じじぃの「死ぬということ・第5章・虚血性心疾患・心不全!死の雑学」


心不全の症状

済生会横浜市南部病院
心不全は心臓のポンプ機能低下でおこるものです。そのため、体に血液を送り出せず、疲れやすい・寝られない・手足が冷たくなる等の初期症状が出ます。
手足が冷たくて夏場でも暖房をつけるほどの患者さんもいます。そこから症状が進むと、息切れ・呼吸困難といった症状が現れます。
https://www.nanbu.saiseikai.or.jp/search-symptom/heart/heartfailure/

中公新書 死ぬということ――医学的に、実務的に、文学的に

黒木登志夫【著】
【目次】
はじめに
第1章 人はみな、老いて死んでいく
第2章 世界最長寿国、日本
第3章 ピンピンと長生きする
第4章 半数以上の人が罹るがん

第5章 突然死が恐ろしい循環器疾患

第6章 合併症が怖い糖尿病
第7章 受け入れざるを得ない認知症
第8章 老衰死、自然な死
第9章 在宅死、孤独死安楽死
第10章 最期の日々
第11章 遺された人、残された物
第12章 理想的な死に方
終章 人はなぜ死ぬのか――寿命死と病死

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『死ぬということ――医学的に、実務的に、文学的に』

黒木登志夫/著 中央公論新社 2024年発行

「死ぬということ」は、いくら考えても分からない。自分がいなくなるということが分からないのだ。生死という大テーマを哲学や宗教の立場から解説した本は多いが、本書は医学者が記した、初めての医学的生死論である。といっても、内容は分かりやすい。事実に基づきつつ、数多くの短歌や映画を紹介しながら、ユーモアを交えてやさしく語る。加えて、介護施設や遺品整理など、実務的な情報も豊富な、必読の書である。

第5章 突然死が恐ろしい循環器疾患 より

1 症例

症例5-4 マイ・ハート、狭心症
次の例は、私の狭心症である。1998年、62歳のとき、私は次期日本癌学会会長として、忙しい日々を送っていた。ある朝、東急目黒線洗足駅から当時勤務していた昭和大学まで歩いているときに、胸骨のあたりを後ろから押されているような不快感があった。教授室に着き、水を一杯飲むと治まった。数日後、家から駅まであるいている途中でまた胸に不快感があった。立ち止まるとすぐに治ったが今度は狭心症を疑った。中年の男性が、朝の出勤途中に胸が痛くなるのと言うは狭心症の典型だ。食事の後、血液が胃に集まり、心臓へはおろそかになるのである。

すぐに循環器内科で検査を受けた。運動負荷をかけると典型程な狭心症の心電図であった。さらに心臓の血流を調べてところ、心臓の先の方に血流が不足していることがわかった。間違いなく狭心症であった。
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次の週、私は昭和大学循環器内科に入院した。心臓カテーテルによって、詰まっている冠動脈にステントという金属メッシュの筒を入れて、95%狭窄している部分の通路を確保した。詰まっていたのは危険性の高い柔らかい血栓であった。柔らかい血栓の方が剥がれると、その先で詰まり、心筋梗塞になるリスクが高い(「不安定狭心症」)。正直、危ないところであった。以来、25年のあいだ1回も再発していない。ステントの効果はすごいものである。

2 循環器病を知る

(1)不整脈期外収縮、心房細動、心室細動
リズムを刻む電気的シグナルによって、心臓は正確に脈をうつ。シグナルの重要な中継点である田原結郎(房室結節)は、ドイツ留学中の田原準(たわらすなお、1873~1952)によって発見された。

(2)虚血性心疾患:狭心症心筋梗塞
虚血性心疾患とは、心臓に血液を送れなくなること(虚血)により起こる心臓病のことであるその原因としては、冠動脈の狭窄(狭心症)や閉塞(心筋梗塞)がある。

(2024年10月17日に76歳で死去した俳優の西田敏行さんの死因は、「虚血性心疾患」だったことが明らかになった。日本人の死因の約5%を占め、前兆なく発症して突然死を引き起こすこともある)

狭心症
狭心症は、冠状脈が狭くなり、一時的に心臓に十分な酸素が送れなくなって起こる病気である。

恐ろしい心筋梗塞
心筋梗塞は、虚血性心疾患の中でも最も危険な病気である。冠動脈が完全に詰まり、そこから先の心臓の筋肉に血流が途絶えると、その部分の心臓は働かなくなる。心筋梗塞の症状は激しい。胸が締め付けられるような痛み、呼吸困難、冷や汗、嘔吐などがある。痛みは、左肩や奥歯に放散することがある。心筋梗塞の結果、不整脈が起こることが少なくない。もし心室細動が起これば致死的である。

(3)脳卒中
脳梗塞脳出血
脳卒中」は、「卒然として邪風に中(あた)る」という意味である。英語(Stroke)も「撃たれる」といういう意味である。一撃で倒される、脳卒中の恐ろしさは、すでに名前の中に隠されている。脳卒中には大きく「脳梗塞」と「脳出血」がある。

脳卒中が大変なのは、発作のあとに障害が残ることである。障害の程度、内容は、脳卒中によってダメージを受けた脳の場所と程度によって異なる。ほとんど回復する人もいれば、重い障害を抱えたまま人生を終わる人もいる。障害を克服するには、根気よくリハビリテーションを受ける必要がある。

3 循環器疾患は突然死が多い

突然死
循環器の病気が恐ろしいのは、突然死のリスクが高いためである。考えてみよう。あなたが今晩風呂に入っているときに突然死ぬかもしれないのだ。家族は驚き、非難に暮れるであろう。死ぬための心構えも何もできていないあなた自身にとっても、これほど無念なことはない。突然死のリスクがある循環器病、脳疾患を以下、太字体で示す。

 ・心臓の病気:弁膜症/不整脈/先天性心疾患/心不全
 ・虚血性心疾患:狭心症心筋梗塞
 ・肺の病気:肺塞栓/肺高血圧症
 ・動脈の病気:大動脈解離動脈瘤/抹消動脈疾患
 ・脳の病気:脳梗塞脳出血くも膜下出血急性硬膜下出血/硬膜下出腫

(WHOの定義では、突然死は発症から24時間以内の死亡をいう)

心不全
心臓の役割は、全身から集まった血液を肺で酸素化して全身に送り出すことである。それが十分にできない状態を心不全という。心臓の機能が落ちて収縮力が低下すれば心不全になる。心筋が肥大して拡張力が低下しても心不全となる。血管の動脈硬化、腎機能が落ちても心不全になる。
心不全の症状は、血管内に水分が多く溜まりすぎることによる。全身がむくみ、ちょっと動いただけでも疲れ、呼吸が困難にある。肝臓のうっ血による腹痛、腹水が溜まることによる不快感などの症状が日常活動を脅かす。その影響は全身に及ぶ。心不全の治療は、安静にして心臓の負担を減らし、利尿剤で血液の量を減らすことが第1になる。降圧剤により血管の緊張を緩めて、血流を流れやすくする。