じじぃの「カオス・地球_464_日本列島はすごい・4章・大気大循環」

大気の大循環モデル


大気大循環とは?大循環のモデルから気候までわかりやすく解説

2023/06/23 Beyond Our Planet
3-1. 低緯度に吹く貿易風
貿易風は、低緯度付近で吹く風で、北半球では北東の風「北東貿易風」、南半球では南東の風「南東貿易風」が吹いています。
赤道付近で温められた空気は上昇気流となり、北半球では上空を北上する気流を生み出します。しかし、気流はコリオリの力により実際には真北ではなく、北東へ向かって流れます。そして北緯30度付近に近づくと、気流の一部が冷却されて降下し、再び赤道へ向かう気流を構成します。これがハドレー循環です。ここでもコリオリの力が働き、気流は真南ではなく南西向きに流れることから、地上では北東の風(北東貿易風)が吹くことになります。南半球では対照的な風となり、南東の風(南東貿易風)となります。
ハドレーは赤道から極付近に至る長大な循環を予測していたため、実際とは異なりますが、功績をたたえ、この空気の流れはハドレー循環と呼ばれるようになりました。
https://www.rd.ntt/se/media/article/0044.html

『日本列島はすごい――水・森林・黄金を生んだ大地』

伊藤孝/著 中公新書 2024年発行

4章 大陸の東、大洋の西――湿った列島 より

1 回転する球の表面を流れる大気
西風が吹く湿った列島
天気は重要な関心事の1つだ。地学の分野のなかで、負担からこれほど皆の注目を集めているものはない。この時代にあっても、「よい天気ですねぇ」「暑いですねぇ」は、まだ距離をつかみきれていないご近所さんと出会ったとき、じつに有効な枕詞とそて機能している。また、テレビ・新聞などの伝統的なメディアでは天気予報は定番だし、スマホのお天気アプリをチェックするのは日常の風景だ。イベントの直前ともなればなおさらである。とくに、イベントを主催する側にとっては死活問題にもなる。

日本列島は南北に延び、気象・気候も多様であるが、一般に雨が多く、それが暖かい時期にもしっかりと降り、また西風が卓越している。これは列島全体を通した共通項として挙げられるだろう。それらを決定づけているのは、日本列島が、

  ・中緯度に位置していること
  ・大陸の東の端から、微妙なあいだを置いて位置していること
  ・大洋の西の端に位置していること

と要約できる。本書では、これらの点を中心に概要をみてみたい。

地上付近の風とコリオリの力
まず、地上付近の風の様子をみてみよう。
ちなみに、小縮尺の地図上で模式的な風向きを示すにに、曲線で描かれることが多いのはコリオリの力が働いていることを表現するためだろうか。コリオリの力は聞きなれない言葉と思うが、回転体の上を移動する物体に働く力である。地球は、北極星から見て反時計回りに自転している。その地球の北半球ではコリオリの力によって移動する物体は右に曲げられる(逆に南半球では左に)。

コリオリの力は重力などと比べるとはるかに小さいので、普段の生活で実感することはできない。ウサイン・ボルトは2009年、ベルリンで行われた世界陸上で9秒58をたたき出した。これは2023年現在でも短距離走男子100mの記録記録である。このときの最高速度は秒速12.27m(時速44.27km)であったとされる。

彼の体重を94kgとして計算すると、最高速度に達したボルトは0.13N(ニュートン)のコリオリの力を受けていた。ボルトにかかっている重力は約920Nだから、コリオリの力の7000倍以上にもある。すなわち、ボルトが疾走中になぜか忍耐が右へ右へと引っ張られ、ついにはレーンを外れてしまう確率よりは、誤って転倒してしまう可能性のほうがはるかに大きいわけだ。転ばなくて本当によかった。

ちなみに、このコリオリの力は緯度により異なり、極で最大、赤道でゼロになる。もし2009年の世界陸上がより緯度が高いアイスランドレイキャヴィクで行われていたら、ボルトにかかったコリオリの力は0.15N、エクアドルのキトであれば0N。むしろ、重力加速度の違いや酸素の薄さが、タイムに影響しそうだ。

一方、定められたレーンがない大気や海水も、しっかりとコリオリの力を受ける。
また大気や海水の移動距離は100mではない。そのため、力の大きさはわずかでも、長距離移動をすることで、その影響が顕著に表れるのだ。