早期がん → 進行がん
大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療
国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ
1)深達度
大腸がんは、粘膜に発生し、大腸の壁の中を徐々に深く進みます。がんが大腸の壁のどの深さまで広がっているかを示す言葉が深達度です。深達度は、アルファベットの大文字「T」に数字とアルファベットの小文字をつけて表示します。Tis~T4bに分類され、数字が大きくなるほど、大腸がんが深く広がっています(図5)。
がんの深さが粘膜下層までにとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html
中公新書 死ぬということ――医学的に、実務的に、文学的に
黒木登志夫【著】
【目次】
はじめに
第1章 人はみな、老いて死んでいく
第2章 世界最長寿国、日本
第3章 ピンピンと長生きする
第4章 半数以上の人が罹るがん
第5章 突然死が恐ろしい循環器疾患
第6章 合併症が怖い糖尿病
第7章 受け入れざるを得ない認知症
第8章 老衰死、自然な死
第9章 在宅死、孤独死、安楽死
第10章 最期の日々
第11章 遺された人、残された物
第12章 理想的な死に方
終章 人はなぜ死ぬのか――寿命死と病死
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『死ぬということ――医学的に、実務的に、文学的に』
黒木登志夫/著 中央公論新社 2024年発行
「死ぬということ」は、いくら考えても分からない。自分がいなくなるということが分からないのだ。生死という大テーマを哲学や宗教の立場から解説した本は多いが、本書は医学者が記した、初めての医学的生死論である。といっても、内容は分かりやすい。事実に基づきつつ、数多くの短歌や映画を紹介しながら、ユーモアを交えてやさしく語る。加えて、介護施設や遺品整理など、実務的な情報も豊富な、必読の書である。
第4章 半数以上の人が罹るがん より
4 がんを知る
年齢構成で補正すると、がんは減少している
最初に誤解をひとつ解いておこう。意外にもがんは増えていないのである。第1章の図を見ると、がん患者が恐ろしい勢いで増えていると思うに違いない。
しかし、がんのように年齢とともに増加する病気は、高齢者が多くなる分、がんに罹る人も増えてくることになる。そこで、ある一定の年齢構成で補正する必要がある(年齢調整率)。年齢構成で補正すると、がんによる死亡率はこの24年間減少していることがわかる。つまり、がんが増えているように見えるのは高齢化の反映であった。しかし、すべてのがんが同じように減少しているわけではない。胃がんと子宮がんは減りつつあるのに対して、他の多くのがんは横ばいである。その結果、がん全体としては減少傾向になる(なお、認知症は年齢で補正しても増えている)。
人間は考える「ちくわ」である
17世紀のフランスの哲学者、パスカル(Blaise Pascal、1623年~62年)は、「人間は考える葦である」と言った。しかし、がん哲学者の私に思い浮かぶ、より適切な表現は「人間は考える「ちくわ」である」だ。
なぜなら、身体の真ん中には「ちくわ」と同じように、消化管という管が口から肛門まで通っているからである。そして、大事なことは、がんは身体と管の表面を覆っている上皮にできるのだ。
上皮にできるがんを「がん腫(carcinoma)」といい、全体のがんのおよそ90%を占めている。残りの10%は、骨にできるような「肉腫」あるいは血液細胞の「白血病」である。管の表面を覆う上皮は外部環境とつながっている。なかでも、消化管にできるがんが全体のおよそ60%を占めている。このことは、いかに食事が大切かということを物語っている。
がんの進行ステージ
がん腫の進行は上皮からの浸潤の程度でステージを分ける。上皮はいくつかの層に分かれている。管の最表面に上皮細胞層、その下に基底膜があり、筋肉(平滑筋)の薄い層がある。さらに1番外側には漿膜(しょうまく)というソーセージの皮のような薄い膜がある(図、画像参照)。
がんのステージはローマ数字で0期からⅣ期まである。その分類は、臓器ごとに腫瘍の大きさ(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔臓器への転移(M)の組み合わせで決まっているが、基本的には図に示すように、粘膜上皮のすぐ下の基底膜から顔を出してくるか(I期)、漿膜を破っているか(Ⅱ期)、リンパ節転移があるか(Ⅲ期)、遠隔臓器に飛び火しているは(Ⅳ期)によって分けている。
がんの中には、予後の良いがんもあれば、悪いがんもある。主ながんの5年生存率を図(画像参照)に示した。
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白血病など、血液のがんは、どこかの組織に局在しないので、急性、慢性などの臨床経過、細胞の種類などによって分類する。
がんはゆっくりと進行する
今まで余り言われてこなかったが、がんは恐ろしいだけではない。がんには意外なメリットがある。それは、がんはかなりゆっくりと進行することだ。多くのがんでは、年の単位で進行する。私の妹の場合は、進行したⅣ期の大腸がんで発見されたにもかかわらず、化学療法などにより4年もの間家で過ごすことができた。薬の副作用で苦しんだときがあったにもしても、その間、旅行もできたし、孫の成長を見ることもできた。それは貴重な時間であった。
5 がんの診断と治療
がんの早期診断
がんの初期は、ほとんど無症状である。高血圧や糖尿病と同じように、がんは静かに忍び寄ってくる。前章で説明したように、がんの死亡率は年齢の5乗で増え続ける(第3章)。とすれば、がんを早く見つけるのには、健康と思っていても毎年、検査を受けることが大事である。
症状からがんを早期発見するのは正直難しい。がんに共通した自覚症状としては次の3つがあるが、出血以外は特異性が低く、必ずしも当てにならない。
・出血 上皮組織には、血管が入っていない。もし、出血があれば、がんが上皮組織を破壊して、出血していることを疑う。吐血、血便、下血、血痰、血尿、性交時出血などがあれば、がんを疑う。白血病の場合は、特定の臓器ではなく、皮下出血、歯茎出血などで気づくことがある。
・しこり がんがある程度の大きさになれば、塊として認識される。表面に近い乳がん、リンパ腺腫、リンパ腺転移などはしこりによって発見しやすい。
・違和感 消化器であれば、食欲不振、消化不良、飲み込み障害、排泄異常などの一般的症状がある。しかし、がんに特有の症状でないため、見逃されやすい。