び大学に通うようになり、やがて投薬量も大幅に減っていった。
私たちは、ビルのような患者の症例から大くを学べる。私も、日夜診察室でさまざまなことを学んでいる。就職面接にたいする不安、交通渋滞に巻き込まれたときのいらいら、約束の時間に遅れそうになったときの焦りなどによって引き起こされる正常な内臓反応は、大きな問題ではない。とはいえ、怒り、悲しみ、不安などの情動が恒常的に生じる場合には、腸やそこに宿る微生物に有害な影響が及ぶことを知っておく必要がある。内臓反応が上演される舞台は広大で、登場する俳優は無数にいることを覚えておこう。コップ一杯の水を飲みさえすれば癒せる喉の渇きや、数分しか続かない一過性の痛みは大事ではない。

だが、情動はつねに腸内に鏡像を持つこと、また、恒常的な怒り、悲しみ、恐れは、消化器系のみならず健康全般にも多大な影響を及ぼすことを考えれば、そう安心してはいられないだろう。